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第七部

ライブハウスの幽霊

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「私、分かったかも」

そういうと階段を上がっていった。

向井達もそのあとをついて行く。

真紀子は外に出るとビルを壁伝いに歩き、

ある場所でピタッと足を止めると、

指さした。

「向井君、ここ」

「ん? 」

向井達がその場所を見ると、

「ああ~」

と頷いた。

「何? この壁に何かあるの? 」

何も見えない篠原は訳が分からず、

向井達をきょろきょろと見回した。

その壁には霊が入り込んでいるのが見えた。

向井達が来たので、

驚いて隠れたようだった。

「君は何でここにいるの? 」

向井が聞くと、

「私………ただ、ライブが見たかっただけだもん。

な、なにもしてない」

十代の少女の霊はおびえたように言った。

向井はタブレットを取り出すと、

「君、名前は? 」

と聞いた。

「………辻ゆか」

向井がその名前を打ち込むと病死になっていた。

長い事、入院生活を送っていたらしい。

「ここにいたら電波障害が続いて、

ライブハウスが潰れちゃうね」

新田が横からタブレットを覗いて言った。

「霊と電力は相性が悪いんだよね。

映画館はそうでもないのに、

音楽祭となると機械が壊れたりするからね。

どうする? 」

ヴァンが向井を見た。

「意識のしっかりした霊魂ですから、

これは保護対象………安達君の担当ですね。

無理やり払うのもねぇ~」

向井は少し考え込むと聞いた。

「上に上がってみませんか? 」

「上? 」

「うん。音楽なら上でも聞けるのよ。

ここにいたら悪霊にも狙われて、

ゆかちゃんも危ないし」

エハが説得するように話しかけると、

「………怖くない? 」

「楽しいよ」

新田がほほ笑むと、

「………じゃあ、行く」

ゆかが壁から出てきた。

「ここに一人でずっといたの? 」

真紀子が聞くと、

「………うん」

「寂しかったね」

向井はそういって霊玉を取り出すと言霊を放ち、

ゆかの魂を保護した。

「これで大丈夫だと思いますよ。

念の為、ライブハウスを浄化して、

小さく結界を張っておきます」

一連の動きを見ていた篠原は、

「あの、今、

幽霊と会話してたの? 」

「そうです」

向井は笑うとライブハウスに戻った。

エハとヴァンが式神を放ち浄化すると、

向井が霊玉を床に埋め結界を張った。

「舞台装置が動かないと聞きましたけど、

もう作動すると思います。

スイッチを入れてみてください。

ラップ音もしないですよ」

篠原は舞台の明かりを付けてみる。

「ほんとだ!! 凄い…

この所ライブも中止せざるを得なくて、

大変だったのに」

「よかったです。お札も全てはがして、

何の問題もありませんよ」

「有難う。ホント有難うね。

これ謝礼金です。

このままじゃ、

ライブハウス廃業だと思ってたから、

あんた達は神様だよ」

篠原はそういうと、

向井の両手を握ってぶんぶん振った。
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