上 下
47 / 173
番外編 北支部

冥界のデコブーム

しおりを挟む
そんな事を話していると、

冥王がタブレットを手に楽しそうに歩いてきた。

「向井君~私はこのキャラのマグカップと、

アクリルスタンドが欲しいです。

新商品が出てるのを知りませんでしたよ~」

口をすぼめて言う冥王に、

向井達はあきれ顔で笑った。

「あとですね~」

「まだ買うんですか? 」

向井が驚いて冥王を見ると、

「あと一つだけ。

このアニメのトレカが出たんです。

五枚セットだから、

安達君も二セット買うというので、

お互いに欲しいものをトレードしようと思って」

笑顔の冥王に、

「そんなカードを買ってどうするの」

トリアが画面を見ながら聞く。

「フォトケースにデコるんですよ~」

「デコる? 」

シェデムが聞き返す。

「最近工房にデコ作家さんが来たんです。

それでチビと安達君、あと早紀ちゃんも夢中になって、

フォトフレームにデコっているんです」

向井が説明した。

先日新たに派遣登録された村本美紀は、

デコアーティストとして何冊も本を出版している人気作家だ。

工房でストーンやホイップ、レジンを使って作っている様子に、

安達が夢中になり、

死神達も教えてもらっていた。

「今や冥界はデコブームです」

向井が笑った。

「へえ~」

「どういうものなの? 」

二人が興味を持って聞くと、

「これですよ。これ」

と言って、自分の腰に付けている、

手のひらサイズのトレカケースを見せた。

「これは小さいですけど、

お部屋には大きいものも飾っているんです」

冥王が自慢げに見せた。

「あら可愛い」

「これ本当に冥王が作ったの? 」

シェデムとトリアがケースを見た。

「当然です。村本さんにも素質があるって、

褒められたんですから」

「私もやってみようかな。ホント可愛い」

シェデムが笑顔になった。

「だけど、自分の写真を入れて持ち歩く人っているの? 」

冥王の写真が入っているフォトケースに、

あきれ顔でトリアが言った。

「私はカッコイイんですからいいんです」

冥王がツンとした顔で話すのを見て、

「推しってあるでしょう。冥王はあれに憧れてるんです。

誰も冥王を推してくれないから、

自分で自分を推し活中という訳です」

向井が苦笑いしながら話した。

「惨めね」

「大体自分の顔見て楽しい人っているの? 」

「ギリシャ神話のナルキッソスですね」

二人の会話に向井が言った。

「あぁ、ナルシストね」

トリアが笑った。

「君達には私のカッコよさが分からないんです」

「カッコいいですよ」

「………」

向井の誉め言葉に面白くなさそうな顔をした。

「ははは。イイ男に言われても説得力ないもんね」

トリアが腹を抱えて笑う姿に、シェデムもふき出した。

「ねえ~行かないの? 」

「準備できたよ」

こんと呉葉、三鬼がリュックを背負ってやってきた。

ハクは荷物を詰めると、まだ背負うことができないので、

牧野が代わりに肩掛けして手を繋いで近づいてきた。

「そうですね。そろそろ行きますか。

今回のお泊り組は? 」

向井が聞くと、

「私とトリアとティンとオクトと早紀ちゃん………

それと向井さんとチビと大チビね」

シェデムが指を折り曲げながら言った。

「あとエハさんとヴァン君が後から合流するので、

十四名ですね」

向井と手を繋ぐこんと、

足に抱きつく呉葉と三鬼を見ながら話した。

「冥王の事はちゃんと見てるから、

安心して行ってらっしゃい」

真紀子の言葉に向井達は出かけて行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!

青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。 すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。 「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」 「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」 なぜ、お姉様の名前がでてくるの? なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。 ※タグの追加や変更あるかもしれません。 ※因果応報的ざまぁのはず。 ※作者独自の世界のゆるふわ設定。 ※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。 ※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します

Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。 女性は従姉、男性は私の婚約者だった。 私は泣きながらその場を走り去った。 涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。 階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。 けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた! ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

処理中です...