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番外編 西支部

魂の選別

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【やはり、

神に選ばれたものしか入れないという噂は本当だったんだ】


先日の西での事件でも、

その土地の老人達が神が怒っていると話していた。

大沢先生が神と言われ続けてきたこの二十年あまり。

神を殺し続け、自分を神としたと言っていた。


【これは神殺しの復讐? 】 

【だったら自分達のせいじゃないじゃん】

【支援が足りないから犯罪に手を出すんじゃないか】

【全部大沢のせいだ。国のせいだ】

【それなのに、俺達が何故こんな目に合うのか? 】

【大臣は何をしてんだよ】

【捨て地だけ守られるなんておかしいじゃないか】

【私達が何をしたって言うのよ】

【みんなやってることじゃない】

【邪魔な奴を蹴散らして何が悪いんだよ】

【許せない! ずるい! 】


その場にいたものの心の内が、

向井達の脳裏に入り込んできた。

不満がぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、

気分が悪くなる。

向井達は軽く頭を振って、

人間の負を振り払うと、

悪霊除去を始めた。


「俺はここで捨て地のスパイを弾き出します。

それと冥王にも許可をもらっているので、

少し捨て地だけ記憶操作させてもらいますね」

向井がそういって霊玉を取り出すと、

「なんで捨て地だけ? 」

牧野が聞いた。

「黒地は今の状態を見ても分かったでしょう。

何が行われても消えない強さがあります。

でもね。捨て地の人間は、

これ以上黒地に苦しめられたら、

亡くなってしまうでしょう。

それこそ国の思うつぼ。

捨て地も乗っ取られて、制圧されて終わっちゃいます」

「そうだよね。

そうなったら俺達の働きも無意味になっちゃう」

向井の話にティンが頷いた。

「ふん。だったら黒地あいつらを助けるために、

悪霊退治なんかしなくていいじゃん」

「悪霊増え続けたら捨て地に来ちゃうよ。

そうなったら牧野君の大好きな鰻屋さんだって、

黒谷君のお店だってなくなるかもしれない」

「!! 」

ティンの話に牧野の顔がハッとなった。

「俺のオアシスが」

「でしょう? 黒地の悪霊やっつけて、

霊電沢山集めて、美味しいもの食べようよ」

「よし! 除去しまくってやる」

牧野が歩き出す背中に、

「今結界張るから」

「結界? そんなものこの俺様には………」

そこまで言って眼前で膨れ上がる悪霊に、

「やっぱ、結界張って」

とティンを見た。

「だから言ってるだろう」

ティンはあきれ顔で笑うと、

牧野と黒地に歩き出した。

「牧野君て、ほんと飽きないよね」

新田は向井に言い、

笑いながら二人の後を追った。


向井もそんな三人を見てから、

自分も捨て地の時間を止めた。

手にした霊玉から弓矢を取り出すと、

身守りを握りしめた。

その袋から光の矢が飛び出し、

負が増える空間を照らし出した。

向井がそこに向かって矢を放つ。

空間に刺さった矢は空を包むように広がり、

黄色の捨て地を覆っていった。

次の瞬間、数人のスパイが黒地に弾き出された。

黒地のどこに飛ばされたのか、

向井には分からないが、

これも己の罪だ。

向井はカバンから取り出した小瓶の水を撒くと、

シャボンの泡のような雫が浮かび、パチンパチンと消えていった。

それを確かめた後に時間を動かした。
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