独り日和 ―春夏秋冬―

八雲翔

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「毎回お菓子じゃない。私は苦手だから、

たまには違うものを頂戴って言ったら、

今度は沢山のコスメ」

「あら、いいじゃない」

冬がリップの箱を見ながら言った。

「確かにね。でも、若者向きのコスメが多いから。

このリップ、なんて言ったかしら………

有名な歌手が使ってて、

こっちじゃ手に入らないんですって」

「まぁ、嬉しい。真美子ちゃんにお礼言っといて」

「気にしなくていいわよ。あれは趣味が韓国だから。

じゃあ聞いたらお願いします」

「はい」

由香里はそれだけ言って、

椿たちに再度頭を下げると帰って行った。


冬がリビングに戻ってくると、

「冬さんはちゃんと地元に馴染めてて、

立派ですよね。

私はまだうまく話せなくて」

椿がため息をついた。

「無理をしないで自然でいいのよ。

程よい距離感で自分も心地よい空間にしておけば」

冬は笑うと言った。

「私もね。うまくやろうと頑張りすぎて、

結局倒れて、会社を辞めちゃったから」

「えっ? そうなの? 」

椿が花華を見た。

「そう。それで年取ってスキルないのに辞めたから、

もうどうにもならなかったの。

十社よ。合計十社落ちたの」

花華が笑いながら珈琲を飲んだ。

「そんな時に冬さんに会って、

背中を押された感じ。

で、資格取って今はパート。

資格のお陰で少し時給が高いからホッとしたんだ。

アパートも駅に近いと高いでしょう。

保証人なしで借りるとなると、

月収が一定給必要じゃない。

この近くだと安い物件もあるから、

私の給料でも借りられた」

「凄い………」

椿が驚きの顔になった。

「長い事おひとり様で会社員してると、

色々あるのよ。

今はそれがない分ストレスもない」

花華はそう言うと、

「私からしたら子供を一人で育ててる椿さんの方が、

凄いって思うわよ」

「なんかそういわれたら………

私も本気で縫製作家目指そうかな」

椿の瞳が強い意志を持ち始めた。

「年取ってるって言うけど、

七十のおばあさんから見ると、

二人はまだキラキラしてて羨ましい」

冬が笑った。

「私も頑張らないとね」

「えっ? 」

「冬さんのそのバイタリティ、

少し分けてもらいたい」

花華と椿は驚きの表情をすると、

三人は一緒に笑った。


――――――――


それからしばらくして、

三人は東京で開催されるクラフトマルシェに申し込みをした。

椿はドッグカフェからのオーダーが順調になり、

夜中の工場務めをやめた。

「縫製の内職とオーダーだけで、

なんとか生活できそうだから」

保育園も週三日の所に入園できた。

「私の場合在宅勤務になるから、

一時保育の場所が見つかって安心しました」

椿が居間で冬とお昼を食べながら話した。

ここは椿の家で、

昔ながらの平屋だ。

台所の前に和室の居間。

部屋は三室。

庭も小さいがあるので、

洗濯物はそこに干してあった。

春と小春も庭に繋いで、

陽斗と楽しそうに遊んでいる姿を、

縁側を挟んで見ていた。
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