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番外編

変わりゆく捨て地

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喫茶店に向かう途中に、

新たなお店の看板があった。

牧野が近づくと、

「黒谷知ってた? お煎餅屋さんだって」

と振り返って聞いた。

「知ってるよ。挨拶に来たから。

来週開くって言ってたよ」

「あれ? このお店………」

向井が店名に立ち止まった。

「彩り屋………ってアーケードにあったお店かな? 

ほら、牧野君の好きなお煎餅屋さん」

向井が牧野を見た。

「………あっ、あのザラメ煎餅! 」

牧野が頷くと、

「あのお店、ここに越してきたんだ」

と黒谷を見た。

「そう。鰻屋さんも越してきたでしょ。

それでね、アーケードのお店も、

何店舗か捨て地に移住を決めたんだって。

あれから幸福庁とAI推進庁の大臣が、

新たに個人営業のお店への法案を決めたんで、

もうやっていけないってこっちに逃げてきたらしいよ」

「まぁここなら、通常に営業できるからね」

トリアもため息まじりに笑った。

「お煎餅って何? 」

三鬼が大人達を見て聞いた。

「あれ? お前ら食べたことなかったっけ? 」

牧野がチビを見ると、

「知らない~」

と首を振った。

「悪霊退治の時に、

牧野君はよく焼き立てを食べてましたからね」

向井が笑った。

「俺もお煎餅って食べたことない」

安達も向井を見た。

「そうか。おやつに買ってきたことなかったか………」

向井が考え込むように上を向いた。

「だったら来週おいでよ」

「行く~お泊りする~」

黒谷の言葉にチビ達がニコニコ笑いながら言った。

「そうね。久しぶりにお泊りするか」

トリアが言い、

「弥生ちゃんも今度は参加しない? 」

と振り返った。

「仕事がないなら泊まろうかな。

早紀ちゃん達も楽しかった~って言ってたから」

弥生の笑顔に黒谷が嬉しそうな表情になった。

「不毛ですけど、よかったですね」

向井は苦笑いすると、黒谷の肩に手を乗せた。


お昼はテーマパーク内で食べてきたので、

黒谷の店に着くと部屋で遊んで、

暫くするとチビと大チビは大の字で寝ていた。

「静かだと思ったら寝ちゃったか」

トリアがミルクティーを飲みながら笑った。

「朝からはしゃいでたから疲れたんだと思う」

弥生も寝姿を見ながら微笑んだ。

「安達君は顔つきがしっかりしてきた?

運動会の時に見てびっくりしたんだ」

黒谷が言った。

「そうでしょう。私達もビックリしてるの。

子供の成長って羨ましいよね」

トリアも寝ている安達を見ながら話した。

「でもね、早紀ちゃんと新田君は、

可愛いままでいて~って、

いつも言ってますよ」

「まぁ気持ちは分からないでもないかな。

安達君が可愛くなくなったら、

私も寂しいもん」

向井の言葉に弥生が言い、

皆で笑った。

「牧野君は今日はお仕事平気だったの? 

時々ここにきて寝てても、

エナトさんに連れて行かれてるからさ。

この前も悪霊うじゃうじゃ、毒だらけ~

もうヤダ~って言って、佐久間さんに頭叩かれてた」

黒谷が話した。

「ちょっと毒素が抜けてないから、

今日は一日にお休みもらってるのよ。

夜中にもアラート鳴って悪霊退治してるから、

眠れてないんだと思う」

トリアの言葉に、

「やっぱり黒地のせい? 」

と黒谷が聞いた。
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