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第十二部
黒谷の涙
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それからしばらくすると、
毘沙門天親子弁当に向け、
試作品を作っていた黒谷から連絡があった。
「俺達は試作を食べる権利をもらってるぞ」
牧野が安達と一緒に休憩室に来ると、
向井に言った。
「分かってますよ。
黒谷君からも連れてきてくださいって、
言われました。
今日はキッチンじゃなくて、
団地で試食を作られたそうなので、
そっちに行きます」
向井が笑いながら話していると、
「今日は俺も行くよ」
オクトが道具一式持ってやってきた。
「この前カット頼まれたからね。
ついでにお弁当も試食できるし、
いい仕事だよね~」
オクトが笑った。
「そういえば坂下は? 」
牧野がきょろきょろと姿を探す。
「今日はディッセさんとシェデムさんと先に、
行ってます。
そろそろ会わせてあげないと可哀想ですからね」
「今頃黒谷、泣いてんじゃね」
「号泣してるかもしれないね」
牧野を見てオクトも笑った。
「向井さん達は後から来るの?
言われたから一人分多めに作ったよ」
団地のキッチンで試食の弁当を作っていた黒谷は、
人数分用意しながらディッセとシェデムを見た。
「うん。今日はオクトも一緒だから
もう少ししたら来ると思うよ」
ディッセがリビングで足を延ばして、
気持ちよさそうに寝転んだ。
「オクトさんからどの髪型にするか、
ヘアカットの本見せられて悩んじゃったよ」
「そのために少し髪伸ばしてたんだもんね」
シェデムもリビングのテーブルにつくと、
珈琲を飲みながら笑った。
「そういえばさ、あの店。
本当に俺が引き継いでいいのかな」
「なに、嫌なの?
ああいうお店を作りたいって言ってたんでしょ」
シェデムが言う。
「そうじゃなくて、なんか悪いなって。
本人はいないのに、
大切な店に土足で入るみたいな気がしてさ」
「だってさ」
ディッセが言って体を起こすと、
誰もいない隣を向いて言った。
坂下は姿を現すと、
立ち上がった。
「えっ? えっ………どういう事?
さ、坂下君!? 」
驚く黒谷に坂下がいたずらっ子のように笑った。
「ごめんね。僕もこんなに早く死ぬなんて、
思ってなかったからさ。
もっと早くに会いたかったんだけど、
黒谷君が落ち着くまでと思って」
「えっ? え………俺、頭ん中真っ白なんだけど」
呆然とする黒谷に、
「あのお店さ、黒谷君に譲りたいんだ。
お店を持つことで、
かえって忙しくなるかもしれないけど、
いいかな? 」
「えっ? えっ………と」
黒谷は意味が分からずディッセ達を見た。
それから坂下を見ると、
ポロポロ涙が零れ初め、
「わあああああ~~~~~~~」
と声を出して泣き出した。
「あらら、いい年のおじさんが子供みたいね」
シェデムは笑うと頬杖をついて笑った。
毘沙門天親子弁当に向け、
試作品を作っていた黒谷から連絡があった。
「俺達は試作を食べる権利をもらってるぞ」
牧野が安達と一緒に休憩室に来ると、
向井に言った。
「分かってますよ。
黒谷君からも連れてきてくださいって、
言われました。
今日はキッチンじゃなくて、
団地で試食を作られたそうなので、
そっちに行きます」
向井が笑いながら話していると、
「今日は俺も行くよ」
オクトが道具一式持ってやってきた。
「この前カット頼まれたからね。
ついでにお弁当も試食できるし、
いい仕事だよね~」
オクトが笑った。
「そういえば坂下は? 」
牧野がきょろきょろと姿を探す。
「今日はディッセさんとシェデムさんと先に、
行ってます。
そろそろ会わせてあげないと可哀想ですからね」
「今頃黒谷、泣いてんじゃね」
「号泣してるかもしれないね」
牧野を見てオクトも笑った。
「向井さん達は後から来るの?
言われたから一人分多めに作ったよ」
団地のキッチンで試食の弁当を作っていた黒谷は、
人数分用意しながらディッセとシェデムを見た。
「うん。今日はオクトも一緒だから
もう少ししたら来ると思うよ」
ディッセがリビングで足を延ばして、
気持ちよさそうに寝転んだ。
「オクトさんからどの髪型にするか、
ヘアカットの本見せられて悩んじゃったよ」
「そのために少し髪伸ばしてたんだもんね」
シェデムもリビングのテーブルにつくと、
珈琲を飲みながら笑った。
「そういえばさ、あの店。
本当に俺が引き継いでいいのかな」
「なに、嫌なの?
ああいうお店を作りたいって言ってたんでしょ」
シェデムが言う。
「そうじゃなくて、なんか悪いなって。
本人はいないのに、
大切な店に土足で入るみたいな気がしてさ」
「だってさ」
ディッセが言って体を起こすと、
誰もいない隣を向いて言った。
坂下は姿を現すと、
立ち上がった。
「えっ? えっ………どういう事?
さ、坂下君!? 」
驚く黒谷に坂下がいたずらっ子のように笑った。
「ごめんね。僕もこんなに早く死ぬなんて、
思ってなかったからさ。
もっと早くに会いたかったんだけど、
黒谷君が落ち着くまでと思って」
「えっ? え………俺、頭ん中真っ白なんだけど」
呆然とする黒谷に、
「あのお店さ、黒谷君に譲りたいんだ。
お店を持つことで、
かえって忙しくなるかもしれないけど、
いいかな? 」
「えっ? えっ………と」
黒谷は意味が分からずディッセ達を見た。
それから坂下を見ると、
ポロポロ涙が零れ初め、
「わあああああ~~~~~~~」
と声を出して泣き出した。
「あらら、いい年のおじさんが子供みたいね」
シェデムは笑うと頬杖をついて笑った。
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