上 下
59 / 99
2章 ゴブリン共の脅威から防衛せよ!

ミミッキュの話

しおりを挟む
 ミミッキュは、トモカズが頷くのを見て、話を続ける。

「ダーリン。ここまでの話は、わかっただっちゃ?」

「あっあぁ。だがそれがどうして、お前が別の世界線で起こったことを覚えてる理由になる?」

「ダーリン。今までの話でわからなかっただっちゃ?即ち、起こった事象は変わらないだっちゃ。そこの野蛮なリザードマンが王家の墓地に来て、アイテムを取っただっちゃ。そして、王家の墓地に光り輝く不思議な玉ももうないだっちゃ」

 えっ?

 変幻自在の玉が消えただって!?

「そんな馬鹿な!?じゃあ、いったい変幻自在の玉は、何処に?」

「あの不思議な玉は、そんな名前だっちゃ?知ってるとしたら盗んだそこのリザードマンだっちゃ!」

 突然話を振られたナイアは困り果てていた。

「いや、でもあの時は私も。その。あの。巻き戻りだと認識してましたので」

 確かに女神様も言ってた。

 俺と親父に与えたのはあくまで勇者としての死んでも生き返る力と僅かなスキル付与だと。

「ナイア、思い出せないなら無理する必要はないよ」

「御主人様、申し訳ありません。頑張って思い出します」

 しゅんと申し訳なさそうに首を垂れるとナイアは、必死に記憶を呼び戻そうとしていた。

「成程な。巻き戻ったと感じるようになってるのは、期間が決められたウェーブ戦闘だからか」

 ウェーブ戦闘とは、次々と迫り来る敵を倒せというミッション形式の戦闘で、タワーディフェンスに多く見られる。

「あの、どういうことなのか。いまいちわかりませんわ」

 リーシアがこう思うのも無理はない。

 要は、期間内に準備を整えて、迫り来る敵を倒すまでがウェーブ戦闘として、ワンセットになってるのだ。

 その場合勇者の力で戻るのは、戦いの準備期間から。

 あまりの期間の長さに、俺ですら生き返る力のことを死に戻りだと認識していた。

 だとすると1つまた矛盾が産まれる。

 何回か繰り返した時に、ナイアやペコラが記憶を保持していたことだ。

「ミミッキュに答えられないかもしれないが1つ聞いても構わないか?」

「ダーリン。勿論だっちゃ。何でも聞くだっちゃね」

「俺は、恐らく勇者の力を女神様から渡されている。そのことを前提で話すが。ここにいるナイアとペコラは、仲間にした後、巻き戻る。いやこの場合は俺が死んで、戻ったと言えば良いのか。よくわからないがその度に記憶を持っていなかったがいつからか記憶を持つようになった。その事について、何かわかることがあるか?」

「そうだっちゃね。一つ言えることは、行われたことは忘れてないはずだっちゃ」

 その言葉には思い至ることがある。

 ナイアをもう一回堕とした時に、こう言ってたのだ。

『思い出しましたぁ。私は御主人様の女でしたぁ』的なことを。

 頷く俺を見て、ミミッキュは、本題に戻す。

「だからうちらは文字通り今も命懸けで宝箱のフリをして、開けないで~って祈ってるだっちゃ」

「いや、急に話を戻したな!まぁ良いけど。っていうか!宝箱を見たら誰だって開けるだろ!」

「どういう事だっちゃ?」

「いや、中身が気になるから冒険者は開けるって話な」

 ここまで俺たちの話を興味深く聞いていたエイン砦の砦長であるポールさんが口を開く。

「冒険者だけでなく俺も開けるな。特にダンジョンでは、良い武器が手に入ったりするのでな。こう見えて、兵士は安月給なのだ。色々な魔物との経験を積めて、装備も手に入るダンジョンは色々と有用なのでな」

 そうか兵士も大変だな。

 でも、そうだよな国を守るためには色んな魔物の対処法を知るべきだもんな。

 そのためにダンジョンが適してるのは、わかる。

「でもうちは、魔王様にここで宝箱のフリをしていれば大丈夫だからと言われたっちゃ」

「騙されてんだよ!襲われたくないなら宝箱じゃなくて、樽とか壺は、ダメだな。本棚とか。いやダメだな」

 そもそも擬態して安全なものってあったか?

