5 / 26
第4話
しおりを挟む
「はぁ.......はぁ.......」
地面に座り込んだ俺の目の前にはボコボコに殴られて息絶えた2体のゴブリンの死体。
ダンジョンの理通り、徐々に粒子となって消えつつある。
2匹目のゴブリンが現れたあとはなんてことはなかった。
目の前の一体を速攻で撲殺し、流れで2体目も屠った。
「やったか.......ははは」
俺の乾いた笑いが洞窟内にこだまする。
もしこれでまたゴブリンが寄ってきたら笑いものだがそんなことを考える余裕はない。
「慣れたいとは思わないけど.......いずれこれが世界の常識になるのかね」
俺は重い腰をあげてドロップアイテムを確認する。
すると、魔石と共に宝箱のようなものが現れた。
中を開けると拳大の水晶のようなものが入ってた。
「素材はないけど.......これは?」
俺はその水晶に鑑定をかける。
《スキルオーブ:【雷魔法】 Aランク 使用することで、スキル:【雷魔法】Lv1 が得られる》
「これがスキルオーブか。雷魔法.......幸先がよろしいことで」
割とあっさりと出たスキルオーブ。
しかもランクAの雷魔法だ。
このようにスキルやドロップアイテムにはランクがあり、最低のGランクから最高でSランクまで存在する。
強いモンスターほど強力なマジックアイテムやスキルオーブをドロップすると聞いたがーーテトラの仕業か?
考えても仕方がないということで、早速スキルオーブを使うと念じると例のアナウンスが聞こえた。
『スキル:【雷魔法】Lv1 を獲得できます。使用しますか?』
心の中「はい」とは念じると、スキルオーブが砕け散る。
ステータスを確認するとスキル欄のところに確かに〝【雷魔法】Lv1〟と表示されていた。
それと同時にこの魔法を使うための知識が頭の中に流れ込んでくる。
「さてと.......先に進みますか」
俺は誰もいない空間で独り言ちた。
~~~~~
「ふぅ~こんなもんかな」
ダンジョンに潜り始めてから2年の月日がたった。
ダンジョンに潜っている時間は2年どころではないけどな。
俺は今せっせと農作業に勤しんでいる。
親父から余っている農地を譲って貰い、そこで色々と実験をしていた。
事の発端はダンジョンに潜り始めてから数ヶ月たったある日ーー
「ねぇ龍一。あんた、なんだか若返ってない?」
「ん?そうかな?」
「なんとなくなんだけど、気の所為かねぇ?」
お袋がそう指摘してきたのだ。
この頃になると既に再就職は諦めて本格的に両親の手伝いをしていた。
というのもダンジョンの攻略が順調だったので今更離れらなかったというのもある。
ある意味退職前より忙しくしていたのであまりそういうことを気にしていなかったのだが、鏡の前でよくよく見てみると確かに若返っている印象を受ける。
幼くなったということではなく、肌が綺麗になりエネルギーに満ち溢れているーーそんな感じ。
考えられる可能性としては1つしかない。
そうーーダンジョンだ。
肉体強度と魔力強度をあげた結果としか思えない。
そこで俺が目をつけたのがドロップアイテムーー魔物肉ーーである。
例えばこれーー
《ホーンラビットの肉 レア度F》
興味本位で食べてみたところとても美味しかった。
少なくとも市販のそこそこ高い肉には匹敵する。
そこでこっそりと夕食に紛れ込ませてみる。
なんの肉かは適当に誤魔化し続けてしばらくの間出し続けた。
両親も美味しいので特に何も言わなかったのだが、徐々に変化が起こり始めた。
お袋は目に見えて肌ツヤが良くなり、親父は持病の腰痛が治ってしまったのだ。
原因は言うまでもなく魔物肉なのだが、ここである仮説が生まれる。
「魔力を含んだ物を食べると基礎的な肉体強度や魔力強度があがる」
仮説としながらも実はある程度確信はある。
俺のステータスを見ると生命力や魔力が肉体強度や魔力強度の数値から計算できる以上になっていた。
誤差というにはかなり大きな差だったのでもしやとは思っていたが。
親父やお袋は自身の変化にたいそう驚いていたが、それはともかく俺はある実験を始めた。
それが今の作業に繋がるわけさ。
テトラは魔石はエネルギーになると言っていたが、俺はそれを粉砕して肥料に混ぜて使ってみたのだ。
