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第十八部

冥王の内職

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冥界では竜之介が向井を連れて、

あちこち見て歩いていた。

「ほお~ここが工房ですか。

広いですね」

冥王が入り口に立っている姿に、

「あれ? 今日はここで作られるんですか? 」

元秀がブースから出てきて声をかけた。

「作る? 」

竜之介が向井を見た。

「冥王は妖怪と一緒に、

自分の食い扶持を稼いでいるんですよ」

「なんと! 」

向井の説明に吃驚仰天し、

そのまま声をあげて笑い出した。

「えっ? 」

その笑い声に工房にいた作家たちが、

ビックリして振り返る。

「どうしたんですか? 」

十朱も作業から顔をあげ、

驚きながらも笑った。

「すいませんね~」

竜之介は腹を押さえ笑いをこらえたまま、

部屋を出て行った。

「今日は朝から色々あって、

ちょっとおかしいんですよ。

皆さんは気にしないで作業を続けてください」

向井は笑顔で説明すると、

竜之介の後を追った。

廊下に出ると壁に体を支えながら、

可笑しそうに笑う竜之介がいた。

「あいつはここで何をしているんですか? 」

笑いがおさまると向井を見た。

「お仕事と息抜きでしょうか」

「ほぉ~」

竜之介は頷くと、

横を見てから、

「この部屋は? 」

と聞いた。

「図書室です」

「図書室もあるんですか」

竜之介の瞳が輝くと楽しそうに入って行った。

中にはいつもいる虎獅狼達の姿がない。

向井が和室をのぞいていると、

フンフが二人に気づき近づいてきた。

「冥王が楽しみにしていた小説。

書き直したから、

河原さんがチェックを入れて欲しいそうよ」

冥王を見てから、

「虎獅狼達なら妖鬼と部屋のリフォーム中」

と向井に言った。

「リフォーム? 」

「そう。作品の中でもお気に入りのものとか、

キャビネットに飾ってるじゃない。

安達君のお部屋を見て、

自分達もあんな感じにしたいんだって」

「そうなんですね」

向井が頷いていると、

「あっそうだ。それでね、ステッカーも貼りたいから、

向井さんにお願いしたいって。

時間のある時に聞いてあげて」

「わかりました」

フンフは入り口で言うと、

部屋を出て行った。

すると奥から河原がやってきた。

「いたいた。探しても見つからないから、

皆に聞いて回ったんだから」

不満そうな声で冥王を見た。

「私に用とか」

竜之介が河原にいうと、

「この前も忘れてたけど、

最近物忘れが酷くない? 

大丈夫なの? これ」

と向井を見た。

「これ………失礼な。

私はそこまで年寄りではありませんよ」

ふんと横を向く竜之介に、

「気にしないでください」

向井は笑いながら河原に言った。

「この前冥王が直してほしいと言った部分、

面倒だから全部ご要望通りにしたよ」

呆れたように言うと、タブレットを渡した。
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