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第二部
光の渦
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安達の事件から、
しばらくは穏やかな時が続いていた。
リハビリを兼ねて、
安達は冥王と工房で、
ミニチュア作りを楽しんでいるようだった。
このままリングの状態が体に馴染めば、
仕事に復帰する。
それまでは向井はエナトと組んで下界にいた。
「安達君がいないと、霊の見分けがつかないな。
保護と派遣霊を一緒に、
サロンへ送っちゃってるんですけど、
大丈夫ですよね」
「正直、俺も区別がつかないんですよ。
光の渦は一日数回。
そこから外れた霊が保護か派遣なんですけどね。
とりあえずサロンにいれば、
そこで話が聞けるので、
エナトさんにお願いできて俺としては助かります」
「なら、よかった。
そうと決まればどんどん送っちゃいましょう」
エナトは笑うと指を回した。
その先端の渦が波紋となって広がり、
霊を包んでいく。
「消去から再生に向かった霊が、
このところ多かったので、
サロンも少しゆとりができてよかったですね」
「そうですね」
向井も笑った。
二人がパトロールしていると、
前方に佐久間と牧野の姿があった。
いつもの如く牧野がぎゃあぎゃあ何やら騒がしい。
「牧野君はいつもパワフルですね」
エナトは笑いながら、指は霊を冥界へと送っていく。
「どうかしたんですか? 」
向井達は二人に近づくと声をかけた。
「霊電を増やす工事がされたので、
牧野君のご機嫌が斜めなんです」
佐久間が苦笑した。
「うるせえ! 妖鬼の奴がステージ作るから、
照明分霊電を増やせって言いやがった」
ああ、あの発表会の一件か。
既にステージを作っているとは……
みんな行動が早いな。
向井は下を向いてクククッと笑った。
「何だよ。全然おかしくねえぞ」
牧野が面白くなさそうに唇を突き出した。
「ごめんごめん。そうじゃなくてね。
今、セイくんがヒップホップのレッスンしてるでしょ。
あれを見て冥王が、
冥界の発表会をしようと言い出したんですよ。
で、俺もいいアイデアなんじゃないかと、
後押ししちゃったんで、
牧野君には悪かったなと」
「えっ? 発表会? 」
エナトの顔が嬉しそうに輝いた。
「エナトさんも何か演目があるなら、
自由参加でエントリーできますよ」
「へえ~発表会か~私も参加しようかな」
佐久間の一言にその場にいた三人は驚いた。
「なに? そんなに驚くこと?
私はこう見えても紙切りが得意なんですよ。
学生時代にアルバイトで披露してました」
「地味な趣味だな」
牧野の言葉に、
「紙切りは伝統ある芸ですよ。
リクエストにもある程度お答えできますから、
発表会にはいいでしょ? 」
佐久間はすまし顔で言った。
「だったら、俺も出るぞ!! 」
「牧野君も何か芸があるんですか? 」
「……これから考える」
そんな話をしていると、
どこからか街頭演説が流れてきた。
「そろそろ選挙か……
特別室が騒がしくなるのは嫌なんですけどね」
向井がしみじみと言ったところで、
悪霊が騒ぎ始めた。
「やべぇ。こういうのに霊は反応するんだよな~」
四人はため息をつきながら、
悪霊退治に向かった。
しばらくは穏やかな時が続いていた。
リハビリを兼ねて、
安達は冥王と工房で、
ミニチュア作りを楽しんでいるようだった。
このままリングの状態が体に馴染めば、
仕事に復帰する。
それまでは向井はエナトと組んで下界にいた。
「安達君がいないと、霊の見分けがつかないな。
保護と派遣霊を一緒に、
サロンへ送っちゃってるんですけど、
大丈夫ですよね」
「正直、俺も区別がつかないんですよ。
光の渦は一日数回。
そこから外れた霊が保護か派遣なんですけどね。
とりあえずサロンにいれば、
そこで話が聞けるので、
エナトさんにお願いできて俺としては助かります」
「なら、よかった。
そうと決まればどんどん送っちゃいましょう」
エナトは笑うと指を回した。
その先端の渦が波紋となって広がり、
霊を包んでいく。
「消去から再生に向かった霊が、
このところ多かったので、
サロンも少しゆとりができてよかったですね」
「そうですね」
向井も笑った。
二人がパトロールしていると、
前方に佐久間と牧野の姿があった。
いつもの如く牧野がぎゃあぎゃあ何やら騒がしい。
「牧野君はいつもパワフルですね」
エナトは笑いながら、指は霊を冥界へと送っていく。
「どうかしたんですか? 」
向井達は二人に近づくと声をかけた。
「霊電を増やす工事がされたので、
牧野君のご機嫌が斜めなんです」
佐久間が苦笑した。
「うるせえ! 妖鬼の奴がステージ作るから、
照明分霊電を増やせって言いやがった」
ああ、あの発表会の一件か。
既にステージを作っているとは……
みんな行動が早いな。
向井は下を向いてクククッと笑った。
「何だよ。全然おかしくねえぞ」
牧野が面白くなさそうに唇を突き出した。
「ごめんごめん。そうじゃなくてね。
今、セイくんがヒップホップのレッスンしてるでしょ。
あれを見て冥王が、
冥界の発表会をしようと言い出したんですよ。
で、俺もいいアイデアなんじゃないかと、
後押ししちゃったんで、
牧野君には悪かったなと」
「えっ? 発表会? 」
エナトの顔が嬉しそうに輝いた。
「エナトさんも何か演目があるなら、
自由参加でエントリーできますよ」
「へえ~発表会か~私も参加しようかな」
佐久間の一言にその場にいた三人は驚いた。
「なに? そんなに驚くこと?
私はこう見えても紙切りが得意なんですよ。
学生時代にアルバイトで披露してました」
「地味な趣味だな」
牧野の言葉に、
「紙切りは伝統ある芸ですよ。
リクエストにもある程度お答えできますから、
発表会にはいいでしょ? 」
佐久間はすまし顔で言った。
「だったら、俺も出るぞ!! 」
「牧野君も何か芸があるんですか? 」
「……これから考える」
そんな話をしていると、
どこからか街頭演説が流れてきた。
「そろそろ選挙か……
特別室が騒がしくなるのは嫌なんですけどね」
向井がしみじみと言ったところで、
悪霊が騒ぎ始めた。
「やべぇ。こういうのに霊は反応するんだよな~」
四人はため息をつきながら、
悪霊退治に向かった。
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