 プレイヤーによっては、ただの骨ですら調べる。

 一度は見たことあるだろう『ただの屍のようだ』の文字を。

「じゃあ、うちらに安全な場所はないだっちゃ?」

「そこに居たらいつかは殺されるだろうな。一つ皆んなが助かる方法があるって言ったらどうする?」

「知りたいだっちゃ!ダーリン、教えて欲しいだっちゃ」

「俺の住んでいる村に来い。村人のために働いてもらうが安全は補償してやる」

「行くだっちゃ!もう仲間が殺されるのを見るのは嫌だっちゃ」

 というか配置されていたミミックたちにこんな悲しいエピソードがあったなんてな。

 でも確かにな。

 ボス戦で全滅して再会した時でも、倒したミミックが復活してることは無かった。

 文字通り一回限りの命を燃やしていたんだな。

 だがミミックに殺されたプレイヤーが多いことも俺は知っている。

 だって、ミミックの別名は、キラーボックス!

 即死魔法であるデスと高い会心率から繰り出される痛恨の一撃で、仲間を倒されながらようやく倒したプレイヤーも多いだろう。

 彼らが村の防衛に付いてくれたら並の魔物は、その防御力から繰り出される痛恨の餌食となるだろう。

 タワーディフェンスなら遠くからデスを打たせ続けるのもありだ。

 ボス以外で即死魔法に耐性があるのなんて、幽霊系や死神系ぐらいだからな。

 それになんたってマネコの魔法で、相手に化けて撹乱なんて事も出来るしな。

「あっミミッキュ。早速協力を頼めるか?」

「ダーリンの頼みなら何だって聞くだっちゃ。仲間への連絡も終わったから皆、ダーリンの元に来てくれるだっちゃ」

「おっおぅ」

 この世界で、戦えるミミックの総数は、確か魔王城に2箱、王家の墓地に3箱、ピラミッドに5箱の合計10箱だ。

 まさか全員が来るなんて事はないだろうが防衛において、即死魔法が使えるミミックの参戦は、願ったり叶ったりだ。

「じゃあ、俺の姿をゴブリンに変えられるか?」

「あの醜い小鬼だっちゃ?変な事頼むだっちゃね。お安い御用だっちゃ。マネコだっちゃ!」

 トモカズの姿がゴブリンに変わったのを見て、驚く面々だがその状態で指示を飛ばし、エイン砦に向かうのだった。

「完璧だな。でかしたぞミミッキュ」

「エヘヘ、ダーリンにもっと頭撫でて欲しいだっちゃ」

「ナイア、この場にて、ポール殿と指揮を取れ、ペコラとミミッキュは援護。リーシア、非戦闘員を連れ、王都エインヘリヤルに向かい、城下町で待機だ。メイメイとキラリは俺の援護」

「御主人様の命とあれば、ゴブリンの1匹も通しはしません」

「僕ちゃん、任せといて」

「ダーリンのために頑張るだっちゃ」

「トモカズ様、どうかご無事で、彼女たちは、必ず安全に王都までお連れいたしますわ」

「クゥーン」

「コーン」

 未だに、あの説明では何故、ミミッキュに支配の淫紋が刻まれたかわからないが、恐らくナイアがお漏らししたのを接種したって事なんだろうが、いやそう何日も中に残るものか。

 まぁ、気にしていても仕方ない。

 ご都合主義に感謝して、ステラを助けるとしますか!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

精霊のジレンマ

さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。 そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。 自分の存在とは何なんだ? 主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。 小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。

サフォネリアの咲く頃

水星直己
ファンタジー
物語の舞台は、大陸ができたばかりの古の時代。 人と人ではないものたちが存在する世界。 若い旅の剣士が出逢ったのは、赤い髪と瞳を持つ『天使』。 それは天使にあるまじき災いの色だった…。 ※ 一般的なファンタジーの世界に独自要素を追加した世界観です。PG-12推奨。若干R-15も? ※pixivにも同時掲載中。作品に関するイラストもそちらで投稿しています。  https://www.pixiv.net/users/50469933

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。 若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。 魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。 人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で 出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。 その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

処理中です...