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「若い人はスマホなのね。私は本じゃなきゃダメなの」
「私…若くないです。四十過ぎてるんです」
「あら、私なんかアラ古希、アラセブンよ。
世間が何と言おうと、四十代なんて若いわよ。
私はね、若い頃から本が好きで、
昔はミステリーも読んでたんだけど、
さすがに文字が細かくて、
老眼に小説は辛いわね」
「私も小さい文字は見えづらいので、
コミック読むときにピンチ…拡大して、
読んだりしますよ。
この本も最初はドラマから入って、
気になって原作読んだらハマっちゃって」
「私は原作が好きで、
ドラマになるって知ったので見たの。
好きな俳優さんだったし、
違和感なかったわよね」
「はい。面白かったです」
こんなに何気ない話って、久しぶりだな。
花華の肩の力がフッと抜けた。
「耕太がね…耕太っていうのは、
大学生になる友人の孫なんだけど、
ばばあが少女漫画なんてキモイっていうのよ。
悪い子じゃないんだけど、酷いでしょ」
「だったら、私達キモ仲間ですね」
「ふふふ、あなた面白いこと言うわね。
作家だって、若い方ばかりじゃないんだしね~」
二人は顔を見合わせて笑った。
その時、花華のお腹がグ~ッとなった。
「あら、あなたお昼まだなの? 」
「忘れてました」
花華はお腹を押さえて笑った。
「実は私、去年会社を退職して、
今就活中なんです。
今日も面接落ちて、
公園にきてボ~ッとしちゃって…
スキルもないし、年齢も年齢なんでなかなか」
「そうだ。私いつもはお弁当作るんだけど、
今日はパン屋さんで買ってきたの。
あなたが嫌じゃなきゃ食べない?
残り物で悪いけど」
そういうと、袋を開けてパンを見せた。
「ここのパン美味しいのよ~
今日は半額セールの日だから早くに家を出て、
公園に来る前に寄ってきたの。どうぞ」
どれも美味しそう~
「本当に頂いちゃっていいんですか? 」
「どうぞ」
「じゃあ、ひとつ」
花華はカンパーニュのサンドイッチを取った。
一口食べて笑顔になる。
「美味しい! 」
「でしょう? 」
おばあさんはにっこり笑った。
「……私、会社で過呼吸で倒れたんですよね…
自分でも気づかないうちに、
ストレスが溜まってたみたいで…」
おばあさんは花華の話を、
黙って頷いて聞いていた。
「会社の人間関係だから、
体調も戻らなくて、
もう限界―――って、
後先考えずに止めちゃったんです。
こんなご時世なのに馬鹿ですよね…」
花華はサンドイッチにかぶりつきながら、
うなだれた。
「そういえば、私達まだ自己紹介もしていなかったわね。
私は櫻野冬。あなたは? 」
「私は花華、前田花華です。
お花の花に華道の華と書いてハルです」
「花華さん? やだ、偶然。
犬と一緒で嫌かもしれないけど、
この子も春っていうのよ。猫は小春」
花華は思わず吹き出して、笑い出した。
「私…若くないです。四十過ぎてるんです」
「あら、私なんかアラ古希、アラセブンよ。
世間が何と言おうと、四十代なんて若いわよ。
私はね、若い頃から本が好きで、
昔はミステリーも読んでたんだけど、
さすがに文字が細かくて、
老眼に小説は辛いわね」
「私も小さい文字は見えづらいので、
コミック読むときにピンチ…拡大して、
読んだりしますよ。
この本も最初はドラマから入って、
気になって原作読んだらハマっちゃって」
「私は原作が好きで、
ドラマになるって知ったので見たの。
好きな俳優さんだったし、
違和感なかったわよね」
「はい。面白かったです」
こんなに何気ない話って、久しぶりだな。
花華の肩の力がフッと抜けた。
「耕太がね…耕太っていうのは、
大学生になる友人の孫なんだけど、
ばばあが少女漫画なんてキモイっていうのよ。
悪い子じゃないんだけど、酷いでしょ」
「だったら、私達キモ仲間ですね」
「ふふふ、あなた面白いこと言うわね。
作家だって、若い方ばかりじゃないんだしね~」
二人は顔を見合わせて笑った。
その時、花華のお腹がグ~ッとなった。
「あら、あなたお昼まだなの? 」
「忘れてました」
花華はお腹を押さえて笑った。
「実は私、去年会社を退職して、
今就活中なんです。
今日も面接落ちて、
公園にきてボ~ッとしちゃって…
スキルもないし、年齢も年齢なんでなかなか」
「そうだ。私いつもはお弁当作るんだけど、
今日はパン屋さんで買ってきたの。
あなたが嫌じゃなきゃ食べない?
残り物で悪いけど」
そういうと、袋を開けてパンを見せた。
「ここのパン美味しいのよ~
今日は半額セールの日だから早くに家を出て、
公園に来る前に寄ってきたの。どうぞ」
どれも美味しそう~
「本当に頂いちゃっていいんですか? 」
「どうぞ」
「じゃあ、ひとつ」
花華はカンパーニュのサンドイッチを取った。
一口食べて笑顔になる。
「美味しい! 」
「でしょう? 」
おばあさんはにっこり笑った。
「……私、会社で過呼吸で倒れたんですよね…
自分でも気づかないうちに、
ストレスが溜まってたみたいで…」
おばあさんは花華の話を、
黙って頷いて聞いていた。
「会社の人間関係だから、
体調も戻らなくて、
もう限界―――って、
後先考えずに止めちゃったんです。
こんなご時世なのに馬鹿ですよね…」
花華はサンドイッチにかぶりつきながら、
うなだれた。
「そういえば、私達まだ自己紹介もしていなかったわね。
私は櫻野冬。あなたは? 」
「私は花華、前田花華です。
お花の花に華道の華と書いてハルです」
「花華さん? やだ、偶然。
犬と一緒で嫌かもしれないけど、
この子も春っていうのよ。猫は小春」
花華は思わず吹き出して、笑い出した。
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