実験は大成功。
普通に育てたものよりも肉厚で味も格段に良い野菜が実り収穫できた。
しかも種をまいたり苗を植えてから収穫までの期間もかなり短いというおまけ付き。
両親はかなり不思議がっていたが、自作の肥料のおかげだと説明すると納得してくれた。
現在は魔石の種類やランクを変えながら実験中。
ある程度作業が済んだので、昼食のあとは日課のダンジョン探索だ。
いつものように手ぶらで入口へと向かう。
そこでダンジョン用の装備に着替える。
初めに来ていた作業着やバールはとっくに卒業して、今はダンジョン内で手に入れた物を使用している。
《黒龍の篭手》《黒龍の衣・上》《黒龍の衣・下》《黒龍グリーブ》の黒龍シリーズに《天馬の靴》《エレメンタルリング》《身代わりリング》そして、俺の愛刀《雷切》だ。
黒龍シリーズは【耐寒】【耐暑】【自動修復】【サイズ自動調整】等がスキルとして付与されたマジックアイテムで、セット装備ボーナスとして【闇属性耐性】が得られるAランク装備。
《天馬の靴》は【疾空】という空中の何も無い空間を足場にできるスキルが付与されたSランク装備。
《エレメンタルリング》は全属性の魔法の威力と耐性を上昇させるSランク装備。
《身代わりリング》は自身の生命力以上のダメージを受けた時に一度だけ無効化する消費系のアイテムでこれはBランク。
そしてこの《雷切》は魔力を込めることによって切れ味が増す【斬撃強化】のスキルと【雷属性吸収】のスキル、【自動修復】が付与されたSランク装備だ。
どれもが強力なマジックアイテムなのだが、特に《雷切》には思い入れがある。
ちょうど中間地点である50階層を探索している時だ。
この階層は森林が広がるフィールド型の階層で、主な魔物としてオーガキングやオーガジェネラルが群れで襲ってくるような場所だった。
その時点でキングだろうがジェネラルだろうが何体で襲って来ても問題なかったのだが、探索中にある魔物に遭遇する。
その魔物の名前は「オーガサムライ」
オーガの特徴を残しながらも体躯そのものは人間と変わらないが、その強さは尋常ではなかった。
そいつは〝特殊個体〟というやつで、その階層の魔物よりも圧倒的な力を持っている。
安全マージンを取りながら攻略していたのだが、やつとの戦いは激戦となった。
《雷切》は元々そいつの持ち物で、俺の主力である雷魔法が一切通用しない。
最終的には刀術と格闘術、身体強化魔法を用いたゼロ距離での殴り合いとなり、身代わりリングを盾にして隙を作りなんとか勝利した。
その時のドロップ品が《雷切》というわけだ。
既に83階層まで攻略しているが後にも先にもあれ以上の戦いはない。
まぁ、思い出話はここまでにして早速ダンジョンに潜ろうか。
俺は転移結晶(と勝手に命名)に触れる。
すると、急に意識が遠のいて行く感覚に襲われる。
「これってなんかデジャブ.......」
地面に座り込んだ俺の目の前にはボコボコに殴られて息絶えた2体のゴブリンの死体。
ダンジョンの理通り、徐々に粒子となって消えつつある。
2匹目のゴブリンが現れたあとはなんてことはなかった。
目の前の一体を速攻で撲殺し、流れで2体目も屠った。
「やったか.......ははは」
俺の乾いた笑いが洞窟内にこだまする。
もしこれでまたゴブリンが寄ってきたら笑いものだがそんなことを考える余裕はない。
「慣れたいとは思わないけど.......いずれこれが世界の常識になるのかね」
俺は重い腰をあげてドロップアイテムを確認する。
すると、魔石と共に宝箱のようなものが現れた。
中を開けると拳大の水晶のようなものが入ってた。
「素材はないけど.......これは?」
俺はその水晶に鑑定をかける。
《スキルオーブ:【雷魔法】 Aランク 使用することで、スキル:【雷魔法】Lv1 が得られる》
「これがスキルオーブか。雷魔法.......幸先がよろしいことで」
割とあっさりと出たスキルオーブ。
しかもランクAの雷魔法だ。
このようにスキルやドロップアイテムにはランクがあり、最低のGランクから最高でSランクまで存在する。
強いモンスターほど強力なマジックアイテムやスキルオーブをドロップすると聞いたがーーテトラの仕業か?
