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第十六部

ミニライブ

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「これ楽しみだったんだよね~」

作家もテーブルから身を乗り出して、

ステージを見ていた。

牧野と安達が走り出すのを見て、

岸本達も後を追った。

「そんなに有名な歌手なんですか? 」

毘沙門天が歌手の登場に沸くステージを見て、

向井に聞いた。

「冥王が知ったら大騒ぎですよ。

戻ったら自慢されるといいですよ」

「ほお~」

毘沙門天はいいことを聞いたぞという顔で、

にやにやと笑った。

「あれは何ですか? 」

毘沙門天が動くロボットカメラを見た。

「あぁ、あれ? 今この映像は捨て地限定で、

ライブ配信されてるの」

トリアがやってくると話した。

サランダとフェムトンはこんと呉葉に引っ張られ、

ステージの方に連れて行かれたようだ。

「チビ達も生で歌手を見るのは初めてだから、

興奮してるのよ」

トリアが笑うと三鬼を見た。

「三鬼も前で見たら? 」

足元で首を振る姿に向井が抱き上げると、

「三鬼は騒ぐ人が多いのは苦手みたいで。

抱っこしてればステージ見えるでしょ? 」

興味はあるようでステージで歌う歌手の姿を、

じっと見ていた。

「毘沙門天の結界の後、

ケーブル局内部も人が消えて、

一時混乱してたんだけど、

不正も分かって、

とりあえず綺麗に片づいて、

よかったんじゃない?

その後の処理は大変だったけど」

トリアが笑いながら話した。

「今の所どこも少人数で地元密着のニュースと、

冥王が楽しみに見てる百年位前の………え~と、

なんだっけ? ドラマ………」

トリアが思い出そうと上を向く。

「トレンディドラマですか? 」

「そうそれ! そのドラマを流してて、

今や捨て地のトレンディドラマブーム? 」

トリアが向井を見てケラケラ笑った。

「あれはトレンディドラマというんですか? 」

「なに? 毘沙門天も好き? 」

トリアが驚いて顔を見た。

「私にはよくわかりませんけど、

冥王は好きですね~

おやつの時間に見てるのは、

毎回人が死んでるドラマなんですけどね。

犯人が一向に分からん」

毘沙門天が不思議そうな顔で笑った。

「あれ、まだ続いてるんですね」

向井も笑いながら話した。

「中央では新作ドラマも作ってるけど、

捨て地はそんな予算ないし、

昔のドラマや映画で喜んでるんだからいいのよ。

そうそう、あの人気女優の斎藤ジュエリも、

最近捨て地に移住して話題になってるわよ」

「何かもめたんですか? 」

向井が聞くと、

「ほら、某TV局と蜜月関係にある大臣が、

イメージアップで政界ドラマを作る話があって、

それが具体的になったのよ。

その主演に斎藤ジュエリの名が挙がったんだけど、

脚本を渡されて、

こんなクソドラマには出ないって啖呵きって、

クソドラマがトレンドワードになったの。

このままじゃお蔵入りだって、

大臣のご機嫌取りに大忙しよ」

「そうなんですか? 女優さんは他にもいるでしょう? 」

毘沙門天が不思議そうに言うのを、

二人が顔を見合わせて笑った。

「ケチが付いたドラマで、

トップ女優が蹴って、

身の危険から捨て地に移住した作品ですからね。

党の支持者だと思われるのも嫌でしょうし、

政権側とべったりの事務所以外は、

上手く断っているのかもしれませんね」

向井がフッと笑った。

「どっちにしても主演が決まらなきゃ、

AI俳優で放送するんじゃない? 」

「人間とは面倒な生き物だ」

毘沙門天はあきれたようにトリアを見ると片笑んだ。

そんな話をしているとミニライブが終わり、

大きな歓声が響いてきた。
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