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番外編 騒ぐ下界

国が消滅?

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シェデムも唇を噛むと口を開いた。

「この国は戦争を回避しながら、

百年以上奇跡的に過ごしてきてる。

二十一世紀に入ってからは、

暗黒時代も長いから、

ここにきて問題が大きくなってるのよ」

その話にトリアも笑う。

「まぁね。

世襲議員で出来てる国だからね。

利益誘導もあってすべてが悪化してるの。

海外との癒着も、

議員財閥のファミリービジネスが絡んでるし」

向井は自分が生活をしてきた国の事を、

ただ黙って聞いていた。

冥王もそんな向井をじっと見つめていた。

「それと中央では移民の占拠が増えてて、

貧民街ですら追い出されてるだろ。

田口達にとっては自分と関係ない地域だから、

選挙が終わればどうでもいいんだよね。

現在この国は政党は三党が利権争いをしてるんだ。

票田集めの為に外国人優遇措置もあって、

一部の外国人は全て無料で生活ができる反面、

自国民には死んでも補助が下りない」

ディッセもお手上げという感じに両手をあげた。


国の政策で自国民が外国人に、

追い出されることにもなっていた。

現在自国民の命は外国人より軽い。

殺害されても階級区・上区以外は、

騒がれることもなくニュースにも取り上げられない。

メディアは毎日のように、

「出て行く必要はないのに、

自ら町を離れ捨て地を選択したわけですから、

外国人を責めるのはどうかと思いますね」

「捨て地の人間は自分本位が多すぎます」

「どんな状況下においても、

ヘイトは許されるべきではありません」

とコメンテーター達が、

安全な場所から持論を述べていた。


暴行されても国や警察が動くことはなく、

何か事件があっても捕まるのは自国民だけ。

命が大事なら出て行くしかない。

結果、外国人居住地区が増え続け、

貧民街ですら現在は移民で溢れていた。


「まぁ、それを許してきたのも、

政権を支持した国民なんだから、

冥界うちが干渉することに、

海外ほかの冥界からも反対の声はあるんだ。

閻魔様の仕事じゃないからね。

ただ、放っておくわけにもいかないだろう? 」

アートンも困った顔で話した。

それまで黙っていた向井は、考えながら口を開いた。

「そうですよね。

俺が生きてた時よりも酷くなってます。

議員の半数が外国人なので、

その国同士での票割れのおかげで、

なんとか国が保ててる感じでしょうか。

捨て地は生き方の自由があり、

人種に関係なく助け合って生活ができています。

黒地にはそれもないので、

死を選択させる事態になっていると思うんです」

「黒谷君に聞いたんだけど、

最近は黒地から逃げてきた人たちに向けて、

各捨て地の役所に窓口が設けられたらしいよ。

避難してきた人たちの援助に住む場所、

仕事などの相談ができるから、

死ぬ前に捨て地に来て欲しいんだよね」

アートンも腕組みしながら言った。

「ただそういう人たちに、

捨て地の情報が届かないのも問題だよ」

ディッセが考え込んだ。

それまで黙って聞いていた冥王が、

「ここで話していても埒が明かないですから、

まずは天上界に行って、

この国の現状を伝えましょう。

下手をしたら数の多い民族に、

国が占領されてしまいます。

最古の国と言われるこの国が、

消滅してしまうのは私としても困ります」

とデスクに肘をつくと両手を組んだ。

「ホントだよ。あの飲み屋街も、

結局外国人街になって追い出されてるんだからさ」

ディッセもうなずくとムッとした表情をした。

「事態が事態なんで、

天上界も許諾するしかないと思います。

各国の冥界でこの国が問題に上がっているのはね。

自分達の担当する国が、

このような状態になったら困るからなんですよ。

とりあえず話だけ通しておかないと、

次回の冥界会議で非難を浴びてしまいますからね」

冥王はそう言って苦笑いした。
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