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番外編 冥界

冥王の好きな冷やし中華

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冥界に戻ると、

サロンや工房からも賑やかな声が聞こえていた。

「何かやってるの? 」

牧野がカウンターで、

霊銃を受け取っているセイを見ると聞いた。

「かき氷ですよ。

お盆なんで食べたい方に配ったんです。

皆、大喜びで夏を楽しんでますよ」

「へえ~いいじゃん。

この後もスイーツが出るんだろう? 

下界にいるより幸せだな。

まぁ死人だけど」

牧野は笑うと休憩室に歩いて行った。

「向井さん達が持ってる袋は何? 」

セイが聞く。

「今日は製麺所で夏季限定の、

冷やし中華セットが販売開始したでしょ。

それでその予約を取りに行ったんです」

「えっ? 藤堂製麺所? 」

セイの背後からカトルセも顔をのぞかせ、

笑顔になった。

「持って帰るの重くて大変だったんだからね」

トリアが言った。

「だけど、藤堂が一番おいしいよね。

冥王もこの時期はいつも言ってるもん」

セイも笑うと、

皆で休憩室に向かった。

休憩室ではキッズルームの前にリングを置いて、

チビと牧野と安達、妖鬼達も、

夢中になって遊んでいる姿があった。

「下界はどうでした? 」

冥王が振り返って聞いた。

いつものように早紀、千鬼、夢鬼らと、

ドラマを見ていたようだ。

「魔境は今日も絶好調に悪霊で膨れてたわよ」

トリアはため息つくと袋をキッチンに置いた。

向井達もキッチンに行くと、

残りの袋をカウンターに置く。

皆が手を洗うのを待ってから、

「でも、少しは綺麗になったから、

魔境も過ごしやすいんじゃないの? 」

オクトも笑うとシングルレバーをあげた。

向井も隣で手を洗いながら、

「珈琲淹れましょうか」

と皆を見る。

「面倒だからスティックでいいかな」

佐久間が棚からスティックを出し、

トリアと弥生がカップを並べた。

「坂下君達はまだ戻ってないようですね」

向井が室内を見てると、

「式神課は忙しくてさ。

今日はエルフもトレーズも駆り出されて行ったよ」

カトルセが珈琲の入ったカップを、

トレイに乗せながら説明した。

「まぁ、一番の稼ぎが幽霊退治だからね」

トリアも笑うと、カップをトレイに並べる。

チビ達のカップにはココアを入れ、

マシュマロを乗せた。

最近はお星様やお魚の形になった、

マシュマロに夢中で買って来ていた。

「たかがマシュマロと思うけど、

可愛いよな」

田所も浮かぶモチーフに笑顔になった。

皆でテーブルに運ぶと、

向井がキッズルームに歩いて行った。

「ココア入れたから手を洗ってきてください」

「ココア? 」

「はい。大人は珈琲ね」

牧野、安達に連れられ、

手を洗いに行く姿を見ながら、

床に並べられたリングを見た。

「これって、けんけんぱですか? 」

リングを片付ける妖鬼を見ながら言った。

「そう。この前真紀子さんとアンが、

アーケードで見つけて買ってきたんだよ」

「あぁ~これなら狭間さんにも怒られませんね」

「だろう? 」

鬼道も笑った。
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