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第十部

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「おっ、可愛い~

これ、妖怪トリオ? 」

黒谷が驚いてディッセとシェデムを見た。

「そう。今うちには有名なレジン作家さんがいて、

彼の人形は今でも話題になってるの。

今年亡くなってうちに登録したんだけど、

凄く可愛いでしょう? 」

「チビ達をモデルに作ったのが分かる。

大人の真似をして、

縁側で茶をすすってる感じだよね」

黒谷も自然と笑顔になった。

「これは今回の客寄せパンダ。

いずれは商品化して、

関連グッズを増やしていくつもり」

シェデムが言うと、

「いつも思うんだけど、

こういうのをどこで作ってんの? 」

黒谷が不思議そうに聞いた。

「工房があるからね。

作家はそこで作って、

冥王たちは図書室の和室で作ってるよ。

掘りごたつがあるって言ったでしょ? 

二十畳くらいの広さがあるんだよ。

皆そこに集まって作ってる」

「へえ~」

黒谷がビックリした顔で息を吐いた。

シェデムは笑うと、

「今回は週末を予定してるので、

内装をそのまま使え、

売り上げの徴収がなく、

ある程度の利益が見込める立地。

そのあたりを探していて、

見つけたのがこの場所」

ある空き店舗の前で立ち止まった。

「商店街なので場所はいいのよ。

ただ、ちょっと奥に入るので、

見過ごされないように看板を立てる」

黒谷は店舗を楽しそうに見つめた。

「中央から外れてるから、

悪霊もいないし、負も感じられないでしょ」

「うん。気分も悪くならないし、

青空がある場所っていいよね」

シェデムの顔を見て黒谷が笑った。

「ここは食器屋さんだったので、

内装もアンティーク風で、

そのまま使えるし、広さも十分あるから、

展示をしてお客が入っても動きやすいだろ」

ディッセもそういうと店のドアを開けた。

「式神課で色々仕事しているおかげで、

知り合いも増えてさ。

ここもその関係で紹介してもらったんだ。

許可貰ってるから、中を見てもいいってさ」

「なんかドキドキする」

嬉しそうな黒谷をディッセとシェデムは、

楽しそうに見ていた。


――――――――


冥界では冥王に赤姫、毘沙門天が、

楽しそうに物つくりをしていた。

図書室の和室には虎獅狼達もいて、

話しながら笑っている。

向井はそんな様子に邪魔をしない方がいいと、

黙って図書室を出ると休憩室に戻った。

「あれ? 冥王たちは? 」

早紀がおやつの箱を開けて聞いた。

「あまりに楽しそうだったので、

声をかけるのをやめました。

疲れたら休憩に来るでしょう? 」

向井はそういうと、

気持ちよさそうに寝ているチビを見てから、

キッチンに行った。

「せっかくの銘菓の和菓子だから、

お抹茶にしようと思って」

真紀子が笑いながら抹茶を用意していた。

安達と牧野が嬉しそうに、

きな粉と粒あんの餅菓子を取り皿に乗せていた。

向井もそんな時間に、

自分は今幸せなんだと、

黙ってその雰囲気を体に感じていた。
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