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番外編 新たな動き

神祠本庁を出て

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槇村は神祠本庁を出た後、

そこから程近いバリア付近の祠に立ち寄った。

横を見ると青空と光りが差す景色に、

思わず唇を噛む。

いつからこんな風になったんだ?

大沢オヤジが死んでからか?

オヤジの秘密が気になるが………

財前の話を聞いてしまうと、

私にはその覚悟がない。

死んでしまったら、

それこそ権力も金も関係なくなってしまうからな。

私はこのバリアに触れることはできるのか?

真実の壁は選ばれた魂のみ。

噂でしか聞いたことはないが、

実際消えた議員もいると国会でも騒動になった。

財前の話を聞いた今、

疑う余地はなくなった。


槇村はすぐ横を歩く捨て地民を見ながら、

彼らは神に選ばれし人間という事か?

と顔を顰めた。

あんな奴らより私の方が身分も優れている。

なのに何故だ? 

私もこのバリアを越えられるのか? 

議員の中には捨て地で、

国民の味方だと偽っているものもいるではないか。

彼奴らが黒地に楯突くのだって、

権力と金だろう?

なのに国民を騙している奴らが、

神に選ばれている?

どう考えてもおかしい。

きっと何か理由があるはずだ。

宮部を呼び出すか?

槇村は捨て地を睨みながら考え込んでいた。


神祠本庁を出た後、

槇村を追って来たディッセは、

彼の様子をじっと眺めていた。

彼らの話を聞く限り、

長老の覚悟はできているのだろう。

トップの為に生きる庁。

国の命令に背くこともせず、

意見を述べるのみ。

それが神祠本庁の仕事なのだ。

それでも現在のトップは選ばれてなったわけではない。

特別室消滅に伴い、

権力を手にした男。

これがこの先どう動くのか。

政権が変わらないのは老害ではなく、

最も変化を嫌う国民性自分達にあることに気づかない。

組織に与すれば身動きは取れない代わりに、

ある程度の安定は手にできる。

企業や著名人の多くは、

それを手放すことは無理だろうからな。

冥界としては口を出すことはできないが、

国を潰さないために何か手を打たないと………

ディッセがそんな事を考えていると、

槇村が足元にある石を手にし、

いきなりバリアめがけて投げつけた。

「先生! 」

秘書が慌てて声をかけるが間に合わない。

あっ! まずい!

槇村は目の前を歩く老人と犬の姿に慌てた。

老人が飛んでくる石にビクッとしたが、

石はバリアに吸い込まれて消えた。

「!! 」

今のは………

驚く槇村を見つめる老人は、

議員の信じられない行動に目を見開いたものの、

淋しそうに頭を下げ、

何事もなかったかのように犬と一緒に歩き出した。

槇村は眼前での出来事に頭を掻くと、

不機嫌に秘書の待つ車に歩いて行った。

ディッセも小さく息をつくと、

これはもう、修復は無理かもな。

と姿を消して冥界に戻った。
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