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第六部

牧野の昔話

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「まあ、立ち話もなんだから、

座ってください」

毘沙門天はそういうと円形テーブルに移動し、

皆を座らせた。

「これね。先程、

持国天とそこの果樹園で積んできた果実。

下界にはない特別な食べ物なんですよ。

持国天も冥王に会いたいと言ってたんだけど、

仕事でね」

毘沙門天はそういうと、

テーブルに置かれたケーキを見せて、

紅茶を入れた。

「うちの夜叉が作った、

得意なスイーツなんだよ~」

「君は持国天に果実を摘ませ、

鬼にスイーツを作らせているんですか? 」

冥王のあきれたような顔に、

「あなただって同じでしょ。

妖鬼に無理難題言ってるって、

この前聞きましたよ」

と言ってツンと横を向いた。

「どっちもどっちよね」

トリアは言うと、

出されたケーキにフォークを入れた。

「う~~ん、美味しい。

いい時に来たなぁ~」

トリアは口に入れて笑顔になると、

向井を見た。

「天上界の果実はね。

ここと冥界でしか食べることはできない、

特別なものなの。

冥王がここに来たときくらいしか、

持って帰れないから、

向井君も初めての味わいだと思うわよ。

凄く美味しいから食べてみて」

「はい。いただきます」

ベリー系の赤い果実だが、

鼻腔をくすぐる甘い香りが何とも表現しがたい。

向井も一口食べて驚き、自然と笑みがこぼれた。

「美味しいですね。

本当に今まで味わったことのないものです」

毘沙門天達もその笑顔に嬉しそうにほほ笑むと、

自分達も食べ始めた。

「今日はたくさん摘んだから、

持って帰るといいよ。

牧野君達も大喜びするんじゃないの」

「では優香さんに何か美味しいスイーツを、

作って頂きましょう」

冥王も嬉しそうにケーキを口に運んだ。

寿尊も笑顔で頷いている。

「そうそう、水光姫の事だけどね。

大分回復はしたけど、

まだ時間はかかりそうだね。

でもうちの薬師が見てるから、

安心していいですよ」

「そうですか。よかったです」

向井は胸をなでおろした。

「調子が良ければ、

君達に会いに来ると言ってたけどね」

「無理しなくていいよ。

きちんと静養出来てるなら安心。

ねっ、向井君」

トリアの言葉に向井も頷いた。

「ところでうちの坊主は、

迷惑かけておりませんか? 」

寿尊が尋ねた。

「牧野君は毎日元気でやってますよ。

食べて寝て遊んで仕事して」

冥王が言うと、

「仕事は最後ですか」

寿尊が笑った。


そのあとも牧野の子供の頃の話に、

皆は笑いながら聞いていた。

「牧野君の今があるのは、

寿尊さんのお陰だというのが分かりました」

向井は話を聞いて頷いた。

「では、そろそろ私達もお暇しましょう」

そういって冥王が立ち上がり、

向井達もそれに習うと、

ミヒカが部屋に入ってきた。
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