267 / 631
第七部
人気のアイドル大臣
しおりを挟む
「なんだよ」
「横暴だ~! 」
「地元住民を追い出して、
何がリゾートだ! 」
膨れ上がる人だかりの中、
生活迷惑法を理由に次から次へと、
逮捕されていく。
それでも膨れる人の群れを、
警察が連れて行き道を作った。
そこへ一台の車が止まり、
中から菅野大臣がモデルのような仕草で降りてきた。
秘書が手を添え、
吉沢の方へと歩いてきた。
「菅野大臣~ファンです~」
「綺麗~こっち向いて~」
反対側のやじ馬が手を振って、
アイドルの登場に歓喜の声をあげていた。
菅野はにっこり微笑むと手を振り、
軽く会釈をする。
「大臣がこんなところに何の用ですか? 」
吉沢が言うと、
「あら、私の仕事よ。
視察するのは当然でしょう?
この前の災害も大したことがなくて、
よかったじゃない?
やられたのは貧民街なんでしょう? 」
吉沢が黙っていると、
「ねえ、なんでこんなところにリゾート作るの?
確かに立地はいいけど、
リゾートには景観がよろしくないわ。
いっそのこと全部壊したらどうかしら。
見栄えも悪いし、
海外からも笑いものになってしまうわ」
「そうですよね。私もそう思ったのですが、
特殊災害対策室で、
住民が住む場所も残すようにと」
役所の人間が来て、
腰を低くしながら話し、
ちらりと吉沢を見た。
「なんで? 住む場所がないなら、
奥に団地が沢山あるじゃない。
古くて汚いから取り壊すって言ってたのに、
今だって住民に住まわせてあげてるんでしょ」
「大臣。あなたには何の権利もございませんよ」
吉沢の言葉にこめかみがピクリと動き、
顔を向けた。
「いつまでもお飾りではいませんのよ。
私のファンは多いんです。
敵に回さないほうがよろしいのでは? 」
「そのお言葉、そのままお返しいたします。
あなたが大臣でいられるのは、
私がいるからで、
この国は私を切ることはできないんです。
いずれうちの大沢がトップに立ちます。
そのあとの身の振り方を、
お考えいただいた方がいいと思いますが」
吉沢は耳元でそれだけ言うと、
わなわなと怒りに震える菅野を置いて、
歩いていった。
まったく!!
次から次へと………………
吉沢は頭を抱えると、
リゾート予定地の裏に止めた車へと乗りこんだ。
秘書がやってくると、
「あの土地はどうなっているんですか?
生贄は既に例の場所に隔離していますが、
中に入れないのでは儀式が行えません」
「分かっている」
吉沢は前かがみでうつ向くと考え込んだ。
あれはなんだ?
まるで見えないドームに覆われているようだ。
入ろうとしてもはじき出されてしまう。
祠を壊し続けた祟りなのか?
まさかな。
その為に生贄を捧げているんだ。
神に恨まれる筋合いはない!
「横暴だ~! 」
「地元住民を追い出して、
何がリゾートだ! 」
膨れ上がる人だかりの中、
生活迷惑法を理由に次から次へと、
逮捕されていく。
それでも膨れる人の群れを、
警察が連れて行き道を作った。
そこへ一台の車が止まり、
中から菅野大臣がモデルのような仕草で降りてきた。
秘書が手を添え、
吉沢の方へと歩いてきた。
「菅野大臣~ファンです~」
「綺麗~こっち向いて~」
反対側のやじ馬が手を振って、
アイドルの登場に歓喜の声をあげていた。
菅野はにっこり微笑むと手を振り、
軽く会釈をする。
「大臣がこんなところに何の用ですか? 」
吉沢が言うと、
「あら、私の仕事よ。
視察するのは当然でしょう?
この前の災害も大したことがなくて、
よかったじゃない?
やられたのは貧民街なんでしょう? 」
吉沢が黙っていると、
「ねえ、なんでこんなところにリゾート作るの?
確かに立地はいいけど、
リゾートには景観がよろしくないわ。
いっそのこと全部壊したらどうかしら。
見栄えも悪いし、
海外からも笑いものになってしまうわ」
「そうですよね。私もそう思ったのですが、
特殊災害対策室で、
住民が住む場所も残すようにと」
役所の人間が来て、
腰を低くしながら話し、
ちらりと吉沢を見た。
「なんで? 住む場所がないなら、
奥に団地が沢山あるじゃない。
古くて汚いから取り壊すって言ってたのに、
今だって住民に住まわせてあげてるんでしょ」
「大臣。あなたには何の権利もございませんよ」
吉沢の言葉にこめかみがピクリと動き、
顔を向けた。
「いつまでもお飾りではいませんのよ。
私のファンは多いんです。
敵に回さないほうがよろしいのでは? 」
「そのお言葉、そのままお返しいたします。
あなたが大臣でいられるのは、
私がいるからで、
この国は私を切ることはできないんです。
いずれうちの大沢がトップに立ちます。
そのあとの身の振り方を、
お考えいただいた方がいいと思いますが」
吉沢は耳元でそれだけ言うと、
わなわなと怒りに震える菅野を置いて、
歩いていった。
まったく!!
次から次へと………………
吉沢は頭を抱えると、
リゾート予定地の裏に止めた車へと乗りこんだ。
秘書がやってくると、
「あの土地はどうなっているんですか?
生贄は既に例の場所に隔離していますが、
中に入れないのでは儀式が行えません」
「分かっている」
吉沢は前かがみでうつ向くと考え込んだ。
あれはなんだ?
まるで見えないドームに覆われているようだ。
入ろうとしてもはじき出されてしまう。
祠を壊し続けた祟りなのか?
まさかな。
その為に生贄を捧げているんだ。
神に恨まれる筋合いはない!
1
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
独り日和 ―春夏秋冬―
八雲翔
ライト文芸
主人公は櫻野冬という老女。
彼を取り巻く人と犬と猫の日常を書いたストーリーです。
仕事を探す四十代女性。
子供を一人で育てている未亡人。
元ヤクザ。
冬とひょんなことでの出会いから、
繋がる物語です。
春夏秋冬。
数ヶ月の出会いが一生の家族になる。
そんな冬と彼女を取り巻く人たちを見守ってください。
*この物語はフィクションです。
実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
八雲翔
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
DARSE BIRTHZ。(ダースバース。)
十川弥生
ライト文芸
これは世界の謎を解き明かす物語———。
2020年3月14日、日出国(ひいずるこく)上空に突如謎の球体が出現。それにより未知の化物、化(ローザ)が全国各地に現れ、街々は壊滅的な状況となった。そんな中、たった一人の男の登場により事態は収束の一途を辿る———。
時は流れ、化(ローザ)と交戦する一つの職業が生まれた。人はそれを化掃士(かそうし)と呼ぶ。
球体が現れた衝撃の理由とは———
チェイス★ザ★フェイス!
松穂
ライト文芸
他人の顔を瞬間的に記憶できる能力を持つ陽乃子。ある日、彼女が偶然ぶつかったのは派手な夜のお仕事系男女。そのまま記憶の奥にしまわれるはずだった思いがけないこの出会いは、陽乃子の人生を大きく軌道転換させることとなり――……騒がしくて自由奔放、風変わりで自分勝手な仲間たちが営む探偵事務所で、陽乃子が得るものは何か。陽乃子が捜し求める “顔” は、どこにあるのか。
※この作品は完全なフィクションです。
※他サイトにも掲載しております。
※第1部、完結いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる