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番外編 西支部

スパイゾンビに

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向井達が出て行く姿に、

「下界は荒れてますか? 」

冥王が近づくシェデムに聞いた。

「まぁ、あんな事件を起こしたからね。

西は牧野君もかなり毒にやられたけど、

出来るところは綺麗に片づけてきたから、

悪霊が中央と北に散ってるって事かも」

シェデムがマグカップを手にソファーに座った。

「もし酷くなるようなら、

向井さん達には悪いけど、

北にもまた移動してもらうことになるかな」

ディッセもやってくると、

テーブルに並べられてるカードを見た。

「これ、そんなに価値のあるカードなの? 」

「俺のは今回ハズレかな。あんまりいいカードがなかった。

冥王のは当たりだよね。俺が選んだのに」

安達がつまらなさそうに言った。

「せっかくチビ達と一緒に出掛けたんだから、

選んでもらえばよかったね」

新田が横からカードをのぞいて言った。

「そうそう、あの子たちは妖怪の第六感が働くから」

トリアが言うのを、

「そうか~今度からそうしよう」

安達が笑顔でカードを見た。

「今回はどれがレアなの? 」

トリアが冥王のカードを見ながら言った。

「私が欲しかったのはこれなんですけどね。

残念ながら入っていませんでした」

冥王がタブレットをフリックしながら言う。

「でも、この中ではシークレットのこれですかね~

スパイゾンビなんですよ」

「スパイゾンビ? 」

トリア達がしかめっ面で、

嬉しそうに冥王が持つカードをじっと見た。

「カッコいいでしょう」

拳銃を構えて決めポーズのスーツ姿の男だが、

ゾンビになっている。

ディッセも首を傾げた。

「これがカッコイイのか? 」

「カッコいいよ。ゾンビ少年の新キャラなんだよ」

「このカッコよさが分からないとは」

安達と冥王が顔を見合わせ笑顔になった。

「じゃあ、このカードも高値が付くんだ」

トリアの言葉に、

二人が振り返った。

「このカードはあげませんよ。

これに合わせたデコを考えてるんですから」

「別に欲しくはないけど、大事に保管してくれていれば、

いざという時に売れるじゃない」

「売るですと~! 」

冥王が大声をあげた。

トリア達が耳を塞ぐ。

「何? なんかあった? 」

チビ達の様子を見ていたオクトと早紀が振り返った。

「何でもない。ゴメンね」

こっちを見るチビにも謝ると、

「子供じゃないんだから」

シェデムもあきれ顔で冥王を見た。


その頃下界に降りた向井達は黒地にいた。

魔境に変貌した中央は、

丁度帰宅ラッシュだったが、

今日起こった出来事を知ってか知らずか、

誰も気にせずにスマートゴーグルを装着したまま移動していた。

悪霊も増えていたので、

邪心の強い者は悪霊を取り込んだまま普通に歩き、

弱いものはその場に倒れ込むが、

誰もが気にせずに道を歩いて行く。

何人かは倒れた人間から物を盗み、

何人かは慌てて救急車と警察を呼んでいる。

「もうこの風景にも慣れちゃったな」

牧野がうんざりする様子で蔓延する毒に口元を押さえた。
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