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番外編

初めてのコロッケにハクは?

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「パパ~あれ~」

「ん? 」

指さす方角を見るとコロッケの惣菜屋があった。

お客さん達が揚げたてを手に食べている姿に、

「私達も食べようか」

とトリアがお店に歩いて行った。

「いらっしゃい」

六十代位の女性が笑顔で声をかけてきた。

「こんにちは。ここで一番人気のコロッケて何ですか? 」

早紀がお惣菜を見ながら聞く。

「定番のポテトコロッケは人気だよ。

あとね~チーズとカニクリームかな」

「カニ? 」

ハクが顔をあげた。

「可愛い息子さんだね。子供にはカニクリーム人気だよ」

「じゃあ、カニにしようかな」

トリアが言うと、

「カニね。食べていく? 」

「はい。お願いします」

「じゃあ五つね」

と女性が紙に包んで渡してくれた。

「熱いから気を付けてね」

女性が向井に抱っこされるハクに、

そっと手渡す。

「フーフーしてね」

向井が言いながら食べるのを見ていると、

ハクの顔が驚きに変わった。

笑顔で食べる姿に、

アーケードの客も足を止め、

惣菜屋にやってきた。

「この子は神様だね~

お客さんが来た」

女性は笑うと、

「また来てね~」

とハクに手を振った。

「ハクは本当に不思議な子よね。

この子の周りはオーラで包まれてる」

トリアもコロッケを食べながらハクを見た。

「ハクの中には龍神がいるので、

そのせいかもしれませんけど、

それが却ってこの子の負担にならなければいいんですけどね」

向井も美味しそうに食べるハクを心配した。

「龍神を身のうちに置くのってキツイ? 」

新田が向井を振り返った。

「体力と心が引きずられるんです。

俺は死人になって心が動き出した? 

そんな人間なので、

元々気持ちが冷めているから、

そこまできつくはないんですけど、

かなり体が消耗します」

「ということは、これだけ小さな体だと危ないってこと? 」

早紀が美味しいと食べるハクに笑いかけた。

「ん~ただ、人間じゃないから、

そこまでは心配ないと思うわよ。

成長の遅い妖怪の体に龍神が長くいるのは、

ハクにとってはこの先、

きついことも出てくるかもしれないけど………

でもまぁ、パパが付いてるから大丈夫でしょ」

トリアが向井を見て笑った。

「死んで心が動き出して、

子だくさんになってよかったじゃん」

新田の言葉に向井は複雑な心境で笑った。


――――――――


喫茶店は土日はイベントやマルシェに出る為、

お休みになっていた。

お泊りの日もクローズのプレートがかかり、

向井達は裏庭から入って行った。

「来たぞ~」

牧野とチビ達が楽しそうに部屋にあがる。

「これ何~」

チビ達がキッズスペースに置かれた箱を見て言った。

「それね、一昨日かな。駄菓子屋の新井さんが、

仕入れ先の業者さんに余ったからってもらったらしいよ。

チビ達にどうぞって」

「開けていい? 」

「いいよ」

振り返って聞くこんに、黒谷が笑った。
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