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番外編 騒ぐ下界

皆でお昼

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「私は丼がいいですね」

「そうじゃな。私も丼がいい」

毘沙門天と赤姫の言葉に、

「角煮まんじゃ物足りないもんな」

ヴァンもいい、

向井が店員に注文した。

「四つだけ、ブースの方に持ち帰りたいので、

袋に入れてもらえますか? 」

「いいですよ」

二十代位の男性が手際よく作って、

トレイに乗せてくれた。

牧野とヴァン、坂下、黒谷が来て、

テーブルに運んでいく。

「これだけ大きなイベントは初めてで、

売れるか心配だったんですけど、

お客さんのお陰で人が来てくれました」

男性は順番を待つ客の姿に笑顔になった。

「お役に立ててよかったです」

向井は微笑むと会計を済ませて、

テーブルに歩いて行った。

チビ達が笑いながら食べる様子に、

飲食ブースに人が集まり始めた。

「今回は初めてのお店も多そうですね」

向井は席に着くと黒谷を見た。

「そうだね。

この会場でマルシェは初めてなんでさ。

主催者側から俺の所に相談が来て、

それでディッセさん達と話して、

参加することにしたの。

向こうのブースに宗方さん、ほらお煎餅屋さんも、

参加してるし」

「あぁ、そうでしたね」

向井も食べながら頷いた。

「私は息子達のお陰で楽しい日が過ごせて、

幸せですね~」

「ほんに」

毘沙門天と赤姫がにこやかに食事をする。

「そうだ。

今日は午前中でお弁当完売しちゃったんだけど、

冥界にも注文分届けてあるから、

夕食はチキン弁当だよ。

二人も食べてってよ。

今回のも自信作なんだよね~」

黒谷が話す横で、

「チキン? 」

チビ達が嬉しそうに声をあげた。

「ははは、本当にチキン好きだよね」

黒谷が笑った。

「あ~あ、お顔が凄いことになってる」

弥生が苦笑いしながら、

チビ達にウェットティッシュを渡した。

ハクとクロウは、

向井とティンの膝の上なので、

そのまま顔と手を拭かれながら夢中になって食べていた。

「ここはほんに平和だの~」

赤姫が周りを眺めながら微笑んだ。

「そうですね」

毘沙門天も穏やかな表情で人々を見つめた。

そんな様子を黒谷もじっと見る。


この周りだけ黄金に輝いている。

凄い………

この光に触れると、誰もが笑顔になる。

これが神様の力なんだ。


向井もそんな黒谷の嬉しそうな様子を、

笑顔で見ていた。


自分の人生は反省の中にある。

保身のために何も考えずに生きていたのかもしれない。

多くの法案、治験の中で、

老人と貧民街は間引きされてきた。

国にとっては厄介者が減り、

捨て地さえ生まれなければ、

為政者天国だったのかもしれない。

今この捨て地は、

国と戦う力を蓄える時期にきているのだろう。

権力者に飲まれることなく戦う力を………


向井の真剣な横顔を毘沙門天と赤姫もまた、

好ましく見つめながら微笑んだ。
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