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第四部

牧野は大きな子供

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「よいしょっ」

と、抱きなおす向井を見て、

「ほら、俺が抱っこしてやるから、

どっちかこっちに来い」

ディッセが手を広げた。

「ヤッ!! 」

二人は同時に首を振ると、

向井にべた~っと抱きついた。

「振られたね」

アートンは笑うと、

「向井さん、重いでしょ」

「大事なお姫様たちだからね。これくらいは」

向井は笑うとこんと呉葉に話しかけながら、

工房に入っていった。

「向井さんのあの笑顔は、やっぱ罪深いよね~

子供もメロメロ? 」

アートンは感心するように言うと、

ディッセと笑いながら工房に入った。

室内では作業する者たちが、

端のテーブルに移動して、

妖怪達と妖鬼、弥生が図面を見て話し合いをしていた。

向井達が入ってくると、

三鬼が抱きついてきた。

「ほら、お前まで抱っこしたら、

向井さんが倒れちゃうだろ」

ディッセは引き離すと、

抱き上げ膝に乗せて椅子に座った。

「今ね、千乃さんと話してたんだけど、

彼女はドレッサーと、

ジュエリーチェストがあれば、

ベッドは普通でいいし、

部屋もこじんまりした大きさでいいんですって」

弥生がインテリア雑誌を広げて、

千乃と楽しそうに写真を見ながら話した。

「私が作ったアクセサリーを、

綺麗に並べて飾りたいの。

作りたいものがいっぱいあるから、

チェストは外せない」

千乃が笑顔になった。

「俺達は寝起きできればこだわりはないが、

今、千乃の話を聞いて、

俺も作ったものを飾りたいから、

そのチェストが欲しい」

「俺も欲しい」

クロもいい、

向井もチビを抱いたまま椅子に腰かけると、

図面を見た。

「お姫様たちは天蓋ベッドで、

三鬼は車のベッドがいいんですよね」

インテリア雑誌のキッズページをパラパラめくった。

「確かに子供にとっては、

憧れのインテリアが沢山ですね」

向井は夢中になって雑誌を見るチビ達に笑った。

「こんね、こんね、

ピンクでおリボンのついたのがいいの」

向井の顔を見ながら、雑誌を指さす。

「うん。可愛いね」

スモーキーネットタイプの、

丸型の天蓋ベッドを見る。

「わらわのはお姫様のベッドじゃ」

指をさす写真を見て、

「あ~カーテンにおリボンがついてるんですね。

これも可愛いね」

同じ年ごろの子供でも、

これだけ趣味も違うんだから、

妖鬼さんが悲鳴を上げるのも無理はないか。

向井は笑った。

「僕はこれ。カッコいい。

レンジャーブラックと同じ車なんだよ」

三鬼は興奮気味に説明した。

「妖鬼さんなら作れますよね」

向井の声にチビ達も期待の眼差しで見る。

横を見ると虎獅狼達も顔を輝かせている。

ディッセはケラケラと笑い出した。

「これくらい、妖鬼なら動作もないだろ。

皆まとめて作ってもらえ」

「他人ごとだと思って」

妖鬼はため息をつくと、

「作りますよ」

と笑った。

「で、部屋なんだけどここがチビ達で、

その両隣で千乃の部屋、虎獅狼とクロの部屋でいいか? 」

「俺はかまわんぞ」

「私もいいわよ」

「じゃあ、それで決まり。

まずは面倒なちびっ子のベッドから始めるか」

妖鬼のその言葉に三人は膝から下りると、

雑誌を見ながら一生懸命話し始めた。

「さっきまで、子供たち三人で喧嘩してて、

大変だったのよ」

弥生が笑いながら言った。

今は楽しそうに三人で笑っている。

「子供なんてそんなもんですよ。

うちの大きな子供達も変わらないでしょ」

そんな話をしていると、

仕事から戻ってきた牧野が顔をのぞかせた。

「ほら、噂をすれば子供一号が帰ってきた」

向井の言葉に、

そこにいた大人たちは同時に振り返った。

「えっ、なに? 」

牧野が部屋に入ってきたのを見て、

皆が笑った。

「なんだよ」

「なんでもないですよ」

首をかしげる牧野に、その場は和やかになった。
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