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「そうだ。あなたさっき私が何で冬なのか、
気になってるみたいだったでしょ。
何でだと思う? 」
「ん~なんでだろうな」
シュートは春を抱きしめながら、
考える表情をした。
「大抵の人は冬って言うと、
冬生まれって思うでしょ。
でも私は四月生まれ。
理由は簡単。
両親が言うには、
春夏秋冬にしたかったんですって」
「春夏秋冬? 」
「そう。我が家はね。
父の名が秋。母の名が夏。
でね、私が生まれる前から犬を飼っていて、
その子が春に家族になったので春。
でもあと一つ季節が足りないでしょう。
だから子供が生まれたら、
男でも女でも冬ってつけることにしたって。
犬より格下の名前よ。
笑っちゃうでしょ」
「プッ、アハハハハ」
シュートはふき出して笑った。
「犬の方が櫻野春で、
何か風流じゃない。
この子はね、五代目春。
一代目からずっと春の名を受け継いでいるのよ」
「へえ~歴史のある名前なんだ。
春。お前カッコいいな」
シュートが春の顔を見た。
「小春は春の妹だから小さな春で小春。
可愛いでしょう? 」
「ああ、可愛いな」
そういったところで、
遠くからこちらに走ってくる者の姿が見えた。
「耕太だわ」
「耕太だ」
「えっ!? 」
二人は同時に言って驚くと、
顔を見合わせた。
「あれ? 」
耕太は二人の傍までくると、
「冬さんとシュートさんはお知り合い? 」
とびっくりしたように言った。
「いや、俺の方が驚いた。
もしかしてお前のばあちゃんか? 」
「まあ、ばあちゃんみたいなもんだけど、
冬さんは俺のばあちゃんの友達。
それより何で二人が一緒にいるんだよ」
「シュートくんと私はお友達。ねっ」
冬はそういってシュートと腕を組んだ。
「冬さんは色んな友達がいるな」
「まあね。それより耕太は何しに来たの? 」
「ああ、そうだ。シュートさん明日のシフト、
例の幽霊マンションに変更だってさ。
スマホに出ないから、
GPSで確認したらここだって」
「あっ、悪ぃ。 今日休みだからスマホ見てなかったわ」
「冬さんと同じ人間ているんだな。
スマホの意味ねえじゃん」
耕太が両手を腰に置いて、仁王立ちになって言った。
「シュートくんもスマホ見ない派? 」
冬が聞いた。
「休みの日はボ~~~~ッと空見て、
何も考えたくないんだよ」
「そうよね。私も同じ。
でも、
耕太とシュートくんのバイト先が一緒なんて、
偶然ね~」
「だな」
シュートもそういって笑った。
「それより、明日一番に、
シュートさんに現場へ入ってもらいたいってさ。
皆、怖がっちゃって、
シュートさん見えるじゃん。
危険かどうか確かめてほしいらしいよ」
「ああ、分かった。
でも俺、霊媒師じゃないから何もできないよ」
「そんなことねえよ。シュートさんが入った後は、
ラップ音が消えたとか、
みんな言ってるもん」
「清めの塩振ってるだけな。
まあ、役に立ってるならいいや」
「まあ、シュートくんて幽霊が見える人なの? 」
冬が目を見開いて両手を口元に当てた。
気になってるみたいだったでしょ。
何でだと思う? 」
「ん~なんでだろうな」
シュートは春を抱きしめながら、
考える表情をした。
「大抵の人は冬って言うと、
冬生まれって思うでしょ。
でも私は四月生まれ。
理由は簡単。
両親が言うには、
春夏秋冬にしたかったんですって」
「春夏秋冬? 」
「そう。我が家はね。
父の名が秋。母の名が夏。
でね、私が生まれる前から犬を飼っていて、
その子が春に家族になったので春。
でもあと一つ季節が足りないでしょう。
だから子供が生まれたら、
男でも女でも冬ってつけることにしたって。
犬より格下の名前よ。
笑っちゃうでしょ」
「プッ、アハハハハ」
シュートはふき出して笑った。
「犬の方が櫻野春で、
何か風流じゃない。
この子はね、五代目春。
一代目からずっと春の名を受け継いでいるのよ」
「へえ~歴史のある名前なんだ。
春。お前カッコいいな」
シュートが春の顔を見た。
「小春は春の妹だから小さな春で小春。
可愛いでしょう? 」
「ああ、可愛いな」
そういったところで、
遠くからこちらに走ってくる者の姿が見えた。
「耕太だわ」
「耕太だ」
「えっ!? 」
二人は同時に言って驚くと、
顔を見合わせた。
「あれ? 」
耕太は二人の傍までくると、
「冬さんとシュートさんはお知り合い? 」
とびっくりしたように言った。
「いや、俺の方が驚いた。
もしかしてお前のばあちゃんか? 」
「まあ、ばあちゃんみたいなもんだけど、
冬さんは俺のばあちゃんの友達。
それより何で二人が一緒にいるんだよ」
「シュートくんと私はお友達。ねっ」
冬はそういってシュートと腕を組んだ。
「冬さんは色んな友達がいるな」
「まあね。それより耕太は何しに来たの? 」
「ああ、そうだ。シュートさん明日のシフト、
例の幽霊マンションに変更だってさ。
スマホに出ないから、
GPSで確認したらここだって」
「あっ、悪ぃ。 今日休みだからスマホ見てなかったわ」
「冬さんと同じ人間ているんだな。
スマホの意味ねえじゃん」
耕太が両手を腰に置いて、仁王立ちになって言った。
「シュートくんもスマホ見ない派? 」
冬が聞いた。
「休みの日はボ~~~~ッと空見て、
何も考えたくないんだよ」
「そうよね。私も同じ。
でも、
耕太とシュートくんのバイト先が一緒なんて、
偶然ね~」
「だな」
シュートもそういって笑った。
「それより、明日一番に、
シュートさんに現場へ入ってもらいたいってさ。
皆、怖がっちゃって、
シュートさん見えるじゃん。
危険かどうか確かめてほしいらしいよ」
「ああ、分かった。
でも俺、霊媒師じゃないから何もできないよ」
「そんなことねえよ。シュートさんが入った後は、
ラップ音が消えたとか、
みんな言ってるもん」
「清めの塩振ってるだけな。
まあ、役に立ってるならいいや」
「まあ、シュートくんて幽霊が見える人なの? 」
冬が目を見開いて両手を口元に当てた。
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