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第十八部

竜之介の想い

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大林がサロンに戻り、

他の霊達と話す姿に、

「そのギャラリーを見てみたいです」

竜之介が向井を見た。

二人はギャラリーに行くと、

中には数人の霊がギャラリーを楽しそうに見ていた。

竜之介は入り口の絵を見て、

「なんですか。これは。

これが龍之介の絵なんですか。

酷いですね~

せっかくの素晴らしいギャラリーが台無しです」

と首を横に振りため息をついた。

「私も絵に関しては褒められたものではないので、

冥王の事は言えないんですけどね」

向井も笑いながら絵を見た。

竜之介はのんびり見ながら、

チビ達の七五三の写真に笑顔になった。

「可愛いですね」

「チビ達のお祝い事なんで、

冥王がコーナーを設けて飾っているんです。

七五三は吉祥天様からも加護を受けたので、

喜んでました」

竜之介は魅入るように一つ一つ作品を眺めては、

笑顔で頷いていた。



そのあとも休憩室に行くと、

誰もいなかったこともあり、

楽しそうに電車に乗り、

優香が作った残りのクッキーを手に、

冥王室に戻った。

「龍之介がここでどのように過ごしているのか、

分かってよかったです。

この国の冥王が亡くなった後、

次は誰が担当するのか随分と揉めたんですよ」

「ということは、神様にも見放された国という事ですね」

向井も驚くとため息まじりに笑った。

「あはははは」

竜之介も声をあげて笑うと、

「ここが酷い状態だったのは、

私達にも分かっていましたからね。

地球は美しくても、中身が酷い。

幾ら綺麗に着飾っても、

内面が汚れているものに神は嫌悪します。

人間のように騙されることはありません」

その話に向井が黙って聞いていたので、

竜之介が続けた。

「誰もが面倒だと感じる中、

龍之介だけはこの国に魅せられたようでした。

だからね。私は賭けをしようと言ったんです」

「賭け? 」

向井が聞き返した。

「私にとってこんな国は、

足かせにしかならないですからね。

潰してしまおうと思ってたんです。

人間なんて私にはどうでもいい存在ですしね」

向井が俯いて笑う様子に、

「私は酷い神でしょ」

と自嘲気味に言った。

「いえ、神様らしいと思います」

その言葉に竜之介も笑うと、

「そんな私の考えが分かったのでしょう。

龍之介はわざと負けてここへ来たんですよ」

「そうですか」

向井も顔をあげて相手を見た。

「まあ、そんな私もね。冥王室を見ていて、

向井君に興味を持ったんです。

神も人も面白い。

だからね、今までの事は、

ちょっとした神のいたずらという事で、

許していただけますか」

茶目っ気のある笑顔を見せる竜之介に、

「そういう所は冥王によく似ていらっしゃる」

と向井も笑顔になった。

竜之介は壁の前に行き手をかざすと、

「では、そろそろ彼奴も戻る頃でしょう。

私の役目も終わりです。

今日は楽しかったですよ」

と言った。

「私も一緒に過ごせて楽しかったです」

向井が頭を下げると、

「天空界にも遊びに来てくださいよ。

ここの天上界より近代的で快適空間ですよ。

ではまた」

また? 

驚く向井に竜之介はそういって笑うと、

壁の中にスッと姿を消した。
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