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第十七部

空間の穴に術

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翌日―――

向井達は少し時間をずらして、

食堂で朝食を取っていた。

「牧野君は朝からよく食べますね」

向井は大盛でご飯をお替りする牧野に驚いた。

「悪霊退治の後って、特に腹減るんだよね~」

「牧野君が食べなくなったら心配ですから、

沢山食べている内は元気な証拠ですね」

向井は食べ終えると、

トレイをカウンターに運んだ。

「珈琲あります? 」

向井がセーズに声をかけると、

「俺も飲みたい~」

牧野が振り返って言った。

「ありますよ」

セーズが言うと、

トレイを片付けに来た安達も、

「俺も飲みたい」

と向井を見た。

「では三人分お願いします」

「はい」

奥からドセが出てきて珈琲の準備を始めた。



三人が珈琲を飲んでいると、

チビ達が走ってきた。

「うるさいのが来た」

牧野が笑うと、

「これから動物園行くよ」

こんが嬉しそうに椅子に座る向井を見上げた。

「えっ? 今日………ですか? 」

向井が驚いていると、

後ろからトリアが歩いてきた。

「急で悪いんだけど、

チビ達を中央から少しだけ移動させたいのよ」

「なんで? 」

牧野が聞く。

大人達が話しているのを見て、

優香がキッチンからチビを手招きした。

「クッキー焼けたけど味見する? 」

「する~」

四人が走って行く姿に、

すいませんと向井とトリアが頭を下げた。

優香はいいからと笑顔で合図すると、

「一人一個ずつよ」

「チョコは? 」

「キャラメルは? 」

チビ達が夢中になっているのを見て、

トリアが話し始めた。

「この前、ヴァン達が穴の話をしてたでしょ。

私とアートンで、

その場所をチェックしに行ってきたの。

そしたら本当に、

ブラックホールみたいな穴が開いてて。

ヴァンが応急処置で結界張って、

とりあえず穴は塞いであったんだけど、

どこに繋がってるのか分からないのよ」

「それって宇宙なんじゃねえの? 映画の世界だよ」

牧野が楽しそうに目を輝かせた。

「そんな単純な事ならいいんだけど」

トリアも笑った。

「冥王は見当が付いてるって話ですけど」

向井がトリアを見た。

「まぁ一応ね。で、とりあえず危険なので、

これから穴をふさぎに行くの。

私とアートンとエハとヴァン、

それと坂下君と佐久間さんにもお願いして、

ちょっとした術をかけてくる」

「チビ達は冥界にいるのに危ないの? 」

安達が不思議そうに聞いた。

「昨日の下界の騒ぎの時に、

チビ達はちょっと不安定になって、

様子がおかしかったのよ」

「そうなんですか? 」

向井が驚く。

「妖怪は敏感だから、

虎獅狼達も背筋がぞわッとするって言ってたの。

妖怪の子は特に敏感でしょ。

で、冥王が簡単な暗示をかけて、

落ち着いてきたところで、

毘沙門天達が遊びに来たんで助かったのよ」

「大変でしたね」

「そうなのよ。でね、空間の穴は人食いビルを挟んで、

中央の両側にあるんで、

チビ達には北か西に、

移動してもらおうってことになったの。

丁度3DZOOに行きたがってたでしょ。

キャトルに連絡しておいたから、

向こうで待ってる」

「分かりました」

「牧野君と安達君も行きたいでしょ? 」

「行きたい! 」

トリアの言葉に二人が同時に言った。

「だからさ~チビ達の面倒もちゃんと見てよ。

あとね、源じいもチビ達にせがまれて、

一緒に行くから」

「分かった。

俺さ~この前調べたんだよ。

そしたら………見て、凄ぇのよ」

トリアの話も聞いているのか否か、

牧野が食堂のタブレットを動かした。

「これこれ。リアルだよな~」

「わぁ~ホントだ! 」

夢中になっている二人の姿に、

「向井君には面倒が増えちゃって悪いわね。

でも、キャトルとフェムティが同行してくれるから」

「はい」

向井は笑いながら頷いた。
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