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その日から三人で冬の家に集まって、
マルシェに向けて話し合うことが多くなり、
花華と椿も自然と仲良くなった。
陽斗も春と小春と遊んでいて疲れたのか、
一緒に寝ている。
冬は毛布を掛けると、
珈琲を淹れてテーブルに運んだ。
「珈琲どうぞ」
「すいません」
二人はお礼を言いながら、
カップを手に話しを続けた。
「私は小物だから家庭用ミシンで十分なんだけど、
椿さんは業務用でしょう」
「ええ。あまりうるさくないように、
昼間に奥の部屋で作ってるんですけど、
冬さんみたいにもう少しお金が稼げるようになったら、
ちゃんと工房にしたいです」
「私も小さくてもいいから、
雑貨屋さんを開きたいんですよ。
でね、冬さんがネットショップ持ってるのを知って、
私も自分のお店作ってみました。
以前の仕事ではお客さんのお店を作って、
色々考えてたのにね」
そういってスマホを見せた。
「あら、素敵」
椿と冬が画面を見た。
「冬さんみたいになるにはまだまだだけど、
一応十点売れたんですよ。
もぅ嬉しくて。冬さんに弟子入りしてよかった~」
「私もショップ開店してみようかな」
「椿さんはプロじゃないですか」
冬は自分の娘のような二人の楽しそうな姿に、
珈琲を飲みながら微笑んでいた。
その時庭を周って、
玄関横の出窓から声をかける人の姿に、
冬が玄関を開けた。
「仕事中かなと思ったんだけど、今大丈夫? 」
六十歳前後と思われる女性が入ってくると話した。
「あ、お客さん? だったらあとでもいいけど」
女性は奥のリビングを見て、椿たちに頭を下げた。
椿たちも小さくお辞儀を返す。
「大丈夫よ。お友達なんだけど、
娘みたいなものだから」
冬がにっこり笑って話すと、
「だったら少しだけ」
と女性は上がり框の玄関ホールに腰を下ろした。
「実はね。この前冬さんに、
お習い事の美術鞄作ってもらったでしょう。
あれを使ってたらお友達に欲しいって言われて、
作ってもらえるかしら」
「いいわよ」
「よかった~でね、
お値段を私が作ってもらった金額言っちゃったのよ。
だから同じお値段でお願いできるかしら」
「分かった。ただ、選べる生地が決まっちゃうけどいいかしら。
由香里さんに作った布は、
余りとはいえちょっと特別な廃番布だから」
「えっ、そんな特別な生地だったの?
悪かったわね」
「ううん、中途半端なメーターだったから、
喜んでもらえてよかったの。
ちょっと待ってね。今生地見本を持ってくるから」
冬はそういうと奥の部屋から生地見本を持ってきた。
「えっとね。あの値段だと………選べるのはこれになっちゃうけど、
いいかしら」
生地が貼られた紙を見せながら、冬が説明する。
「こんなにあるの? 十分よ。
この見本借りられる? 明日教室だから持っていきたいんだけど」
「いいわよ。ただ、返してね。見本がなくなっちゃうと困るから」
「わかった。有難う」
由香里は立ち上がると、
「あっ、そうそう。肝心な事忘れてた。
これ。孫娘が週末にまた韓国に行ってきたのよ。
で、お土産」
といって小さなコスメの箱を手渡した。
マルシェに向けて話し合うことが多くなり、
花華と椿も自然と仲良くなった。
陽斗も春と小春と遊んでいて疲れたのか、
一緒に寝ている。
冬は毛布を掛けると、
珈琲を淹れてテーブルに運んだ。
「珈琲どうぞ」
「すいません」
二人はお礼を言いながら、
カップを手に話しを続けた。
「私は小物だから家庭用ミシンで十分なんだけど、
椿さんは業務用でしょう」
「ええ。あまりうるさくないように、
昼間に奥の部屋で作ってるんですけど、
冬さんみたいにもう少しお金が稼げるようになったら、
ちゃんと工房にしたいです」
「私も小さくてもいいから、
雑貨屋さんを開きたいんですよ。
でね、冬さんがネットショップ持ってるのを知って、
私も自分のお店作ってみました。
以前の仕事ではお客さんのお店を作って、
色々考えてたのにね」
そういってスマホを見せた。
「あら、素敵」
椿と冬が画面を見た。
「冬さんみたいになるにはまだまだだけど、
一応十点売れたんですよ。
もぅ嬉しくて。冬さんに弟子入りしてよかった~」
「私もショップ開店してみようかな」
「椿さんはプロじゃないですか」
冬は自分の娘のような二人の楽しそうな姿に、
珈琲を飲みながら微笑んでいた。
その時庭を周って、
玄関横の出窓から声をかける人の姿に、
冬が玄関を開けた。
「仕事中かなと思ったんだけど、今大丈夫? 」
六十歳前後と思われる女性が入ってくると話した。
「あ、お客さん? だったらあとでもいいけど」
女性は奥のリビングを見て、椿たちに頭を下げた。
椿たちも小さくお辞儀を返す。
「大丈夫よ。お友達なんだけど、
娘みたいなものだから」
冬がにっこり笑って話すと、
「だったら少しだけ」
と女性は上がり框の玄関ホールに腰を下ろした。
「実はね。この前冬さんに、
お習い事の美術鞄作ってもらったでしょう。
あれを使ってたらお友達に欲しいって言われて、
作ってもらえるかしら」
「いいわよ」
「よかった~でね、
お値段を私が作ってもらった金額言っちゃったのよ。
だから同じお値段でお願いできるかしら」
「分かった。ただ、選べる生地が決まっちゃうけどいいかしら。
由香里さんに作った布は、
余りとはいえちょっと特別な廃番布だから」
「えっ、そんな特別な生地だったの?
悪かったわね」
「ううん、中途半端なメーターだったから、
喜んでもらえてよかったの。
ちょっと待ってね。今生地見本を持ってくるから」
冬はそういうと奥の部屋から生地見本を持ってきた。
「えっとね。あの値段だと………選べるのはこれになっちゃうけど、
いいかしら」
生地が貼られた紙を見せながら、冬が説明する。
「こんなにあるの? 十分よ。
この見本借りられる? 明日教室だから持っていきたいんだけど」
「いいわよ。ただ、返してね。見本がなくなっちゃうと困るから」
「わかった。有難う」
由香里は立ち上がると、
「あっ、そうそう。肝心な事忘れてた。
これ。孫娘が週末にまた韓国に行ってきたのよ。
で、お土産」
といって小さなコスメの箱を手渡した。
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