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第九部

天国と地獄

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「久しぶりだから目が回った」

「では、俺様も連続逆上がりを見せてやろう」

牧野もそういうと、

かんたんにクルクルと回り始めた。

「わあ~」

チビ達がきらきらした顔のまま、

向井を見た。

「えっ? 俺も? 」

「そうよ。みんな披露したんだから、

向井君も見せてよ」

トリアが腕を組み言った。

みんなの視線を感じ、

「じゃあ、ここは冥界だから、

ピッタリな技を」

というと逆上がりをして鉄棒に座った。

そしてそのまま後ろに落ちるように、

連続で回った。

「すごっ、すごっ、すごっ」

チビ達と一緒に安達もやってくると、

夢中になって見ていた。

「それ何? 」

三鬼が顔を真っ赤にして興奮していた。

「地獄回りです」

向井が笑った。

「天国回りもあるの? 」

安達が聞くので、

「ありますよ」

向井はそういうと、

再び逆上がりをすると鉄棒に座った。

そして今度は前方に倒れるようにくるくる回った。

「わあ~」

チビ達の楽しそうな声に、

「喜んでもらえてよかったです」

と勢いよく回って着地するとポーズをとった。

「向井さんは何でもできるよね~」

エナトが驚きの表情でやってくると、

手を叩いた。

「これくらいならね。器用貧乏なんです」

「向井は凄ェんだよ」

牧野の偉そうな態度に、

「なんであんたが威張ってんのよ」

早紀が睨んだ。

エナトはケラケラと笑うと、

「チビ達はお昼だって~

食堂に用意してあるから行くぞ~」

とチビ達を連れて出て行った。

「そっか~もうお昼か。

道理で腹が減ったと思った」

牧野が腹を押さえてその手を見た。

「あんたはいつも、

お腹を空かせてるじゃない」

早紀の言葉に、

「ほんとだね」

セイも笑った。

「今日の俺の腹は………中華が食べたいと、

言っている」

牧野はそういうと向井を見た。

「今日の食堂はシチューと鮭ですからね」

向井は笑うと、

「買いに行きますか」

「やった~行こう行こう」

牧野と安達が喜んで走って行った。

「皆さんはどうします? 」

「僕も中華が食べたい」

セイがいい、

「いつもの中華屋さんでしょ? 

だったら私は酢豚が食べたい~」

早紀も手を挙げて言った。

「じゃあ私も一緒に行こう。

どうせ多めにテイクアウトして帰るんでしょ」

トリアも言うと、向井と一緒に出掛けて行った。


―――――


下界に下りると、

「やっぱ、中央は空気がキレイだ」

牧野が空を見上げて話した。

向井達が悪霊退治以外に出掛ける場所は、

中央から外れた場所が多い。

日々霊の陰にやられているので、

負が蔓延している場所は体がキツイからだ。

向井も青空を見ながら、

「倉田さんや岸本君は大変でしょうね」

とつぶやいた。

「そんなにやばかったんだ」

トリアが向井のそんな様子に、

前を歩く牧野達を見ながら言った。
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