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第十五部

駄菓子屋のご夫婦

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「これ、人気なんですよ」

「俺、食べたことない」

安達が真剣に駄菓子を見ながら、

「これはカステラ? 」

と首を傾げた。

「棒に付いたカステラで、

美味しいですよ」

「へえ~なら俺も食べる」

安達と牧野も楽しそうに選びながら、

カゴに入れていった。

「あれ~」

ハクが指さして向井に言った。

「ん? これがいいの? 」

向井はハクを見るとおもちゃを手に取った。

「それ何? 」

安達も不思議そうに見た。

「吹き戻しですよ。

吹くとこのロールの部分が伸びて、

そのあとまた元に戻るおもちゃです」

向井が説明するのを見て、

「最近はこういう、

昔ながらのおもちゃで遊ぶ子も、

少ないですからね」

店主が話した。

「この子達には、

ちょうどいいおもちゃです」

向井は笑うと、

「ハクが気になっているようなので、

これと輪投げを買っていこうか」

とハクを見た。

「駄菓子屋さんは長いんですか? 」

向井が聞くと、

「中央の下区で祖父の代からやっていたんですけど、

駄菓子を作っている工場も少なくなって、

もう私の代で終わりですね」

「ねえ、このカードは何? 」

安達が向井に聞いた。

「ん? あぁ、面子ですね」

「めんこ? 」

「お前は面子も知らないのか? 」

牧野があきれたように言った。

「このカードを地面に並べて、

攻撃と守備に分かれて、上から角をぶつけて、

地面のカードをひっくり返すんだよ」

「へえ~」

そんな二人の姿に店主夫婦は笑うと、

「私らはね。ここに来ると決めた時、

最初は死ぬんじゃないかって思ってたんですよ」

「どうして? 」

安達が顔をあげて聞いた。

「捨て地の真実の壁は、世界中で話題ですからね」

「でも、悪人じゃなきゃ大丈夫だぞ」

牧野も店主を見た。

「ははは。確かに何も悪いことはしてないんですけど、

それでも後ろ暗さを感じることもあるんですよ」

「分かります」

店主の言葉に向井も笑顔になった。

「ここにきて本当によかったです」

奥さんも笑うと、

「先祖からの土地を、

二束三文で買いたたかれて、

区の住宅課に相談に行ったら、

外国人居住区を紹介されて参りました」

とため息をついた。

「安い値段で年寄りに貸してくれる家なんてないですし、

外国人居住区だって私らが借りるとなると、

家賃が高くて無理なんですよ。

だったら自分達で探してくれって言われて」

主人もハハハと笑った。

「それは御苦労されましたね」

向井が言う。

「でもね。捨て地に来て区役所に相談にいったら、

すぐに空き家を紹介してくれて、

それでまた駄菓子屋を始めたんです」

「僕ね~駄菓子好き~」

三鬼がやってくると笑顔で見上げた。

「こういう子供が多くて私らも嬉しいです。

下区では子供にも若いもんにも、

駄菓子屋は邪魔だって言われて。

ここにきて喜んでもらえて、

続けて良かったです」

店主が笑顔で三鬼の頭を撫で、

「それにね、ここだけの話、

下区より売り上げもいいんですよ」

と声をたてて笑った。
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