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第十一部
独裁者の大沢
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「大沢帝国が出来てから、
悪霊の数が加速してる。
国民階級制になり、
中央と地方は住む世界を遮断されているよね。
黒谷君や牧野君はそんな社会の中でも、
運がいい方なんだよ」
「まあ、俺はじいちゃん先生の所にいたから、
住むところはあったもんな」
オクトの話に牧野が俯いた。
「でしょう? でも親のいない子供は、
施設に住まわせてくれるけど、
成人が十五歳になったので、
中学を卒業後は放り出されるから、
みんな中学生で派遣労働をして、
卒業後の金を貯めているんだ」
佐久間も顔が青ざめた。
「私も大学卒業後に両親が亡くなっているので、
裏の社会には疎かったんですね。
噂話には聞いていましたが、
そこまでとは感じていませんでした」
「別におかしなことではないよ。
住む世界が違うんだから、
情報だって分断されてしまうし。
でもね、酷い施設に引き取られると、
小中も殆ど通わせないで、
職員が子供を派遣労働先に紹介して、
マージンを取るんだ。
学校側も分かっているけど、
保身のために見て見ぬふりをする。
派遣先も安い賃金で働かせて、
もし亡くなったとしても、
処分方法はいくらでもある」
「だけどチップは? 俺、冥界に来た時に、
チップを破壊してもらったぞ」
「中央が絡んでるから、
問題のない子供や大人なら人が消えても、
何とでもなるんだよ。
冥界に作られた特別室を見ても分かるでしょ。
なのに表面上は穏やかに見えるから、
不思議な国だよね」
オクトが牧野を見た。
「俺って、幸せもんだったんだな………」
牧野がぽつりと言った。
「そうですね。私も早くに亡くなっても、
幸せに暮らせていたんだと、
今実感しました」
佐久間も呟いた。
「そんな暗い顔しないの」
二人のそんな姿にエナトが笑った。
「世界にはいろんな人がいるんだよ。
自分が幸せだったのが分かればいいんです」
エナトの話に牧野は上を向いて大きく頷くと、
「そうだよな。うん。
俺なんか殺されて、
更にこんな仕事させられてんだからな」
と言った。
「その切替の速さは牧野君の長所ですね」
佐久間が笑う。
「なんか腹減らない? 」
振り返って言う牧野に、
エナト達はプッとふきだすと大笑いした。
同じ頃、向井達は幽霊ビルと騒がれている、
捨て地に来ていた。
近くには団地もあり、
悪霊も増え始めていたので、
関係のない霊が飲み込まれ、
悪霊化するのを防ぐためにも、
早めに保護できるものを冥界に送ることにした。
数は減ったとはいえ、
新たな動画アーティストが現れ、
幽霊に素人除霊を行い、
騒ぎを大きくしていた。
というのも、
霊光アンナが亡くなり、
それに代わる霊媒師が名乗りを上げて、
あちらこちらで動画撮影をしていることにも、
問題があった。
悪霊の数が加速してる。
国民階級制になり、
中央と地方は住む世界を遮断されているよね。
黒谷君や牧野君はそんな社会の中でも、
運がいい方なんだよ」
「まあ、俺はじいちゃん先生の所にいたから、
住むところはあったもんな」
オクトの話に牧野が俯いた。
「でしょう? でも親のいない子供は、
施設に住まわせてくれるけど、
成人が十五歳になったので、
中学を卒業後は放り出されるから、
みんな中学生で派遣労働をして、
卒業後の金を貯めているんだ」
佐久間も顔が青ざめた。
「私も大学卒業後に両親が亡くなっているので、
裏の社会には疎かったんですね。
噂話には聞いていましたが、
そこまでとは感じていませんでした」
「別におかしなことではないよ。
住む世界が違うんだから、
情報だって分断されてしまうし。
でもね、酷い施設に引き取られると、
小中も殆ど通わせないで、
職員が子供を派遣労働先に紹介して、
マージンを取るんだ。
学校側も分かっているけど、
保身のために見て見ぬふりをする。
派遣先も安い賃金で働かせて、
もし亡くなったとしても、
処分方法はいくらでもある」
「だけどチップは? 俺、冥界に来た時に、
チップを破壊してもらったぞ」
「中央が絡んでるから、
問題のない子供や大人なら人が消えても、
何とでもなるんだよ。
冥界に作られた特別室を見ても分かるでしょ。
なのに表面上は穏やかに見えるから、
不思議な国だよね」
オクトが牧野を見た。
「俺って、幸せもんだったんだな………」
牧野がぽつりと言った。
「そうですね。私も早くに亡くなっても、
幸せに暮らせていたんだと、
今実感しました」
佐久間も呟いた。
「そんな暗い顔しないの」
二人のそんな姿にエナトが笑った。
「世界にはいろんな人がいるんだよ。
自分が幸せだったのが分かればいいんです」
エナトの話に牧野は上を向いて大きく頷くと、
「そうだよな。うん。
俺なんか殺されて、
更にこんな仕事させられてんだからな」
と言った。
「その切替の速さは牧野君の長所ですね」
佐久間が笑う。
「なんか腹減らない? 」
振り返って言う牧野に、
エナト達はプッとふきだすと大笑いした。
同じ頃、向井達は幽霊ビルと騒がれている、
捨て地に来ていた。
近くには団地もあり、
悪霊も増え始めていたので、
関係のない霊が飲み込まれ、
悪霊化するのを防ぐためにも、
早めに保護できるものを冥界に送ることにした。
数は減ったとはいえ、
新たな動画アーティストが現れ、
幽霊に素人除霊を行い、
騒ぎを大きくしていた。
というのも、
霊光アンナが亡くなり、
それに代わる霊媒師が名乗りを上げて、
あちらこちらで動画撮影をしていることにも、
問題があった。
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