上 下
37 / 173
番外編 北支部

つかの間の休息

しおりを挟む
「向井君の方がストレスで倒れちゃうわよ」

横で鍋を食べていたトリアが口を開いた。

「それだけ気が小さいんですよ。

悪霊が増え続けていると、

皆にも負担がかかるでしょう。

こうやって楽しそうな景色を見てると、

安心できるんです」

「しゃけ~」

ハクが向井を見上げる姿に、

「鮭は美味しいですか? 」

と笑いかけ、

お鍋から鮭とシイタケ、ジャガイモを皿にいれた。

「ハクはシイタケも食べたね」

「美味しい~」

アートンが野菜を足しながら食べるハクを見た。

「三鬼もシイタケは好きよね。

こんと呉葉は苦手みたいだけど」

アンがチビ達のお皿に取り分けながら話す。

「わらわだっておじゃがは食べてるぞ」

「こんも玉ねぎ食べてる」

「甘くておいしいからね」

アートンが笑いながらビールを飲む。

「安達君もリラックスしてるみたいだし、

安心ね」

アンが微笑んだ。

「チビのイヤイヤ期が落ち着いたら、

安達君のイヤイヤ期だから、

パパは落ち着かないわね」

トリアはケラケラ笑うと食事をしながら、

向井の背中をポンと叩いた。

「イヤイヤ期? 」

カランが聞く。

「少し前まではね。

チビ達が言う事を聞かなくて凄かったのよ。

お陰で冥王が疲れきって、

向井君~って泣きついてたの」

「へえ~」

倉田が笑った。

「洋服や髪形もあれはイヤ、これはイヤ。

大したことじゃないんだけど、

ぐずると人間の子と違って力がね。

それでもパパの言う事は一応聞いてくれるから、

向井君頼みになってたの」

「向井さんは牧野使いでチビ使い? 」

トリアの話にカランが感心するようにいい、

皆がケラケラ笑った。

向井も苦笑すると鍋をつついた。

「あれ~」

「ん? 」

ハクが指さすものを見る。

「あぁ、チキンナゲットね。

ちびちゃんたちが好きだって言うから、

トットとトレンが作ったのよ。

あの二人は料理が得意だから」

フェムティが説明すると、

ナゲットを皿に取ってハクに渡した。

「こんも~」

チビ達も美味しそうに食べている。

「こんなに賑やかな食卓は久しぶりだから、

たまにはちびちゃんたちにお泊りしてもらって、

悪霊で疲れた北支部の風通しをしてもらうか」

倉田が楽しそうに部屋を見回し笑顔になった。



お泊りから戻ると、

「お帰り~」

早紀が読んでいた雑誌から顔をあげた。

休憩室には早紀と源じいとヴァンとエハがいた。

「はい、これお土産です」

向井がケーキの箱といももちの袋をテーブルに置くと、

「夕食にいかめしを買ってきました」

とキッチンに袋を持って行った。

「お泊り行くと美味しいものが食べられていいね~」

仕事を終えて田所が休憩室に入ってきた。

チビ達が胸に抱えている袋を見て、

「随分と買い物してきたんだね」

新田も部屋に入ってきて笑った。

チビと安達、牧野は袋を持ったまま、

キッズルームに向かった。

「買ったものだけじゃなくて、

キャトルさんがチビ達に塗り絵を用意してくれて、

それも持って帰ってきたので」

向井が説明してると、早紀がキッチンにやってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。

契約違反です、閻魔様!

おのまとぺ
キャラ文芸
祖母の死を受けて、旧家の掃除をしていた小春は仏壇の後ろに小さな扉を見つける。なんとそれは冥界へ繋がる入り口で、扉を潜った小春は冥界の王である「閻魔様」から嫁入りに来たと勘違いされてしまい…… ◇人間の娘が閻魔様と契約結婚させられる話 ◇タグは増えたりします

九尾の狐、監禁しました

八神響
ライト文芸
男はとある妖怪を探していた。 その妖怪の存在が男の人生を大きく変えたからだ。 妖怪を見つけて初めに言う言葉はもう決めてある。 そして大学4回生になる前の春休み、とうとう男は目当ての妖怪と出会う。 元陰陽師の大学生、大黒真が九尾の狐、ハクを監禁して(一方的に)愛を深めていく話。

全部未遂に終わって、王太子殿下がけちょんけちょんに叱られていますわ。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられそうだった女性が、目の前でけちょんけちょんに叱られる婚約者を見つめているだけのお話です。 国王陛下は主人公の婚約者である実の息子をけちょんけちょんに叱ります。主人公の婚約者は相応の対応をされます。 小説家になろう様でも投稿しています。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【短編集】或るシンガーソングライターの憂鬱/或るシングルマザーの憂鬱

ふうこジャスミン
ライト文芸
●【連載中】「或るシンガーソングライターの憂鬱」 闇堕ちした元シンガーソングライターの、変人たちに囲まれた平凡な日常 ●【完結】「或るシングルマザーの憂鬱」シングルマザーの小北紗季は、職場の変人メガネ男と恋愛関係に発展するか!?

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

妖古書堂のグルメな店主

浅井 ことは
キャラ文芸
裏路地にある小汚い古本屋 店主はいつもテーブルに座って本を読んでいるだけ。 立ち読みにはいいかと寄ったのが運の尽き。突然「うちで働いてみませんか?」と声をかけられたのは良いものの、本の整理をするバイトだと思っていたら____

処理中です...