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第四恋
誤解
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「ふざけないで!」
パンッと乾いた音が響く。
私は今大激怒し、激怒していた相手にビンタをかましていたんです。
それは何故か……………
~~遡ること十分前~~
「おはよう、拓海君!」
「おはよう………」
「どうしたの?沈んだ顔をして。」
その時の拓海君は元気がありませんでした。
何故なのかそのわけを聞きました。彼は懺悔と共に頭を下げてきたんです。何故か……
「ごめんなさい!貴女の弟に怪我をさせたのは僕です。」
その言葉を聞いた瞬間に私は拓海君をビンタしていました。
そして現在に至ります。
「本当にごめんなさい………。」
ひとしきり怒鳴り終わって落ち着いた後私は、なぜ拓海君が弟に怪我をさせたのかその理由を聞きました。
「どうして怪我をさせたの?」
「……………ごめんなさい。」
「ちゃんと答えてよ……」
「………ごめんなさい。」
この後何度問いただしても拓海君からはごめんなさいの言葉しか聞くことができませんでした。
帰りの支度途中、私は肩を叩かれました。
「誰?」
振り返ってみると拓海君が居ました。
「何?」
私は少し言葉を強めて返事をしました。
彼はこう言いました。
「弟さんに謝りたい………」と
私は即座に却下したかったのですが、彼のあまりにも寂しそうな表情に無情になれませんでした。
「わかった、着いてきて。」
その日の帰りはとても気まずいもので、今までで一番長い帰り道でした。
~~光希宅にて~~
「お母さんただいまー。」
「お邪魔します………」
「あ、お帰りなさい。あら、そちらの方は?」
「楸拓海って言います。宜しくお願いします。」
自己紹介が終わったあと私は早速本題に
移ることにしました。夜が遅いので、拓海君の両親が心配していると思ったからです。
「弟の部屋はここよ。」
「ありがとうございます。」
私は弟の部屋の前まで拓海君を連れてきました。
「秦、入っていい?」
因みに夜舞 秦というのが私の弟の名前です。
「良いよ。」
まず、私が部屋に入りました。
「お姉ちゃん何か用?」
「用があるのは私じゃなくて……」
私は拓海君を引っ張って弟の部屋に入れました。
「この人。」
「こんにちは。」
私は弟が「誰?その人。」という返答をしてくるだろうなと思っていたのですが、弟の第一声は意外なものでした。
「あ、お兄ちゃんだ!久しぶり~。」
「うん、久しぶり。」
「え!?秦、彼を知っているの?」
「うん、僕が不良達に怪我をさせられていた時に庇ってくれた人だよ。」
「!?」
私はとても驚きました。私は怪我をさせたのが拓海君だとずっと思っていたからです。弟が怪我をさせられて帰ってきた時に私は弟に誰にやられたのかということしか聞きませんでした。
だから私は気づくことが出来ませんでした。何故その時手当された状態で弟が帰ってきたのかという事を………
「え………だ、だって怪我をさせたのは僕ですって言ったじゃない。」
「はい、僕はその現場にいながら奏君を助けることが出来ませんでしたから。」
私は呆気に取られ放心に近い状態になっていました。彼は続けます。
「何も出来なかったのだからせめて介抱くらいはしなければと思って、奴等が去った後手当をしたんです。」
そして拓海君は弟の方を向いて
「あの時は助けてあげられなくてごめんなさい。」と言いました。
拓海君が帰ると言った時に私は送ると言いました。しかし拓海君は「夜は危ないので大丈夫です。」と言って拒みましたが私が意地でも行くと言ったので、拓海君は了承してくれました。
私達は暗い道を二人で歩いていました。
「あの、さっきはごめんなさい。ビンタしちゃって………」
私は拓海君に誠心誠意謝りました。
「気にしなくていいよ、怪我をさせたのは事実なんだから。」
「でも!それは、拓海君がやった訳じゃないんでしょ?」
「その場にいて何も出来なかった、つまり止めることをしなかった時点で僕も共犯だと思う。だから、ビンタされたって何も言えないし、逆にそれだけで許されること自体がありがたいことだと思う。」
私は何も言い返せなくなってしまいました。
「僕は光希さんに恨まれてても全然構わない。それ相応の事をしたから。」
拓海君は私と別れるとき「本当にごめんなさい、そしてありがとう。」と言って頭を下げて帰っていきました。
