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「結構天井高いから、俺が寝ても平気だね」
楽しそうなシュートに、
「気に入った? 」
「うん。本当に三万でいいの? 」
「いいわよ」
冬が笑った。
「シュートさんがここに住むと、
ちょっと得することもあるよ」
「なに? 」
耕太がドアから顔をのぞかせた。
「俺んち、向かいの喫茶店だろう。
母さんやばあちゃんが食事持ってきてくれるのよ」
「えっ? 嬉しい。俺、おふくろの味って分かんないんだよね」
「そうなの? 」
耕太が言った。
「ほら、親父の世話係って話しただろう。
通いのお手伝いさんが食事は作ってくれたけど、
毎日じゃないからコンビニ弁当で、
すましちゃうこともあったんだよね」
「へえ~そんな話したら、ばあちゃんたち喜んで作るよ」
耕太が笑った。
二人の楽しそうな会話を微笑んで冬が見ていると、
春と小春が走って部屋に入ってきた。
はしゃぐ様子に、
「こいつらもここで寝てたの? 」
シュートが聞いた。
「そうよ。私と一緒に寝てたんだもの」
「おっ、そうだ。こいつらのトイレ用意しなきゃ」
耕太が一階に下りて行くと、
納戸からトイレを持ってきて、
出窓横のデッドスペースに置いた。
「お前ら、覚えてるか?
ここがトイレだからな」
耕太が二匹に声をかけた。
「俺の部屋は隣だから」
そういってシュートを呼ぶとドアを開けた。
「えっ? こっちにもロフト? 」
驚くシュートに、
「ここを作り替えてた時によく美幸ちゃん、
あ………この子の母親ね。
その子が遊びに来てたの。
それで美幸ちゃんの部屋に作ったのよ」
と冬が笑った。
「親子二代でこの部屋は使われてるの」
「へえ~由緒ある部屋なんだ」
シュートの笑顔に、
「こんなボロ屋に由緒なんかあるかよ」
「そのボロ屋を売らないでくれって、
泣いて頼んだのはどちらさまでしたっけ? 」
と冬が耕太を笑いながら見た。
いずれ耕太に残そうと思っているのは、
内緒にしてある。
耕太の家賃も家の修繕に使う以外は貯金してあるので、
いざという時の生活の足しにはなるだろう。
その事についても税理士と相談してある。
「ではそういう事で、二人で仲良く同棲………
あっ違った同居してください」
冬は笑うとリビングに戻った。
――――――――
それからしばらくしてシュートが引っ越しをしてきた。
「なに? 荷物それだけ? 」
耕太が驚いてデイバッグと、
小さめのキャリーバッグでやってきたシュートを見た。
「そりゃそうだよ。生活するのに手一杯なんだからさ。
余裕なんかないよ。
だから俺にとって冬さんは女神なんだよ~」
シュートが笑った。
冬は車から降りると、
「ここまでシュートくんの運転で来たから、
楽ちんだったわ」
と言った。
春と小春ももちろん一緒だ。
「帰りは俺が送って行こうか? 」
耕太が言うのを、
「大丈夫よ。近いんだから。
それに乗れなくなったら、ここに戻ってくるから」
と冬が笑った。
そのあと耕太に引っ張られ、
春と小春の散歩も兼ねて、
シュートは近所への挨拶と、
商店街を見に行った。
楽しそうなシュートに、
「気に入った? 」
「うん。本当に三万でいいの? 」
「いいわよ」
冬が笑った。
「シュートさんがここに住むと、
ちょっと得することもあるよ」
「なに? 」
耕太がドアから顔をのぞかせた。
「俺んち、向かいの喫茶店だろう。
母さんやばあちゃんが食事持ってきてくれるのよ」
「えっ? 嬉しい。俺、おふくろの味って分かんないんだよね」
「そうなの? 」
耕太が言った。
「ほら、親父の世話係って話しただろう。
通いのお手伝いさんが食事は作ってくれたけど、
毎日じゃないからコンビニ弁当で、
すましちゃうこともあったんだよね」
「へえ~そんな話したら、ばあちゃんたち喜んで作るよ」
耕太が笑った。
二人の楽しそうな会話を微笑んで冬が見ていると、
春と小春が走って部屋に入ってきた。
はしゃぐ様子に、
「こいつらもここで寝てたの? 」
シュートが聞いた。
「そうよ。私と一緒に寝てたんだもの」
「おっ、そうだ。こいつらのトイレ用意しなきゃ」
耕太が一階に下りて行くと、
納戸からトイレを持ってきて、
出窓横のデッドスペースに置いた。
「お前ら、覚えてるか?
ここがトイレだからな」
耕太が二匹に声をかけた。
「俺の部屋は隣だから」
そういってシュートを呼ぶとドアを開けた。
「えっ? こっちにもロフト? 」
驚くシュートに、
「ここを作り替えてた時によく美幸ちゃん、
あ………この子の母親ね。
その子が遊びに来てたの。
それで美幸ちゃんの部屋に作ったのよ」
と冬が笑った。
「親子二代でこの部屋は使われてるの」
「へえ~由緒ある部屋なんだ」
シュートの笑顔に、
「こんなボロ屋に由緒なんかあるかよ」
「そのボロ屋を売らないでくれって、
泣いて頼んだのはどちらさまでしたっけ? 」
と冬が耕太を笑いながら見た。
いずれ耕太に残そうと思っているのは、
内緒にしてある。
耕太の家賃も家の修繕に使う以外は貯金してあるので、
いざという時の生活の足しにはなるだろう。
その事についても税理士と相談してある。
「ではそういう事で、二人で仲良く同棲………
あっ違った同居してください」
冬は笑うとリビングに戻った。
――――――――
それからしばらくしてシュートが引っ越しをしてきた。
「なに? 荷物それだけ? 」
耕太が驚いてデイバッグと、
小さめのキャリーバッグでやってきたシュートを見た。
「そりゃそうだよ。生活するのに手一杯なんだからさ。
余裕なんかないよ。
だから俺にとって冬さんは女神なんだよ~」
シュートが笑った。
冬は車から降りると、
「ここまでシュートくんの運転で来たから、
楽ちんだったわ」
と言った。
春と小春ももちろん一緒だ。
「帰りは俺が送って行こうか? 」
耕太が言うのを、
「大丈夫よ。近いんだから。
それに乗れなくなったら、ここに戻ってくるから」
と冬が笑った。
そのあと耕太に引っ張られ、
春と小春の散歩も兼ねて、
シュートは近所への挨拶と、
商店街を見に行った。
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