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番外編 冥界の逆襲

悪魔な向井?

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「向井君は九尾を従えているでしょう。

それで急場しのぎだと思うけど、

この糸を燃やせないかと思ってね」

冥王が向井を見た。

「燃やせますけど、この状況だと本来ある結界も、

燃えてしまう可能性がありますよ」

「そうなんですけど、黒地には神祠本庁がありますから、

何かあれば彼らが動くでしょう」

難しい顔をする冥王を見て、

「そういう事なら、町中燃やしてきます」

と向井が言った。

「それ………ちょっと怖い」

オクトが向井を見る姿に、

「もう悪魔化してるから」

トリアが言い、皆が笑う。

「まぁ、冗談はそれくらいにして、

財前の話を聞いたけど、

神祠本庁も国の命令とはいえ、

神殺しに苦杯を喫してはいるみたいだね」

「そりゃそうだろう。一応神職者なんだからさ」

ディッセの顔をアートンが見た。

冥王は向井達の様子を見て、

静かにしゃべりだした。

「この国は代々、神祠本庁や結界庁のような、

特別な職に就く者の魂は、

生まれ変わっても同じ星の元に誕生するんですよ。

彼らには深いところで前世が刻まれています。

ある意味、魂の刻印ですね」

「ということは人生の選択肢は、

生まれ変わってもないのか………」

ディッセは考え込むように俯いた。

「いいじゃない。

毎回同じ職種なんだから、

案外魂は楽かもしれないわよ。

本人に記憶もないんだし」

トリアは肩をすくめた。

向井はそんなトリアに笑うと、

「では、さっさと燃やして、

神祠本庁の仕事を増やしますか」

と皆の顔を見回した。


冥王室を出て、

向井とアートン、ディッセが下界に下りた。

中央で一番結界の糸が絡んだ祠に行くと、

「こうなると誰がいつ、どうやって張ったのか、

糸を手繰るだけでも面倒だな」

ディッセが深いため息をついた。

「だから燃やすんだろ」

アートンも上を見ながら結界の状態を見た。

青、赤、黄色、茶色、緑、白、黒、紫と、

結界の色がそれぞれ違う。

「青と赤は槇村と山口、黄色と黒は倉川と田口、

茶色と緑は山崎と神祠本庁の単独ですね………」

向井はじっと結界を見つめると呟いた。

その言葉にディッセとアートンの眉が上がる。

「向井さんにはこの結界全てが見えてるの? 」

アートンが驚きの声をあげた。

「はっきりとという訳ではないんですけど、

龍が暴れているので、

………」

向井は胸に手を当てると微笑んだ。

「白は神の結界で、紫は俺が抑え込むために張ったものです」

そういって二人を見る。

「こうなるとどれを燃やすとも言えないので、

狐にお任せしましょう。

うまくいけば西と北につながる糸も、

切れるかもしれません。

切れた後は様子次第ですね」

「ん………そうだよね。これじゃどうにもならないしな」

ディッセも空を見上げると、

「じゃあ、ジャンジャン燃やしちゃって」

と言って笑った。

アートンは呆れた顔をすると、

向井は中央に立ち真言を唱え始めた。

体全身から火炎が現れ、中から九尾の狐が浮かび上がる。

狐は頭上に浮かぶと、

向井の指示で尻尾で糸に点火した。

四方八方に炎が広がり、

空一面がまるで回禄の災いかの如く燃え始めた。

恐ろしい光景に、黒地の住民達の悲鳴もあがる。

だが一部の黒地民は、

暗闇に現れた炎をじっと見つめていた。

「空が明るい」

「久しぶりに暗闇から解放された感じだ」

不思議そうに空を見上げて呟いた。
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