『アンダーワールド』冥王VS人間～魑魅魍魎の戦が今始まる～

第十五部

シールド事件

次の日は悪霊退治に人食いビルへ、

牧野はエナト、ティン、佐久間を連れて、

下界へ下りた。

殆ど除去は済んでいるので、

つなぎとめてある悪霊を除去するだけだが、

散った悪霊の方が後始末は大変かもしれない。

いざという時の為の仙木は、

牧野に渡してあるので問題はないだろう。

向井達は式神課の仕事へと向かうことになった。

死神課の前で場所の確認をしていると、

アンがやってきた。

「向井君、時間が空いたらこの場所に来てくれる？　」

「いいですよ」

向井が送信された地図を確認すると、

「チビの洋服買いに行くんだけど………」

そこまで言ったところで早紀とフェムトンが、

三鬼とハクを連れてやってきた。

「本当は私達も行くつもりだったんだけど、

捨て地問題で抜けられなくなった」

早紀はそういうとため息をついた。

「何があったんです？　」

向井も驚くと早紀を見た。

「今年になってシールド事件が、

世界中のトレンドワードを独占したでしょ」

早紀が説明を始めた。



シールド事件とは今年、

どこからかこの国が狙われ、

ミサイルが落とされたにも拘わらず、

それをシールドがはじき返した事件だ。

その後神秘の国は、

暗闇に包まれた魔境の国と呼ばれ、

捨て地と呼ばれる場所は真実の壁によって、

人の闇を裁くと話題になった。

というのも、

捨て地から消える瞬間の動画が、

ＡＩによって拡散されたからだ。

この国は終わった………

と誰もが思っていた中、

今度は世界中から真実の壁目指して、

旅行者がやってきたのだ。

空港も欠航・遅延と続いているにも拘わらず、

人が流れて、

中央の観光事業と捨て地再興庁は、

笑いが止まらなかったことだろう。

だがここで、次なる問題が起きた。

捨て地観光なのだから当然である。

フェイクだと簡単に考えていた観光客が、

次々と消える事件が多発。

もちろん普通に捨て地観光して、

帰っていく観光客もいたのだから、

物情騒然と化したとしてもおかしくはない。

現政権は直ちに、

捨て地を流刑地扱いとし、

観光客には近寄らない様にとの指示を出した。

ここで捨て地＝犯罪者のレッテルが、

貼られてしまったわけだ。

当然、反発し抗議はしているものの、

中央政権は等閑したままである。



「でね、その霊の配達が凄い数なのよ」

早紀が顔を顰めた。

海外の霊魂は消去されないので、

自然と冥界の配達ボックスへと上がってくる。

「私もカトルセも手分けしてやって、

午後までかかりそうだから」

フェムトンも苦笑した。

「それは大変ですね」

向井はそこまで話して、

先日の出来事を思い出し、

フェムトンを見た。

フェムトンがその表情に頷く。