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第二部

アニメ化騒ぎ

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工房とサロンからは、

快活な声が聞こえてくるが、

休憩室はやけに静かだ。

部屋に入ると、

中央で安達と牧野がまだ大の字で寝ている。

その横で新田と早紀も、

気持ちよさそうに寝息を立てていた。

安達の事もあって、

みんな疲れがたまっていたのだろう。

休憩室でも熟睡している姿に、

アラームが鳴りませんようにと、

向井も空いているソファーに横になった。

そしてどのくらい寝ていたのだろうか。

興奮して飛び込んできたトリアに、

寝ていた全員が飛び起きた。

「なに? 」

「どうした? 」

それぞれが入り口に立つトリアを見た。

「朗報だよ~!! あの『ゾンビ少年と赤い神聖ばあ』が、

来年アニメ劇場版決定~」

「本当? 」

原作ファンである新田、牧野、安達が、

同時に振り返った。

「連載から一年も経ってないのに、

大久保出版始まって以来の快挙だって」

向井も驚いてトリアを見た。

「という事は山川さんはもうしばらく、

アシスタント継続という事ですか」

「そうなるかな……? 」

「別に構わないですけど、

山川さんは再生する気があるんでしょうか」

「………さぁ? 私に言われても。

でもこの話し展開が読めないって、

評判もいいんで、

山川も楽しいみたいよ」

「劇場版出来たら、俺見たい……」

安達が言うと、

「じゃあ、見に行こうぜ」

「だったら俺も行く」

牧野と新田も楽しげに会話に加わった。

そんな三人の姿に、

「いいなぁ~

君たちは見に行くんですね。

私は見れません……」

冥王がいじけるように、

入り口から顔をのぞかせた。

「どうせすぐに放映されますよ」

耳ざといな……

突然現れた冥王に向井があきれ顔で言う。

「時間差で見るのとは違うんです!! 」

冥王はつまらなそうに工房に戻っていった。

「子供じゃないんだから、面倒な上司だなぁ~」

トリアはため息をつくと部屋を出て行った。

「上映は来年でしょ? まだ先の話じゃん」

早紀がソファーから起き上がった。

「安達君たちが見に行くんなら、

ノベルティグッズでも、

お土産に買ってきてあげてください。

それで機嫌も直るでしょうから」

向井の言葉に、

「俺、冥王の顔……間近で初めて見た。ビックリ」

牧野がつぶやくように言った。

「えっ? 驚くとこそこ? 」

向井は噴き出して笑った。


――――――――


肩を落としていじけていた冥王を見たので、

向井は急いで工房へ向かった。

面倒な上司だと言ったトリアの言葉通り、

へそを曲げるとちょっと煩わしい。

工房は作家の数が増えているので、

活気づいていた。

ここはそれぞれのブースに分かれているが、

中央はフリースペースなので、

使いたいものはめいめい道具を用いて、

物作りをしている。

「ほお~ 映画になるのか。

俺は妖だから映画館は出入り自由だ。

冥王には悪いが見に行けるな」

中央の作業スペースで、

虎獅狼が楽しそうに話をしていた。

「みんないいですね~ずるいです」

冥王は拗ねた様子で椅子に座って、

しょんぼりしていた。

「TVアニメなら見れるのに……」

向井が声をかけようとすると、

「つくってくれるって~」

三鬼が冥王のところに駆け寄って、

膝の上に飛び乗った。

こんも走ってくると、

「こんはかみかざりにしてもらうの」

と笑顔で話しかけていた。

「それはいいですね。

もっと美人さんになっちゃいますよ」

「えへへ」

向井が心配するまでもなく、

ちびっ子が冥王の機嫌を戻してくれていた。
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