上 下
587 / 631
第十七部

派遣霊 河原

しおりを挟む
「この果実はケーキにするんですか? 」

「どうしようか悩んでるの。

これ、向井さんも一粒食べてみて」

優香にいわれるままに一粒口に入れた。

「!! これはまた蜜実と違って、

甘酸っぱくて香りは甘さが漂って、

何とも言えない美味しさですね」

「でしょう~」

河原が笑顔で向井を見た。

「私はシフォンみたいな、

ふんわりしたケーキで食べたいんだよね~」

河原が言うのを笑いながら聞いていたセーズが、

「これ肉と合わせても美味しいと思うけど、

河原さん達が美味しく食べるには、

スイーツが一番だからね」

と向井を見た。

「そうですね。この間は蜜実のソフトクリームが、

評判がよかったじゃないですか。

その時に安達君がプリンかブランマンジェ? でも、

食べてみたいって言ってたんですよね」

「ブランマンジェか…」

優香が考え込むように顎に手を置いた。

「ブランマンジェって何? 」

河原とセーズが同時に聞いた。

「ん? 」

優香が二人を見ると、

「基本は砂糖、牛乳、アーモンドのスイーツなんだけどね。

確かにこのフルーツだとソースにしたら合うかもね」

そう説明した。

「でも、私はケーキが食べたい~」

河原がカウンターに頬杖をついた。

「そうか。河原さんは、

ふんわりしたケーキ食べたいんだもんね」

優香の言葉にうんうんと首を振る。

「量もあるし、この果実を入れたシフォンに、

果実を入れたクリームをトッピングしようか」

優香が言った。

「それ美味しそう~」

河原がいい、セーズと顔を見合わせ笑った。

「それより河原さんは、

執筆の方は進んでるんですか? 」

向井が聞くと、

「イベント用の五巻はもう出来てるし、

未完の長編は十四巻の原稿をフンフに渡しておいた。

アートンとエナトが続きは? ってうるさくてさ。

そんなに書けないっての」

河原がむくれた。

「新作を書いてるのに、

また新しい作品を冥王と作ってるでしょう。

だから続きが書けないんじゃないですか? 」

「なに? 冥王とこそこそ、

図書室でやってると思ったら、

新たな作品を書いてるの? 」

優香が驚くように声をあげた。

「だってさ。新しいのが作りたくなって書いてたら、

冥王がこうして欲しい、ああして欲しいって、

茶々入れてくるから、

だったら一緒に作ったほうが早いじゃん」

「冥王はどうしようもないなぁ~」

「だよね~私は悪くないよね~」

セーズの言葉に河原は頷くと、

向井を見た。

「まぁ二人が楽しいならいいですけど、

冥界には続きを楽しみにしているファンもいますから、

ちゃんと書いてください」

「OK~」

河原が言うと優香たちも一緒になって笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

独り日和 ―春夏秋冬―

八雲翔
ライト文芸
主人公は櫻野冬という老女。 彼を取り巻く人と犬と猫の日常を書いたストーリーです。 仕事を探す四十代女性。 子供を一人で育てている未亡人。 元ヤクザ。 冬とひょんなことでの出会いから、 繋がる物語です。 春夏秋冬。 数ヶ月の出会いが一生の家族になる。 そんな冬と彼女を取り巻く人たちを見守ってください。 *この物語はフィクションです。 実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。 八雲翔

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタの村に招かれて勇気をもらうお話

Akitoです。
ライト文芸
「どうすれば友達ができるでしょうか……?」  12月23日の放課後、日直として学級日誌を書いていた山梨あかりはサンタへの切なる願いを無意識に日誌へ書きとめてしまう。  直後、チャイムの音が鳴り、我に返ったあかりは急いで日誌を書き直し日直の役目を終える。  日誌を提出して自宅へと帰ったあかりは、ベッドの上にプレゼントの箱が置かれていることに気がついて……。 ◇◇◇  友達のいない寂しい学生生活を送る女子高生の山梨あかりが、クリスマスの日にサンタクロースの村に招待され、勇気を受け取る物語です。  クリスマスの暇つぶしにでもどうぞ。

にほいち47

多摩みそ八
ライト文芸
フィクション旅行ライトノベル 女子大生4人がバイクで日本一周するお話です

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

ノイジーガール ~ちょっとそこの地下アイドルさん適性間違っていませんか?~

草野猫彦
ライト文芸
恵まれた環境に生まれた青年、渡辺俊は音大に通いながら、作曲や作詞を行い演奏までしつつも、ある水準を超えられない自分に苛立っていた。そんな彼は友人のバンドのヘルプに頼まれたライブスタジオで、対バンした地下アイドルグループの中に、インスピレーションを感じる声を持つアイドルを発見する。 欠点だらけの天才と、天才とまでは言えない技術者の二人が出会った時、一つの音楽の物語が始まった。 それは生き急ぐ若者たちの物語でもあった。

処理中です...