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第五部

ミヒカの記憶

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話を終え、三人が外に出ると、

赤姫がやってきた。

「美しいですね。

それが黒谷君からのプレゼントですか? 」

「似合うかの? 」

「ほんと綺麗~いいのをもらったじゃない」

赤姫が嬉しそうに話すのを、

黒谷も照れながら見ていた。

「そうそう、お前たちに話しておこうと思ってな。

これは神の話だから、お前は家に帰りや」

「え~俺にも内緒なの」

「ほれ」

赤姫が手で追いやるのを見て、

「じゃあ、またね」

と渋々部屋に帰っていった。

黒谷の姿が見えなくなるのを待って、

「話って? 」

トリアが聞いた。

赤姫は二人を祠の奥の土地に連れて行った。

そこには小さな光る白蛇がいた。

「これがあの虎獅狼達の住処を守っていたミヒカじゃ」

ミヒカは弱い光で姿を現すと、

少女の姿になった。

「まだ、力が戻ってきておらなんだ。

ここが聖地であれば祓えたのだが、

既に私の祠も壊され、

この地は不浄の地でもあるのでな。

今はこれが精一杯じゃ」

向井が静かに近寄り声をかけると、

ミヒカは深々と頭を下げた。

「ミヒカはまだ声を出すことはできん。

やっとここまで回復したが、

もし彼奴等がここに来たらミヒカはもたん。

今の所静まっておるが、

地域神の話では全国で動きがあるとか。

冥王は知っておるのか? 」

その話に向井とトリアは顔を見合わせた。

「………ん~一応、見張りは付けていますので、

もし動きがあった場合は、

冥王も黙ってはいないと思います」

向井の言葉に、

「トリアが言っておったろう。

神は祟ると。

軽んじる行動が続けば、

大人しく見ているわけにはいかんからな。

冥王には言っておけ」

赤姫が冷たい声で言った。

「トリアさん。ミヒカさんの力を取り戻すことは、

難しいでしょうか」

向井が振り返ってトリアを見た。

トリアは暫し考え込むと、

「………向井君、今、霊玉持ってる? 」

と聞いた。

「ありますけど、これ封じ玉ですよ」

その言葉に赤姫も納得したのか、

「向井、その玉でミヒカの負を少しでもいい、

吸収できはせぬか? 」

「!! 」

二人の会話をつなぎ合わせて、

向井も理解すると霊玉を掌に乗せた。

言霊を放ち吸い込ませると、

静かにミヒカの両手に握らせる。

その手から全身を包むように光の渦が広がり、

ミヒカの全身を包んだ。

光りが消えると、姿形がはっきりしてきた。

瞬間、向井の顔が苦しそうに歪み、

よろめいた。

「向井君!? 」

トリアが慌てて近寄ろうとするのを、

赤姫は制止すると向井に近づき、

その額に軽く指を置いてトンッと押した。

「!! 」

苦しそうだった向井の表情が元に戻った。

「なに? どうしたの? 大丈夫? 」

トリアが走りよる。

なんだ? 無数の声、情景があふれるように流れてきた。

恐怖………苦痛………憎悪………

向井は黙ったまま、軽く頭を振った。
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