独り日和 ―春夏秋冬―

八雲翔

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「こんにちは~」

陽斗が笑顔で冬の方に駆け寄っていく。

「あら~嬉しい。遊びに来てくれたの? 」

冬が屈んで陽斗を見た。

「すいません。お散歩してたら春ちゃん達を見つけて」

椿が頭を下げて近づいた。

「あら、偶然なの? もしかしてこの辺りに住んでるの? 」

「いえ、近いと言ったら近いですけど、

この先の大通りを渡った先の住宅地です」

「まぁ」

冬が笑った。

「ここに何年も住んでるのに、

この前キッチンカーの事も知らなくて。

だから陽斗とお天気もいいから散策しようと、

この辺りをお散歩してたんです」

「そうだったの。お時間ある? 」

「えっ………大丈夫ですけど」

「だったらお茶しない? 

私もちょうど休憩しようと思ってたのよ。

陽斗君も春と小春と遊ばない? 」

「遊びたい。ママ、いいでしょう」

陽斗が母親を振り返って言った。

「お邪魔じゃないですか」

「大丈夫よ。一人でお茶したって楽しくないでしょ。

上がって頂戴」

冬はそういうと部屋へ通した。

「お邪魔します」

二人は広々としたログハウス風の家に、

わあ~とため息をついた。

「素敵ですね」

椿が両手を口に当てて笑顔になった。

「何もないでしょう。以前住んでいた人は、

工房兼住居に使っていたんだけど、

坪数も少ないからファミリー向きじゃないでしょう。

場所も場所だから売れなくて、

それで私が安く譲ってもらって助かっちゃった。

どうぞ。好きなところに座って。

今お茶淹れるわね」

冬はそういうとキッチンに向かった。

「お構いなく」

椿はそういいながらソファーに座り、

テラス戸から庭を眺めた。

陽斗は春たちと楽しそうに寝転がって遊んでいた。

コンパクトなキッチンに、

階段の少ないスキップフロアがある。

奥の部屋が仕事場なのだろう。

「陽斗君は林檎とミカン、

どっちのジュースがいい? 」

「僕、みかんが好き~」

陽斗が冬の方へ歩いて行った。

「こら、陽斗。お行儀悪いよ」

椿の注意に、

「いいのよね~私が聞いたんだから」

そういうと二人で楽しそうに笑った。


陽斗は夜間保育だから、

どうしてもお友達が少ない。

学校に上がる年になったら、

もう一つパートを増やさないとな。

椿はそんなことを思いながら、

近づいてきた小春を膝に乗せて撫でていた。

「はい。どうぞ召し上がれ」

冬は椿の所に来るとテーブルにジュースを置いた。

「このジュースとクッキーは私の手作り」

「凄い~」

陽斗は笑顔でグラスを見た。

「椿さんもどうぞ。ウェットティッシュは、

テーブルに乗ってるから好きに使って。

春と小春はこっちのお皿におやつ入れたからね」

冬がそういうと小春は椿の膝の上から降り、

二匹は食事台の方へ歩いて行った。

「美味しい」

椿と陽斗はジュースを飲んで冬を見た。
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