18 / 28
―18―
しおりを挟む
「毎回お菓子じゃない。私は苦手だから、
たまには違うものを頂戴って言ったら、
今度は沢山のコスメ」
「あら、いいじゃない」
冬がリップの箱を見ながら言った。
「確かにね。でも、若者向きのコスメが多いから。
このリップ、なんて言ったかしら………
有名な歌手が使ってて、
こっちじゃ手に入らないんですって」
「まぁ、嬉しい。真美子ちゃんにお礼言っといて」
「気にしなくていいわよ。あれは趣味が韓国だから。
じゃあ聞いたらお願いします」
「はい」
由香里はそれだけ言って、
椿たちに再度頭を下げると帰って行った。
冬がリビングに戻ってくると、
「冬さんはちゃんと地元に馴染めてて、
立派ですよね。
私はまだうまく話せなくて」
椿がため息をついた。
「無理をしないで自然でいいのよ。
程よい距離感で自分も心地よい空間にしておけば」
冬は笑うと言った。
「私もね。うまくやろうと頑張りすぎて、
結局倒れて、会社を辞めちゃったから」
「えっ? そうなの? 」
椿が花華を見た。
「そう。それで年取ってスキルないのに辞めたから、
もうどうにもならなかったの。
十社よ。合計十社落ちたの」
花華が笑いながら珈琲を飲んだ。
「そんな時に冬さんに会って、
背中を押された感じ。
で、資格取って今はパート。
資格のお陰で少し時給が高いからホッとしたんだ。
アパートも駅に近いと高いでしょう。
保証人なしで借りるとなると、
月収が一定給必要じゃない。
この近くだと安い物件もあるから、
私の給料でも借りられた」
「凄い………」
椿が驚きの顔になった。
「長い事おひとり様で会社員してると、
色々あるのよ。
今はそれがない分ストレスもない」
花華はそう言うと、
「私からしたら子供を一人で育ててる椿さんの方が、
凄いって思うわよ」
「なんかそういわれたら………
私も本気で縫製作家目指そうかな」
椿の瞳が強い意志を持ち始めた。
「年取ってるって言うけど、
七十のおばあさんから見ると、
二人はまだキラキラしてて羨ましい」
冬が笑った。
「私も頑張らないとね」
「えっ? 」
「冬さんのそのバイタリティ、
少し分けてもらいたい」
花華と椿は驚きの表情をすると、
三人は一緒に笑った。
――――――――
それからしばらくして、
三人は東京で開催されるクラフトマルシェに申し込みをした。
椿はドッグカフェからのオーダーが順調になり、
夜中の工場務めをやめた。
「縫製の内職とオーダーだけで、
なんとか生活できそうだから」
保育園も週三日の所に入園できた。
「私の場合在宅勤務になるから、
一時保育の場所が見つかって安心しました」
椿が居間で冬とお昼を食べながら話した。
ここは椿の家で、
昔ながらの平屋だ。
台所の前に和室の居間。
部屋は三室。
庭も小さいがあるので、
洗濯物はそこに干してあった。
春と小春も庭に繋いで、
陽斗と楽しそうに遊んでいる姿を、
縁側を挟んで見ていた。
たまには違うものを頂戴って言ったら、
今度は沢山のコスメ」
「あら、いいじゃない」
冬がリップの箱を見ながら言った。
「確かにね。でも、若者向きのコスメが多いから。
このリップ、なんて言ったかしら………
有名な歌手が使ってて、
こっちじゃ手に入らないんですって」
「まぁ、嬉しい。真美子ちゃんにお礼言っといて」
「気にしなくていいわよ。あれは趣味が韓国だから。
じゃあ聞いたらお願いします」
「はい」
由香里はそれだけ言って、
椿たちに再度頭を下げると帰って行った。
冬がリビングに戻ってくると、
「冬さんはちゃんと地元に馴染めてて、
立派ですよね。
私はまだうまく話せなくて」
椿がため息をついた。
「無理をしないで自然でいいのよ。
程よい距離感で自分も心地よい空間にしておけば」
冬は笑うと言った。
「私もね。うまくやろうと頑張りすぎて、
結局倒れて、会社を辞めちゃったから」
「えっ? そうなの? 」
椿が花華を見た。
「そう。それで年取ってスキルないのに辞めたから、
もうどうにもならなかったの。
十社よ。合計十社落ちたの」
花華が笑いながら珈琲を飲んだ。
「そんな時に冬さんに会って、
背中を押された感じ。
で、資格取って今はパート。
資格のお陰で少し時給が高いからホッとしたんだ。
アパートも駅に近いと高いでしょう。
保証人なしで借りるとなると、
月収が一定給必要じゃない。
この近くだと安い物件もあるから、
私の給料でも借りられた」
「凄い………」
椿が驚きの顔になった。
「長い事おひとり様で会社員してると、
色々あるのよ。
今はそれがない分ストレスもない」
花華はそう言うと、
「私からしたら子供を一人で育ててる椿さんの方が、
凄いって思うわよ」
「なんかそういわれたら………
私も本気で縫製作家目指そうかな」
椿の瞳が強い意志を持ち始めた。
「年取ってるって言うけど、
七十のおばあさんから見ると、
二人はまだキラキラしてて羨ましい」
冬が笑った。
「私も頑張らないとね」
「えっ? 」
「冬さんのそのバイタリティ、
少し分けてもらいたい」
花華と椿は驚きの表情をすると、
三人は一緒に笑った。
――――――――
それからしばらくして、
三人は東京で開催されるクラフトマルシェに申し込みをした。
椿はドッグカフェからのオーダーが順調になり、
夜中の工場務めをやめた。
「縫製の内職とオーダーだけで、
なんとか生活できそうだから」
保育園も週三日の所に入園できた。
「私の場合在宅勤務になるから、
一時保育の場所が見つかって安心しました」
椿が居間で冬とお昼を食べながら話した。
ここは椿の家で、
昔ながらの平屋だ。
台所の前に和室の居間。
部屋は三室。
庭も小さいがあるので、
洗濯物はそこに干してあった。
春と小春も庭に繋いで、
陽斗と楽しそうに遊んでいる姿を、
縁側を挟んで見ていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
今日はパンティー日和♡
ピュア
ライト文芸
いろんなシュチュエーションのパンチラやパンモロが楽しめる短編集✨
おまけではパンティー評論家となった世界線の崇道鳴志(*聖女戦士ピュアレディーに登場するキャラ)による、今日のパンティーのコーナーもあるよ💕
暴走族のお姫様、総長のお兄ちゃんに溺愛されてます♡
五菜みやみ
ライト文芸
〈あらすじ〉
ワケあり家族の日常譚……!
これは暴走族「天翔」の総長を務める嶺川家の長男(17歳)と
妹の長女(4歳)が、仲間たちと過ごす日常を描いた物語──。
不良少年のお兄ちゃんが、浸すら幼女に振り回されながら、癒やし癒やされ、兄妹愛を育む日常系ストーリー。
※他サイトでも投稿しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる