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第七部
冥界の約款
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「向井君は強いですね。
君達を選んだ理由は前にも話しましたが、
私はね。それだけじゃなく、
安達君がここに運ばれてから、
特例の赤ランプも無視しているんです」
向井は黙って聞いていた。
「その顔では気づいていましたか」
冥王が笑った。
「特例がどんな人生だったのか、
私は見てきましたからね。
人の痛みに寄り添えて、
それに引きずられず、
霊にも向き合える人物を探してきたので、
以前に比べて特例の数が、
極端に少なくなってしまいました」
「ここはブラックだなんて、
みんなが冗談半分で言っていますが、
どんなものにもメリットとデメリットがあります。
最初はきつかったですけど、
この賑やかな感じもいいかなって。
まあ、慣れてしまったんでしょうね。
俺は幸せですよ」
向井は笑顔で冥王を見た。
冥王は何も言わずに頭を下げた。
特別室のドアの前に立つと、
向井はゆっくり扉を開けて冥王を通した。
――――――――
扉が開くと、
ロッキングチェアに揺られて本を読む、
大沢と須原の姿があった。
「ほお~冥王が自らお出ましですか。
この私に何の用かな? 」
大沢がちらりと冥王を見ると、
再び本に顔を戻した。
「あなた方も、
ここから出て行くことになりましたので、
それで私がわざわざ出向いてきたのですよ」
冥王が笑った。
「ん? 」
大沢の片眉が上がった。
「私が何でここから出なければならん」
「まずは須原さんから向こうへお進みください」
冥王はそう言うとドアを指さした。
「ここから移動なんて話は聞いていないが」
須原が怒ったように睨む。
「勘違いされては困ります。
ここは冥界。あなた方は死人です」
「どうぞこちらに」
いつの間に来たのか、
シェデムが入り口に立っていた。
いつもと違う冥王の声音に、
須原も逆らえないことが分かったのだろう。
静かに立ち上がるとシェデムに連れて行かれた。
「さて、あなたもここからは地獄へ進みますよ」
「地獄だと? 神と同等のこの私をか?
国の為に尽力し、
お前らを守ってきてやったというのに。
馬鹿も休み休み言え。
私はここを動かん」
向井はうんざりした様子で見ていた。
「おや? あなたはここに来る時に、
約款に同意していますよ。
契約条項に目を通して頂いたはずですが」
冥王はそういうと冥界での特殊インクの紙を、
大沢に見せた。
「これは地獄のサインです」
「そりゃ、詐欺というもんだろう。
冥王が詐欺を働くとはだれも思わん。
ここに来る時に、
渡すのは家族の命と己が持つ財産。
その二つと説明された。
だから私は息子の嫁の命と嫁の命を渡しただろう」
大沢が顔を赤くして怒鳴った。
君達を選んだ理由は前にも話しましたが、
私はね。それだけじゃなく、
安達君がここに運ばれてから、
特例の赤ランプも無視しているんです」
向井は黙って聞いていた。
「その顔では気づいていましたか」
冥王が笑った。
「特例がどんな人生だったのか、
私は見てきましたからね。
人の痛みに寄り添えて、
それに引きずられず、
霊にも向き合える人物を探してきたので、
以前に比べて特例の数が、
極端に少なくなってしまいました」
「ここはブラックだなんて、
みんなが冗談半分で言っていますが、
どんなものにもメリットとデメリットがあります。
最初はきつかったですけど、
この賑やかな感じもいいかなって。
まあ、慣れてしまったんでしょうね。
俺は幸せですよ」
向井は笑顔で冥王を見た。
冥王は何も言わずに頭を下げた。
特別室のドアの前に立つと、
向井はゆっくり扉を開けて冥王を通した。
――――――――
扉が開くと、
ロッキングチェアに揺られて本を読む、
大沢と須原の姿があった。
「ほお~冥王が自らお出ましですか。
この私に何の用かな? 」
大沢がちらりと冥王を見ると、
再び本に顔を戻した。
「あなた方も、
ここから出て行くことになりましたので、
それで私がわざわざ出向いてきたのですよ」
冥王が笑った。
「ん? 」
大沢の片眉が上がった。
「私が何でここから出なければならん」
「まずは須原さんから向こうへお進みください」
冥王はそう言うとドアを指さした。
「ここから移動なんて話は聞いていないが」
須原が怒ったように睨む。
「勘違いされては困ります。
ここは冥界。あなた方は死人です」
「どうぞこちらに」
いつの間に来たのか、
シェデムが入り口に立っていた。
いつもと違う冥王の声音に、
須原も逆らえないことが分かったのだろう。
静かに立ち上がるとシェデムに連れて行かれた。
「さて、あなたもここからは地獄へ進みますよ」
「地獄だと? 神と同等のこの私をか?
国の為に尽力し、
お前らを守ってきてやったというのに。
馬鹿も休み休み言え。
私はここを動かん」
向井はうんざりした様子で見ていた。
「おや? あなたはここに来る時に、
約款に同意していますよ。
契約条項に目を通して頂いたはずですが」
冥王はそういうと冥界での特殊インクの紙を、
大沢に見せた。
「これは地獄のサインです」
「そりゃ、詐欺というもんだろう。
冥王が詐欺を働くとはだれも思わん。
ここに来る時に、
渡すのは家族の命と己が持つ財産。
その二つと説明された。
だから私は息子の嫁の命と嫁の命を渡しただろう」
大沢が顔を赤くして怒鳴った。
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