考えても仕方がないということで、早速スキルオーブを使うと念じると例のアナウンスが聞こえた。
『スキル:【雷魔法】Lv1 を獲得できます。使用しますか?』
心の中「はい」とは念じると、スキルオーブが砕け散る。
ステータスを確認するとスキル欄のところに確かに〝【雷魔法】Lv1〟と表示されていた。
それと同時にこの魔法を使うための知識が頭の中に流れ込んでくる。
「さてと.......先に進みますか」
俺は誰もいない空間で独り言ちた。
~~~~~
「ふぅ~こんなもんかな」
ダンジョンに潜り始めてから2年の月日がたった。
ダンジョンに潜っている時間は2年どころではないけどな。
俺は今せっせと農作業に勤しんでいる。
親父から余っている農地を譲って貰い、そこで色々と実験をしていた。
事の発端はダンジョンに潜り始めてから数ヶ月たったある日ーー
「ねぇ龍一。あんた、なんだか若返ってない?」
「ん?そうかな?」
「なんとなくなんだけど、気の所為かねぇ?」
お袋がそう指摘してきたのだ。
この頃になると既に再就職は諦めて本格的に両親の手伝いをしていた。
というのもダンジョンの攻略が順調だったので今更離れらなかったというのもある。
ある意味退職前より忙しくしていたのであまりそういうことを気にしていなかったのだが、鏡の前でよくよく見てみると確かに若返っている印象を受ける。
幼くなったということではなく、肌が綺麗になりエネルギーに満ち溢れているーーそんな感じ。
考えられる可能性としては1つしかない。
そうーーダンジョンだ。
肉体強度と魔力強度をあげた結果としか思えない。
そこで俺が目をつけたのがドロップアイテムーー魔物肉ーーである。
例えばこれーー
《ホーンラビットの肉 レア度F》
興味本位で食べてみたところとても美味しかった。
少なくとも市販のそこそこ高い肉には匹敵する。
そこでこっそりと夕食に紛れ込ませてみる。
なんの肉かは適当に誤魔化し続けてしばらくの間出し続けた。
両親も美味しいので特に何も言わなかったのだが、徐々に変化が起こり始めた。
お袋は目に見えて肌ツヤが良くなり、親父は持病の腰痛が治ってしまったのだ。
原因は言うまでもなく魔物肉なのだが、ここである仮説が生まれる。
「魔力を含んだ物を食べると基礎的な肉体強度や魔力強度があがる」
仮説としながらも実はある程度確信はある。
俺のステータスを見ると生命力や魔力が肉体強度や魔力強度の数値から計算できる以上になっていた。
誤差というにはかなり大きな差だったのでもしやとは思っていたが。
親父やお袋は自身の変化にたいそう驚いていたが、それはともかく俺はある実験を始めた。
それが今の作業に繋がるわけさ。
テトラは魔石はエネルギーになると言っていたが、俺はそれを粉砕して肥料に混ぜて使ってみたのだ。
実験は大成功。
普通に育てたものよりも肉厚で味も格段に良い野菜が実り収穫できた。
しかも種をまいたり苗を植えてから収穫までの期間もかなり短いというおまけ付き。
両親はかなり不思議がっていたが、自作の肥料のおかげだと説明すると納得してくれた。
現在は魔石の種類やランクを変えながら実験中。
ある程度作業が済んだので、昼食のあとは日課のダンジョン探索だ。
いつものように手ぶらで入口へと向かう。
そこでダンジョン用の装備に着替える。
初めに来ていた作業着やバールはとっくに卒業して、今はダンジョン内で手に入れた物を使用している。
《黒龍の篭手》《黒龍の衣・上》《黒龍の衣・下》《黒龍グリーブ》の黒龍シリーズに《天馬の靴》《エレメンタルリング》《身代わりリング》そして、俺の愛刀《雷切》だ。
黒龍シリーズは【耐寒】【耐暑】【自動修復】【サイズ自動調整】等がスキルとして付与されたマジックアイテムで、セット装備ボーナスとして【闇属性耐性】が得られるAランク装備。
《天馬の靴》は【疾空】という空中の何も無い空間を足場にできるスキルが付与されたSランク装備。
《エレメンタルリング》は全属性の魔法の威力と耐性を上昇させるSランク装備。
《身代わりリング》は自身の生命力以上のダメージを受けた時に一度だけ無効化する消費系のアイテムでこれはBランク。
そしてこの《雷切》は魔力を込めることによって切れ味が増す【斬撃強化】のスキルと【雷属性吸収】のスキル、【自動修復】が付与されたSランク装備だ。
どれもが強力なマジックアイテムなのだが、特に《雷切》には思い入れがある。
ちょうど中間地点である50階層を探索している時だ。
この階層は森林が広がるフィールド型の階層で、主な魔物としてオーガキングやオーガジェネラルが群れで襲ってくるような場所だった。
その時点でキングだろうがジェネラルだろうが何体で襲って来ても問題なかったのだが、探索中にある魔物に遭遇する。
その魔物の名前は「オーガサムライ」
オーガの特徴を残しながらも体躯そのものは人間と変わらないが、その強さは尋常ではなかった。
そいつは〝特殊個体〟というやつで、その階層の魔物よりも圧倒的な力を持っている。
安全マージンを取りながら攻略していたのだが、やつとの戦いは激戦となった。
《雷切》は元々そいつの持ち物で、俺の主力である雷魔法が一切通用しない。
最終的には刀術と格闘術、身体強化魔法を用いたゼロ距離での殴り合いとなり、身代わりリングを盾にして隙を作りなんとか勝利した。
その時のドロップ品が《雷切》というわけだ。
既に83階層まで攻略しているが後にも先にもあれ以上の戦いはない。
まぁ、思い出話はここまでにして早速ダンジョンに潜ろうか。
俺は転移結晶(と勝手に命名)に触れる。
すると、急に意識が遠のいて行く感覚に襲われる。
「これってなんかデジャブ.......」
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
甘い誘惑
さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に…
どんどん深まっていく。
こんなにも身近に甘い罠があったなんて
あの日まで思いもしなかった。
3人の関係にライバルも続出。
どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。
一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。
※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。
自己責任でお願い致します。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる