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番外編 騒ぐ下界

冥王の怒り

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向井達が中央に戻る頃には、

既に十時を回っていた。

式神課を通ると、アートンがやってきた。

「お帰り。ずいぶんと遅くなったね。

結界庁と神祠本庁が絡んでた? 」

「そう。そして、さらにヤバイ話も。

まぁそれは、軽く夕飯食べてからでいいや」

ディッセが言うと、

「なに? 夕食まだなの? 」

トリアもクロウとハクを抱いてやってきた。

「あれ? まだ起きてたの? 」

エナトが聞くと、

「チビがうるさいうるさい。

さっき迄お姉ちゃんたちも大騒ぎだったのよ。

ほら、パパ帰ってきたよ」

そういって向井に二人を渡した。

「はぁ~重い。肩も腰も痛い~」

トリアが首と肩を動かしながらぼやいた。

二人が向井に抱きついて落ち着いていると、

「やっと、呉葉達は寝てくれた~」

「よかったね~パパ帰ってきたじゃん」

早紀と新田がやってきて笑った。

「なんかいい匂いがする。えっ? 夕食まだなの? 」

新田がお弁当の袋を見て驚いた。

「いや、早めにうどんは食べてきたんだけど、

麺類だけなんで軽く食べようって、

焼き豚ライスバーガーを買ってきたんだよ。

皆も食べない? 」

エナトがいい、

「食べたい~」

トリアと早紀も笑顔になると、

「ワイン開けちゃおうか」

と皆で休憩室に向かった。


休憩室には冥王、田所、弥生、妖鬼達もいた。

「お帰り~」

田所が言うと、

「ライスバーガー買ってきたんだって。

食べない? 」

とトリアが袋を持ち上げた。

「こっちの袋にはデザートも入ってるので」

佐久間が袋をテーブルに置いた。

「じゃあ、俺は二人を寝かしてきますね」

そういいながら子供部屋に向かった。

「おトイレは? 」

「いった」

「あのね。くるまのえほん~」

「じゃあ、それを読んであげるから寝ちゃいましょう」

向井がチビと話しながら歩いて行く姿を、

「向井さん倒れなきゃいいけどね」

「ホント。死んでるとはいえ、過重労働だからね」

アートンとディッセが気の毒そうに見ていた。


食後、

向井達は冥王室にいた。

冥王はディッセの話を聞きながら、

静かな怒りに満ちた表情で考え込んでいた。

「とりあえず長老は二人とも、

田口の意見に反対の意思を示して帰っていったけど、

政府としては納得してないからね。

何か起こるんじゃないかな」

ディッセが話しながら冥王を見た。

「あの、土地に縛られている神様は、

今はどうなっていますか? 」

「赤姫も今は自由だし、

調査して全ての神は自由に動けてるはずだけど、

問題は破壊されたジオード」

アートンがため息をついた。

「あれは別に何の問題はないんだけど、

冥界との通信を担ってきたから、

まぁ、多少の濁りがあるんだよね」

そういうと、デスクの上に布を広げ、

そこにジオードと水晶の割られた欠片を置いた。

下界の通信はこの小さなジオードと、

丸玉のこれまた小さな水晶が使われていた。

「見事に砕かれてるね。中の負は飛び出して、

黒地に散っていったわけか」

ディッセが欠片を手に取って話した。

「一応全部集めたんだけど、一つだけ消えた欠片があるんだ」

アートンの言葉に向井達が彼の顔を見た。

「それはまずいのではないですか? 」

向井が聞くと、

「欠片ですから大丈夫ですよ」

冥王は小さく微笑んだ。

「ただ、負を持つ欠片ですから、

人の負に反応します。

黒地にあるので負を吸い込み続ければ、

その欠片が大きな悪霊になるかもしれませんね」

「実はその欠片というか、ジオードを探して、

田口が動き出してるんだよ」

アートンの話に冥王も眉間にシワを寄せた。
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