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第六部
人柱
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暫くすると、梅干しを持って戻ってきた。
「これこれ。天上界の梅で漬けた梅干し」
「えっ? こんなのあったの? 」
早紀が驚いて見た。
「去年の梅は凄く良くてね。
冥王が弁財天に呼ばれて取りに行ったの」
「へえ~」
向井も肉厚もあり、美味しそうな梅に驚いた。
「食堂で食べてる肉の梅紫蘇巻きとかは、
これで作ってるんだよ」
「確かに梅の味は濃くて美味しいけど、
そうだったんですね」
佐久間も後ろから覗く。
「みんなが飲んでる梅酒だって、
僕が作ってるんですからね」
「それは有難うございます。
では、せっかくだから、
これで福茶を作りましょう」
向井は自慢げに言うドセを見ながら笑った。
お茶を淹れてテーブルに運ぶと、
皆で蕎麦と恵方巻を食べた。
「それ、美味しい? 」
三鬼がお茶を覗いてから向井を見た。
「う~ん、三鬼達にはまだ早いかな。
飲んでみる? 」
湯呑を渡すと少し口を付け、
何とも言えない顔をした。
大人達が笑うのを見て、
「まずいの? 」
こんが聞く。
「酸っぱい………で、しょっぱい」
「こんと呉葉も飲んでみる? 」
向井が聞くと、二人の横に首を振る姿に、
大人達は笑いながら蕎麦を食べた。
それから数日後――――――――
トリアが急ぐ様子で下界から戻ると、
休憩室にいた向井に、
「ちょっと来て」
と声をかけて冥王室に向かった。
部屋に入ると、
中にはディッセ、アートン、シェデムと、
いつものメンバーがそこにいた。
「みんな揃いましたね」
冥王が言うと、
「実はヴィヴィが、
下界のAI情報を入手しました」
「えっ? 」
トリア以外の者が目を見開いた。
「ヴィヴィはスパイだと言ったでしょ? 」
「でも、反対にこっちの情報も向こうに渡っているのでは?
とも言ったはずだけど? 」
ディッセが冥王を見た。
「ヴィヴィに君が疑っていると言ったら、
意味ありげにフフッと笑ってました」
「………」
ディッセはムッとした表情をして口をつぐんだ。
「まあ、こちらの情報なんて、
大したことはないです。
下界の者に手出しはできませんからね。
で、ここからは向井君にはキツイ話になります。
君が生活していた世界で行われていたことであり、
安達君に関係していることにもつながります」
冥王はいつになく厳しい表情で向井を見た。
向井はその顔つきに、
自分の考えに間違いがないことを確信した。
「それは儀式についてですよね。
俺も結界について話を聞いた時に、
自分なりに幾つか仮説を立てて調べたんです。
俺の憶説にすぎませんが、
恐らく人柱………ではないですか? 」
冥王の眉がぴくッと動き、
ディッセ達の顔色が変わった。
「これこれ。天上界の梅で漬けた梅干し」
「えっ? こんなのあったの? 」
早紀が驚いて見た。
「去年の梅は凄く良くてね。
冥王が弁財天に呼ばれて取りに行ったの」
「へえ~」
向井も肉厚もあり、美味しそうな梅に驚いた。
「食堂で食べてる肉の梅紫蘇巻きとかは、
これで作ってるんだよ」
「確かに梅の味は濃くて美味しいけど、
そうだったんですね」
佐久間も後ろから覗く。
「みんなが飲んでる梅酒だって、
僕が作ってるんですからね」
「それは有難うございます。
では、せっかくだから、
これで福茶を作りましょう」
向井は自慢げに言うドセを見ながら笑った。
お茶を淹れてテーブルに運ぶと、
皆で蕎麦と恵方巻を食べた。
「それ、美味しい? 」
三鬼がお茶を覗いてから向井を見た。
「う~ん、三鬼達にはまだ早いかな。
飲んでみる? 」
湯呑を渡すと少し口を付け、
何とも言えない顔をした。
大人達が笑うのを見て、
「まずいの? 」
こんが聞く。
「酸っぱい………で、しょっぱい」
「こんと呉葉も飲んでみる? 」
向井が聞くと、二人の横に首を振る姿に、
大人達は笑いながら蕎麦を食べた。
それから数日後――――――――
トリアが急ぐ様子で下界から戻ると、
休憩室にいた向井に、
「ちょっと来て」
と声をかけて冥王室に向かった。
部屋に入ると、
中にはディッセ、アートン、シェデムと、
いつものメンバーがそこにいた。
「みんな揃いましたね」
冥王が言うと、
「実はヴィヴィが、
下界のAI情報を入手しました」
「えっ? 」
トリア以外の者が目を見開いた。
「ヴィヴィはスパイだと言ったでしょ? 」
「でも、反対にこっちの情報も向こうに渡っているのでは?
とも言ったはずだけど? 」
ディッセが冥王を見た。
「ヴィヴィに君が疑っていると言ったら、
意味ありげにフフッと笑ってました」
「………」
ディッセはムッとした表情をして口をつぐんだ。
「まあ、こちらの情報なんて、
大したことはないです。
下界の者に手出しはできませんからね。
で、ここからは向井君にはキツイ話になります。
君が生活していた世界で行われていたことであり、
安達君に関係していることにもつながります」
冥王はいつになく厳しい表情で向井を見た。
向井はその顔つきに、
自分の考えに間違いがないことを確信した。
「それは儀式についてですよね。
俺も結界について話を聞いた時に、
自分なりに幾つか仮説を立てて調べたんです。
俺の憶説にすぎませんが、
恐らく人柱………ではないですか? 」
冥王の眉がぴくッと動き、
ディッセ達の顔色が変わった。
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