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第六部

黒谷の団地へ

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向井は何も言わずに微笑むと、

「もうここでお仕事されても大丈夫ですよ。

一応浄化しましたから、

問題はないと思います。

証明のスイッチをオンオフしてみてください」

向井の言葉に原田がスイッチを入れると、

通常に動いた。

「あっ、何ともないです。

凄い…有難うございます」

原田は驚くと、

そのあと何度も頭を下げ、

謝礼金の封筒を向井に渡した。

「何かありましたら、

黒谷君の方にご連絡下さい」

アートンはそれだけ言って、

向井とビルを出た。

「じゃあ、このまま黒谷君の所に行きましょうか」

オーナーと別れ、

向井達は黒谷の住む団地に向かった。

昼時になり、

会社員たちが定食屋やラーメン屋に入っていく。

「お昼を買って戻ったんですけど、

食べ損ねちゃったので、

俺達も何か手土産に、

ハンバーガーでも買って行きましょうか。

アートンさんもまだでしょ」

「そういえば、僕もお腹空いたなぁ~」

二人は話しながらバーガーショップに入った。

「ゾンビ少年と赤い神聖ばあ」第二弾。

店内には大きなパネルが展示されている。

「そういえば、山川さんの派遣で、

トリアさんも出かけてるんですよね」

向井はパネルを見て笑った。

「今回はボールペンだってさ」

アートンが向井の顔を見た。

「安達君達は知らないんですね。

知ってたら大騒ぎしてますから」

「ボールペンは内緒で安達君にあげちゃおう。

今度は十種類だから、

また買いに来ることになりそうだね」

アートンも笑うと、バーガーセットを注文した。


「今日は赤姫さんはお休み中かな」

団地に来ると姿を見せる赤姫がいないので、

向井は辺りを見回し呟いた。

「開発が決まり、

吉沢の動きも鈍くなっているから、

赤姫も体を休めているのかもしれないね」

アートンもそういうと、

黒谷の住む部屋の階段を上っていった。

インターホンを押すと、

「は~い」

黒谷の声が聞こえ玄関が開いた。

「俺に用があると聞いたので、

お昼持参で伺いました。

おまけは安達君にあげちゃうけど」

そういってバーガーセットの袋を見せた。

「助かる~俺、今日休みだから、

さっき起きたの。

お腹空いてたんだよね~」

そういうと二人を部屋にあげた。

「あれ? 少し荷物増えた? 」

以前よりキッチン周りに道具が多くなっていた。

コタツも置かれて、少しだけ生活感が出てきた。

「試作作るのに道具が必要だからさ。

あと、今年の冬は極寒だったじゃん。

光熱費はこたつが安いから買った。

暦の上では春だけど、やっぱ寒くてさ~」

向井達もコタツに胡坐をかくと、

「あったかい~」

と暖を取った。
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