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第十二部

動き出す冥界

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それからは向井達はチーム分けをし、

向井のみ一人でそれぞれの地域を見回った。

冥界に戻ると冥王室に行き、

ディッセ達と結界の状況を確認した。

「短期間でよくここまでできましたね」

冥王も空間ディスプレイを見ながら驚いていた。

悪霊の膨張している地域以外、

光り輝く地域には二重で結界をはり、

とりあえず外部からの負を断ち切った。

「あとは除去課が定期的に悪霊退治して、

霊が増大している場所には毒が蔓延するので、

それを取り去る作業で犯罪も減るでしょうし、

中央にも少しは青空が戻るかもしれません」

向井が説明した。

「ただ、西と北では地震が多くなっているというので、

神の怒りを鎮めることが先決かもしれないですね」

「そうですか………」

冥王は少し思い見ると、

「では一度、天上界に出向きましょう。

毘沙門天にお願いして、

まずは四天王に話を通しておきます。

皆さん向井君にお会いしたいようですから、

今回もご同行お願いしますね」

「俺もですか? 」

「嫌ですか? アートンにも付き添ってもらいますよ」

「えっ? 」

アートンも驚いて冥王を見た。

「何ですか。二人して」

「………別に嫌という訳ではなく、

この冥界の景色に慣れているので、

天上界はまぶしすぎて」

「そうそう、僕もなんかこそばゆいというか」

二人が顔を見合わせて笑った。

「俺は別に平気だけどね~」

ディッセの言葉に、

「だったら僕の代わりに行ってよ」

アートンが言った。

「そうしたいのは山々なんだけど、

イベントが近いんで忙しいんだよ」

「そういう訳でシェデムも無理なんです」

冥王が笑った。

「まあいいや。向井さんも一緒なら、

毘沙門天もご機嫌だろうし」

アートンは横に立つ向井を見て笑顔になった。

「そしてそろそろ新人が加わりますよ。

楽しみですね~

これで十三人………ん? 十三か………

不吉な数字? 忌み数ですね~

でもここは冥界ですから」

冥王はにやにや笑うと、

両手を組み向井達を見た。


――――――――


新人が来るという事で、

その日は誰もがドキドキしながら、

待っていた。

「男? 女? 」

早紀も気になるのか、

みんなに聞いて回っていた。

「さあ? 多分男性だと思いますけど」

死神課にやってきた早紀に、

セイが言った。

「年は? 除去課に配属って言われたから、

俺も気になってるんだよね」

牧野も歩いてきた。

「除去課なんだから若い奴だよね? 」

「えっと………牧野君より十歳上だから三十一歳? 」

「それってビミョー」

「いい男かな~」

早紀が楽しそうに言うのを見て、

「俺は楽できれば不細工でもいいよ」

と面白くなさそうに言った。

「なに? 焼いちゃって~」

早紀の言葉にセイも笑うと、

「これから来るって~! 」

安達が呼びに来た。

「おっ、どれどれ~」

セイもカウンターを出てくると、

牧野達と一緒に休憩室に向かった。



一ヶ月前―――――――――

三途の川ではこの日も霊達が順番待ちで、

舟に乗せられ向こう岸に渡っていた。



こんな早くに死ぬなんて、考えてもいなかったな~

考えたら昔は人生五十年だもんな。

中央では人生百十年なんて言ってるけど、

僕みたいなのは人生六十年が普通だから、

人生の半分以上は生きたし、

まぁいいのか。


彼は順番を待ちながら周りを見ていた。


冥府って、

お花畑なのかと思ってたんだけどなぁ~

全然違うな。

なんか暗いし、この後どこに行くんだろう………

みんな死んでるんだよな。

泣いてる奴もいれば、嬉しそうなのもいる。

不思議だな。


彼がそんなことを考えながら列に並んでいると、


ん? あのパネル………どこかで見た気がする。

………思い出せないなぁ~


桟橋の近くにある等身大パネルに首を傾げた。

「次、五百~五百三十番まで舟に乗ってください。

十五人ずつ二艘に分けて行きます」

川の近くの鬼が列に並ぶ者達に声をかけた。


僕は………五百十五番だ。


彼は渡された木札を見た。

船頭の近くまで行き木札を渡し、

舟に乗ろうとしたところで、

「君はこれには乗らないでください。

こちらからどうぞ」

と鬼に呼び止められ、別の場所に移動させられた。


えっ? な、なに? 

僕ってここから地獄に落とされるの? 

そんなに悪いことした? 

まじめに生きてきたよ………


そんな事を思っていると、

「あっ、来ましたね。こちらです」

向井が扉の前で待っていた。

えええええええ~~~~~~~~~っ!!

驚く男に向井は笑って手を振った。
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