私は拓海君の優しさに対する有り難さと少し申し訳ない気持ちを残したまま家に帰りました。
パンッと乾いた音が響く。
私は今大激怒し、激怒していた相手にビンタをかましていたんです。
それは何故か……………
~~遡ること十分前~~
「おはよう、拓海君!」
「おはよう………」
「どうしたの?沈んだ顔をして。」
その時の拓海君は元気がありませんでした。
何故なのかそのわけを聞きました。彼は懺悔と共に頭を下げてきたんです。何故か……
「ごめんなさい!貴女の弟に怪我をさせたのは僕です。」
その言葉を聞いた瞬間に私は拓海君をビンタしていました。
そして現在に至ります。
「本当にごめんなさい………。」
ひとしきり怒鳴り終わって落ち着いた後私は、なぜ拓海君が弟に怪我をさせたのかその理由を聞きました。
「どうして怪我をさせたの?」
「……………ごめんなさい。」
「ちゃんと答えてよ……」
「………ごめんなさい。」
この後何度問いただしても拓海君からはごめんなさいの言葉しか聞くことができませんでした。
帰りの支度途中、私は肩を叩かれました。
「誰?」
振り返ってみると拓海君が居ました。
「何?」
私は少し言葉を強めて返事をしました。
彼はこう言いました。
「弟さんに謝りたい………」と
私は即座に却下したかったのですが、彼のあまりにも寂しそうな表情に無情になれませんでした。
「わかった、着いてきて。」
その日の帰りはとても気まずいもので、今までで一番長い帰り道でした。
~~光希宅にて~~
「お母さんただいまー。」
「お邪魔します………」
「あ、お帰りなさい。あら、そちらの方は?」
「楸拓海って言います。宜しくお願いします。」
自己紹介が終わったあと私は早速本題に
移ることにしました。夜が遅いので、拓海君の両親が心配していると思ったからです。
「弟の部屋はここよ。」
「ありがとうございます。」
私は弟の部屋の前まで拓海君を連れてきました。
「秦、入っていい?」
因みに夜舞 秦というのが私の弟の名前です。
「良いよ。」
まず、私が部屋に入りました。
「お姉ちゃん何か用?」
「用があるのは私じゃなくて……」
私は拓海君を引っ張って弟の部屋に入れました。
「この人。」
「こんにちは。」
私は弟が「誰?その人。」という返答をしてくるだろうなと思っていたのですが、弟の第一声は意外なものでした。
「あ、お兄ちゃんだ!久しぶり~。」
「うん、久しぶり。」
「え!?秦、彼を知っているの?」
「うん、僕が不良達に怪我をさせられていた時に庇ってくれた人だよ。」
「!?」
私はとても驚きました。私は怪我をさせたのが拓海君だとずっと思っていたからです。弟が怪我をさせられて帰ってきた時に私は弟に誰にやられたのかということしか聞きませんでした。
だから私は気づくことが出来ませんでした。何故その時手当された状態で弟が帰ってきたのかという事を………
「え………だ、だって怪我をさせたのは僕ですって言ったじゃない。」
「はい、僕はその現場にいながら奏君を助けることが出来ませんでしたから。」
私は呆気に取られ放心に近い状態になっていました。彼は続けます。
「何も出来なかったのだからせめて介抱くらいはしなければと思って、奴等が去った後手当をしたんです。」
そして拓海君は弟の方を向いて
「あの時は助けてあげられなくてごめんなさい。」と言いました。
拓海君が帰ると言った時に私は送ると言いました。しかし拓海君は「夜は危ないので大丈夫です。」と言って拒みましたが私が意地でも行くと言ったので、拓海君は了承してくれました。
私達は暗い道を二人で歩いていました。
「あの、さっきはごめんなさい。ビンタしちゃって………」
私は拓海君に誠心誠意謝りました。
「気にしなくていいよ、怪我をさせたのは事実なんだから。」
「でも!それは、拓海君がやった訳じゃないんでしょ?」
「その場にいて何も出来なかった、つまり止めることをしなかった時点で僕も共犯だと思う。だから、ビンタされたって何も言えないし、逆にそれだけで許されること自体がありがたいことだと思う。」
私は何も言い返せなくなってしまいました。
「僕は光希さんに恨まれてても全然構わない。それ相応の事をしたから。」
拓海君は私と別れるとき「本当にごめんなさい、そしてありがとう。」と言って頭を下げて帰っていきました。
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