上 下
79 / 226
番外編 西支部

見守る時間 

しおりを挟む
そんな向井の姿を見て、

「向井君は絵は下手ですけど、

シーリングスタンプはセンスがいいですね」

冥王が言った。

「冥王に言われたくないですね」

向井がチラッと見ながら睨んだ。

「青田さんと森村さんは控えめな感じで、

色彩も柔らかくて可愛らしいですね」

向井が褒めると二人は嬉しそうに笑った。

「私達はギャラリーに飾ってもらおうと思って、

絵画みたいに作ったら、

中にいれた写真が少し目立たなくなっちゃいました」

「でも綺麗~」

シェデムも青田に貰ったプラパンのお花を並べて、

見比べて言った。

「これってセンスよね」

「シェデムのもきらきらして可愛いよ」

「そう? 」

安達と話しながらシェデムはパーツを選んだ。

早紀とゼスは今日買ってきた、

デコパーツ福袋を広げて楽しそうだ。

「こんなに入ってるんだ。

クッキー、お花、風船? ストーンもある」

ゼスが手に取って笑顔で並べていた。

「デコって面白いでしょう? 」

「なんだか、幼稚園のカリキュラムみたいです。

チビ達が夢中になるのが分かりますね。

大人も夢中だ」

村本に声をかけられ、

向井はみんなの姿を見ながら笑顔になった。



向井達が休憩室に戻ると、

図書室のハンモックでお昼寝していた虎獅狼達も、

楽しそうにケーキの箱を見ていた。

チビ達も目が覚めたようで、

騒いでいる。

「あっ、戻ってきた~

ケーキカットしたから、

食べ比べしたい人は早めにね」

トリアが言い、

弥生とアン、真紀子は紅茶を用意していた。

虎獅狼達がいるのでミルクティーにしたようだ。

チビ達もマシュマロを乗せてもらい、

嬉しそうに飲んでいる。

「俺は四種食べ比べするぞ! 」

牧野がソファーに飛び乗った。

「ぼんは元気だね~」

源じいが笑った。

「私もこれは食べ損ねているので、

食べ比べしますよ」

冥王も足早にやってくるとソファーに座った。

「まだある~? 」

おやつの時間なので、

大工衆や研究室からも鬼が流れてきた。

「今ならまだ選べるよ」

新田が言うのを聞いて、

慌てて部屋に入ってきた。

向井が空いている席に着くと、

「下界もこの景色を常に手本とすれば、

負に覆われることも少ないんでしょうね」

横に座る源じいがホッホッと笑った。

人が生きていれば避けられない死。

善人も悪人もこれだけは等しく訪れる。

ここにいるものだって不死身ではない。

それでも自分達の存在意義の中で、

見返りなどないのに、

この国を見守り、

悪霊と戦い、人間を守る為に努力している。

だからこそ、こんなささやかな時間を、

向井は守りたいと思っていた。

自分も生きている時、

こうやって守られていたんだと思うと、

人は常に感謝する気持ちを忘れてはいけないのだと、

死んで痛感した。

人を殺すのも人なら、国を殺すのもまた人。

これからもゴースト人間として、

悪霊退治をしようではないか。

この行く末を見守る時間は、

俺にはまだあるのだから。

向井は室内を見回し笑顔になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

独り日和 ―春夏秋冬―

八雲翔
ライト文芸
主人公は櫻野冬という老女。 彼を取り巻く人と犬と猫の日常を書いたストーリーです。 仕事を探す四十代女性。 子供を一人で育てている未亡人。 元ヤクザ。 冬とひょんなことでの出会いから、 繋がる物語です。 春夏秋冬。 数ヶ月の出会いが一生の家族になる。 そんな冬と彼女を取り巻く人たちを見守ってください。 *この物語はフィクションです。 実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。 八雲翔

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

短編集

八雲翔
ライト文芸
ショート、 ショートショートの物語になります。 作品は少ないですが、 増やしていけたらと思っています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタの村に招かれて勇気をもらうお話

Akitoです。
ライト文芸
「どうすれば友達ができるでしょうか……?」  12月23日の放課後、日直として学級日誌を書いていた山梨あかりはサンタへの切なる願いを無意識に日誌へ書きとめてしまう。  直後、チャイムの音が鳴り、我に返ったあかりは急いで日誌を書き直し日直の役目を終える。  日誌を提出して自宅へと帰ったあかりは、ベッドの上にプレゼントの箱が置かれていることに気がついて……。 ◇◇◇  友達のいない寂しい学生生活を送る女子高生の山梨あかりが、クリスマスの日にサンタクロースの村に招待され、勇気を受け取る物語です。  クリスマスの暇つぶしにでもどうぞ。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...