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第九部

向井の取り合い

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「なんだよ。それ」

岸本もあきれ顔で笑うと、

除去を終えた式神が戻ってきた。

「少し取りこぼしがあるかも」

エハが白虎を見て言う。

「これだけ綺麗になったら、

後は何とかなりますよ。

久しぶりに晴れた空を見たな」

キャトルは嬉しそうな笑顔を見せた。

「この付近の壊された祠だけでも、

軽く浄化させておきましょうか」

向井はそういうと、

リングからディスプレイを出し、

場所の確認をした。

ヴァンが戻ってきた黒猫を、

近くの祠に送り除去をさせる。

向井は止めていた時間を動かすと、

人々の様子を観察した。

「なんか今日は天気が良くない? 」

「青空なんて久しぶり」

誰もが立ち止まり上を見上げていた。

「ここで負が膨れたという事は………」

向井がそういうと身守りが輝き、

光りの矢がその根源の場所へと飛んでいった。

向井はその足取りをたどると、

歩道の真ん中で黒い渦が、

つむじ風のように動いていた。

「あそこですね」

そういうと近づき、

再び時間を止めた。

つむじ風は向井が近づくと静まった。

向井は腰を落とすと霊玉に息を吹きかけ、

地面へ補強するように埋め込んだ。

黒く蠢いていた影のような地面が、

虹が広がるように浄化されていく。

牧野達は向井の能力を身近で見てきたので、

驚くことなく眺めていたが、

倉田達は目の当たりにし、

衝撃を受けていた。

これが特例随一の能力者か………

キャトルも声が出せずにいた。

うちの倉田さんの力も凄いが、

比じゃないな。

こればかりは元からある能力値の問題だから、

仕方がないが………

キャトルは完敗とばかりにため息をついた。

「向井さんが無理なら、

中央はいい特例が揃ってるんだから、

少し死神の方を回してもらおうかな」

倉田が口をとがらせて言った。

「セイなら連れてってもいいよ」

牧野の言葉に、

「セイ君じゃ戦力にならないよ」

岸本も笑った。

「エナトとかティンがいい」

倉田が言うと、

「ダメ。じゃあ、ディッセは? 」

と牧野達は勝手にトレードを始めた。

「ディッセ? あいつはダメだよ。

腕っぷしもないし、霊銃も使えないでしょ」

キャトルが笑った。

「牧野君。セイとディッセが聞いたら、

泣くよ」

ヴァンが笑った。

「さあ、次は西に移動するよ」

岸本が牧野の肩を叩いた。

「ええ~北の美味しいもん食べたい! 食べたい!

腹減った~!」

牧野の駄々っ子に慣れている向井達は、

呆気に取られている倉田達に、

「お薦めのお店ありますか? 」

と聞いた。

「牧野はいつもああなの? 」

お店を案内するキャトルたちと、

楽しそうに歩く牧野を見て、

岸本が聞いた。

「そうですよ。自由奔放に、

冥王にも同じ態度で、

二人してよくケンカしてます」

「冥王にも!? 」

驚く倉田と岸本に向井は笑った。
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