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番外編
記憶操作
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トリアは外に出て坂を上っていくと、
途中で立ち止まり振り返った。
ここは澄んだ空気に青空が広がり、
中央を見ると濁った雲の中にビルが立ち並び、
空は夜の様に暗い。
光は微かにあるが、
それは人の心の奥に眠る灯。
だが、そんな心を持つ人も排除されつつあり、
中央や中心地に住む者達は、
不思議とあの悪魔の居城になっている土地に、
普通に住み続けている。
外国人居住区もマフィア化しており、
犯罪も多発。
人が死んでも国はあまり気にならないようだ。
階級プラス、3Aは中央の特別区域に居住を持ち、
同じ国でありながら住みわけができているのが不思議だ。
魔境でも人は暮らせるのだと証明された。
トリアは時間を止めると、
瓶から水を空間に向け撒いた。
水滴はシャボンの様に空中に舞い、
弾けて消えていった。
「記憶操作ですか? 」
向井が横に立つと、その光景を見ながら言った。
「下界とのかかわりは出来るだけ避けたいところだけど、
仕事をしている以上そうもいかないから」
「そうですね」
向井も空中に浮かぶ水滴を眺めながら、
その様子を見ていた。
「黒地の人間は一筋縄ではいきませんね」
「大昔から悪人は変わらないもんでしょう」
トリアは向井を見ると笑い、時間を動かした。
「そういえばさっき通信してたけど、
何かあった? 」
「ん? いえ、北の中心地で悪霊が暴れているらしくて、
地震が発生しているので、
避難できる人は捨て地が受け入れるそうです」
「災害の規模によっては、国外に逃げ出す人もいるだろうしね」
「その方が俺達は動きやすくていいです。
悪霊は捨て地には結界で入り込めないので、
守る人だけ把握できればいいだけですから。
冥王が捨て地の街づくりに、
天上界から干渉する許可を取り付けたそうです」
「そうなの? 」
トリアが驚きの表情になった。
「はい。
多くのものを中央から取り上げられていますからね。
生活基盤は整備されないとまずいし、
家族連れも単身者も高齢者も、
それぞれが暮らせる街が理想でしょう?
捨て地は自分の時間と助け合いの気持ちが、
ストレスなく自然と確立されています。
家族でもつかず離れずの関係がちょうどいいように、
捨て地もそんな関係性が望ましいです。
本来なら冥界が介入することではないんですけど、
これは中央への神罰であると、
冥王から言われました」
「そう………」
トリアは静かに頷いた。
「牧野君には可哀想ですけど、
戻ったら北に出発です」
二人がそんな話をしていると、
楽しそうな牧野が家から出てきた。
「知らぬが仏だ」
「本当ですね」
二人は笑うと歩き出した。
途中で立ち止まり振り返った。
ここは澄んだ空気に青空が広がり、
中央を見ると濁った雲の中にビルが立ち並び、
空は夜の様に暗い。
光は微かにあるが、
それは人の心の奥に眠る灯。
だが、そんな心を持つ人も排除されつつあり、
中央や中心地に住む者達は、
不思議とあの悪魔の居城になっている土地に、
普通に住み続けている。
外国人居住区もマフィア化しており、
犯罪も多発。
人が死んでも国はあまり気にならないようだ。
階級プラス、3Aは中央の特別区域に居住を持ち、
同じ国でありながら住みわけができているのが不思議だ。
魔境でも人は暮らせるのだと証明された。
トリアは時間を止めると、
瓶から水を空間に向け撒いた。
水滴はシャボンの様に空中に舞い、
弾けて消えていった。
「記憶操作ですか? 」
向井が横に立つと、その光景を見ながら言った。
「下界とのかかわりは出来るだけ避けたいところだけど、
仕事をしている以上そうもいかないから」
「そうですね」
向井も空中に浮かぶ水滴を眺めながら、
その様子を見ていた。
「黒地の人間は一筋縄ではいきませんね」
「大昔から悪人は変わらないもんでしょう」
トリアは向井を見ると笑い、時間を動かした。
「そういえばさっき通信してたけど、
何かあった? 」
「ん? いえ、北の中心地で悪霊が暴れているらしくて、
地震が発生しているので、
避難できる人は捨て地が受け入れるそうです」
「災害の規模によっては、国外に逃げ出す人もいるだろうしね」
「その方が俺達は動きやすくていいです。
悪霊は捨て地には結界で入り込めないので、
守る人だけ把握できればいいだけですから。
冥王が捨て地の街づくりに、
天上界から干渉する許可を取り付けたそうです」
「そうなの? 」
トリアが驚きの表情になった。
「はい。
多くのものを中央から取り上げられていますからね。
生活基盤は整備されないとまずいし、
家族連れも単身者も高齢者も、
それぞれが暮らせる街が理想でしょう?
捨て地は自分の時間と助け合いの気持ちが、
ストレスなく自然と確立されています。
家族でもつかず離れずの関係がちょうどいいように、
捨て地もそんな関係性が望ましいです。
本来なら冥界が介入することではないんですけど、
これは中央への神罰であると、
冥王から言われました」
「そう………」
トリアは静かに頷いた。
「牧野君には可哀想ですけど、
戻ったら北に出発です」
二人がそんな話をしていると、
楽しそうな牧野が家から出てきた。
「知らぬが仏だ」
「本当ですね」
二人は笑うと歩き出した。
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