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第十二部

天上界のケーキ

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「あ~あ、パン焼いてる途中なのに」

優香はあきれ顔で言うと、

窯の様子をうかがった。

「おっ、美味しそうに焼けてますね」

向井も窯を覗く。

「あと、数分かな」

優香も笑顔になると、

「今日はパンを焼いたから、

夜はシチューにするってセーズが言ってたよ」

と言ってから、フルーツを見て腕組みした。

「このままでも美味しいんだけど、

天上界の果物はすぐに傷むから………

たまにはフルーツの中華まんにしてみようか」

優香が向井を見上げた。

「それ、美味しそうですね」

向井も笑顔になる。

「最近は天上界からも神様が来るじゃない。

皆、食事されるから、

妖鬼が考えて、

少しお洒落な? 空間にしたのよ」

「それでこんな雰囲気になったんですね」

向井も納得したように頷いた。

「安達君が今度は、

パンに合うスイーツを教えてくれって、

時間があれば厨房に入り浸ってるよ」

優香が楽しそうに笑った。

「それはすいませんね。

邪魔するようなら追い出していいですから」

向井も笑うと、

「いいのいいの。最近思うんだけど、

私今が一番幸せかも。

人間の時はどこか競争してた感じがあったんだけど、

ここで安達君に教えてると、

心から楽しいのよね」

優香の笑顔に向井も嬉しくなった。

そんな話をしてると慌てて、

坂下と安達が戻ってきた。

「パン、パン」

「大丈夫よ。ちゃんとみてたから」

優香は笑いながら言うと、

「私もそのケーキ貰ってこよう。

味見しないとね~」

と楽しそうに厨房を出て行った。

「じゃあ、俺も一旦休憩室に戻りますね。

パン作り頑張って」

向井も二人に声をかけると、

その場を離れた。


――――――――


休憩室に入ると、

優香はすでに冥王の横に座り、

食べながら話を聞いている。

「ですからね、これをアイスにして食べたら、

美味しいのではないかと」

「うん、そうね。シャーベットやジェラードでも、

美味しいだろうね」

優香がケーキをゆっくりかみしめながら話す。

「僕、ソフトクリームがいい」

三鬼が優香のそばに来ると言った。

「そうか~三鬼はバニラアイス好きだもんね」

優香が笑いながら言う。

「優香ちゃんは何を作ろうと思ってたの? 」

早紀の問いに振り向くと、

「う~ん、スイーツの中華まん。

甘くて、このトロ~ッとした蜜が、

割って出てきたら、

たまらないだろうな~と思ってたんだけど」

「美味しそうですね~」

冥王の顔も輝く。

「それも作ってください」

「作りたいけど、この量だと両方は無理よ。

食べたかったら天上界から持ってきてください」

ム~とアヒル顔をする冥王にみんなが笑っているので、

「毘沙門天様にお願いされたらどうです? 」

「向井君」

その声に冥王達は振り返った。

「もうすぐイベントでしょ。

毘沙門天様もお守りに、

念を入れに来られるのでしょう? 」

「おお~そうでした。では、そうしましょう」

冥王はそういうと残りのケーキを頬張った。
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