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番外編 ハイパー弥生

弥生の仕事

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弥生の仕事は魂の消去だ。

毎日毎日、再生に進む準備ができた魂を、

この壺のような小さな入れ物に入れ、

光りのレーンの中へと流していく。

楽しかった思いも、

辛かった思いも、

ここから先は全て消えてなくなる。

新しい人生に向けた魂の始まりだ。

私もこうやって生まれてきたんだな………

弥生は複雑な思いで、仕事をこなしていた。


「弥生ちゃん、今日はここまでだって」

田所が隣のブースから顔をのぞかせた。

「はぁ~助かった~

今日は多くて休憩とれなかったから」

弥生も椅子から立ち上がると大きく伸びをした。

「お昼過ぎちゃいましたね」

弥生は田所と一緒に、食堂へと歩き出した。


食堂に行くと、真紀子と新田、ティンがいた。

「三人も今お昼? 」

田所がテーブルに近づいていった。

弥生はカウンターに行くと、

「今日のメニュー何ですか? 」

と聞いた。

「豚骨ラーメンと生姜焼き定食の二つ。

どうする? 」

「田所さん~豚骨ラーメンと生姜焼きだって。

どっちにしますか? 」

弥生が振り返った。

「ラーメン? 珍しいね。じゃあ、俺ラーメン」

「ラーメンと私は生姜焼きにする」

「はい」

セーズに注文して、

弥生もみんなのいるテーブルに移動した。

「今日は死神課のお仕事ですか? 」

弥生が椅子に座って真紀子たちを見た。

「そう。焼却も最近は少なくなって、

源じいだけでも間に合うから、

幽霊退治してるの」

真紀子は笑うとお味噌汁をすすった。

「そういえば、弥生ちゃんのスコア見たよ」

新田がラーメン食べながら言った。

「凄いよね。向井さん、坂下さん抜いて、

今ランキング一位じゃん」

ティンも笑った。

「この所、アクセサリー作りする時間もなくて、

ちょっとストレス発散で霊銃訓練してたら、

上達した」

「弥生ちゃんはシューティングゲームも得意だから、

コツをつかまれたら、あっという間に抜かされた」

新田はスープを飲むと、

ご馳走様と手を合わせながら話した。

「それでか、この前向井君と坂下君と一緒に、

悪霊退治に行ったよね」

田所が弥生を見た。

「そうなの? あの二人のヘルプなら、

相当な腕前じゃない」

真紀子が驚いていると、

セーズが食事を運んできた。

「有難う」

弥生と田所が礼を言う。

「食後のデザート食べる方いますか? 

優香ちゃんが天上界のフルーツで作った、

シャーベットなんですけど」

「食べる~」

全員が手をあげた。

「分かりました」

セーズは笑うと、

「ついでに食器片づけちゃいますね」

「悪いわね」

「有難う」

真紀子たちが礼を言いながら食器を渡した。

セーズがキッチンに戻ると、

「向井君がさ。弥生ちゃんの腕前褒めてたよ」

田所がラーメンを食べながら言った。

「ええ~本当ですか? だったら嬉しいですけど」

弥生も肉を頬張り笑った。

「いや、本当だって。悪霊の動きに対しては、

牧野君より感がいいって、坂下君と驚いてたからね」

「それはいいこと聞いたな」

ティンが片肘つくと、顎の下に手を置いた。

「そうね。どう? 今度一緒に式神課の仕事に来ない? 」

「いいの? だったら行きたい~」

真紀子の誘いに弥生が嬉しそうに笑った。

弥生の除去仕事は、

このことをきっかけに始まった。
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