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1章 死亡フラグを回避せよ

渋々、納得する王様

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 俺はメイメイに振り向いて、尋ねてみた。

「ここの音を聞こえなくしてくれたのは、メイメイなのか?」

「キュイーン。クゥーン」

 そうだよ~の後、甘えるように俺の足元に擦り寄ってくるメイメイ。

「ごめんよ。放置して、それにしてもいい肌触りだ」

「あの、その、ワタクシも触ってもよろしくって?」

「ヒャフゥ」

 まぁ、リーシアには、まだわからないよな。

「どうぞ~ってさ」

「そうなのですね。うわぁ~、凄いもふもふで気持ち良くってよ」

 そうだろうそうだろう。

 うちのメイメイは、モフモフ会、最強だからな。

 メイメイしかいないからわかんないけど。

「キャフゥ」

 メイメイがリーシアに撫でられて気持ちよくしている。

 本当に人懐っこい熊だ。

 こうしてるとあんなに凶暴なキングベアーには、とても見えない。

「キッキッキングベアーですって!?人に懐かないとお聞きしていましたのに、トモカズ様と心を通わせられていますわね」

「キュイーン」

 メイメイはそうだよ~と鳴くと俺の足元に来た。

「メイメイは、可愛いなぁ。でもだいぶ汚れちゃってるからなぁ。帰ったら水浴びさせてやるからな」

「キャン」

「もう、夜が明けますわね。トモカズ様無しでは生きて行けない身体にされた責任は、取ってもらいますことよ」

「はい。善処させていただきます」

「そんなに怯えないでくださいまし。トモカズ様の村をお守りできた後、一緒にお父様のところに行って欲しいだけですわ」

 これが噂に聞く!

 娘さんを俺にくださいってやつか!?

「クスクスクス。これ、本当に良いですわね。トモカズ様の考えていることが聞こえて、微笑ましいことですのよ」

「が、頑張らせてもらいます」

「そんなに身構えなくっても宜しくてよ。お父様は、ワタクシに甘々ですの。ワタクシが一言、この人のが素敵ですのと言えば良いだけですわ」

「はぁ。承知しました」

「もう、夜はすごく男らしいですのに、こういう時は軟弱ですのね。まぁ、可愛らしくって好きですわ。皆様、起きてこられますから、トモカズ様は、昼にまた王城に来てくださいまし」

「王城に?」

「ワタクシは、一応この城の騎士団ですので、王様の許しはいただきませんと」

「承知しました」

 こうして俺は、メイメイに乗り、外で待つナイアやペコラと合流し、3人で再びお城へと来た。

「デストラク村のトモよ。まだ余に何か用か?」

「次回の納品について、聞き忘れておりましたので、お聞きしにもう一度伺った次第です」

「そうであったか。すまぬ。だが、あいにくと手持ちがな」

「何をおっしゃいます王よ。これは向こうからの善意。即ち、無料で武器を提供したいと。そういうことですな?」

「ルカ様、それはあんまりですことよ。トモカ、ゴホン、トモ様が困って居られますことよ」

「リーシア、これは城を預かる俺の領分、勝手に口を挟まないで貰えるかな」

「わかりましたわ。もう、ほとほと愛想が尽きましたわ。王様、ワタクシ、本日で天馬騎士団を辞めさせていただきますわ」

 えっ!?

 作戦って、円満にお許しを頂くとかじゃなくて、出奔なの!?

「リーシア、何を言っているかわかっているのですか?それに貴方は、俺との婚姻も」

「ルカ様の方こそ。何もわかっていませんことよ。自分だけ勝手に満足して、ワタクシは一度も満足できませんでしたわ。そんな殿方との婚姻なんて、こちらから願い下げですことよ。そうなれば、困るのは、ルカ様の方なのでは、ありませんこと」

「ぐっ。下手に出れば、いい気になりやがって、それにその熊は、甥っ子の所有物、返していただきたい!」

 いや、いきなりこっちに飛び火してきたんだけど!?

「それに関してもトモ様には、何の問題もありませんことよ。トモ様は、50金貨で、熊を買い上げたのでは、なかったかしら?そのことを言うのなら先ずは50金貨を返すのが先ではありませんこと?」

「さっきから何度も口答えしやがって、このクソアマが!」

 クソメガネがリーシアを殴ろうとしたので、その間に入ろうとしたら殴られて、飛ばされた。

「ト、トモカズ様!?このクソメガネ、ワタクシの大事な人になんて事をするんですの!覚悟はできていらっしゃられるのですよね?」

「そうか。そうか。おかしいと思ったのです。リーシアとそこのガキはまだ会った事は無かったはず。なのにお前は名前を知っていた!」

 いや、俺のことを王様がトモって呼んでたし。

 何の問題も無いんだけど。

「そ、そ、そ、それは、そのアレですわ」

 って、なんで動揺してんの!?

「アレとは?」

「いや、タイールよ。その前に余が彼の名前を」

「王は、黙っておられよ!」

「ひいっ」

 いやいや、このクソメガネ、王様黙らせちゃったよ。

 アハハハハ。

 どうすんのこれ?

「そうですわ。王様が、名前をおっしゃっていたからですわ」

「なら、どうしてそんなに動揺するのだ?最近のお前は、何処か上の空だった。そこのガキと浮気していたのであろう!」

 ここは堪えてくれよリーシア。

「そ、そ、そ、そんなことありませんことよ」

 あかーん。

 これは、あかーん奴。

「その動揺が全てを物語っている!このガキ、俺の婚約者に手を出しやがったな!衛兵、このガキを牢に繋いでおけ!」

「待たぬか!」

 威厳を取り戻した王が割って入った。

「どうしてそのような話になる。トモ殿、武器の納品の件、聞きにきてくれたこと真に有り難く思っておる。しかし、魔王軍との戦に備えるため国庫は常にカツカツなのだ。よって、此度を最後としたい。それにリーシアよ。感情に任せて、騎士団を辞めるなど言うでない。其方たちが居らねば、王国は維持できぬのだ」

 俺は、ここだと思い、前に進み出て言う。

「王様、ならば一つ提案がございます」

「提案とな?」

「はい。リーシアの率いる天馬騎士団をお貸し頂けませんか?」

「それは、ふむぅ。どうして、トモは、そこまで騎士団に拘る。前に申しておった。村に魔物が迫っているという事と何か関係があるのか?」

「王よ。こんなクソガキの世迷言に聞く耳を持ってはなりませんぞ!」

「タイール、五月蝿いぞ。少し黙っておれ!して、トモよ。答えを伺おうか?」

「その通りです。僕は、もう両親のように亡くなる人を見たくないのです。襲われることがわかっているのに手をこまねいていることなど嫌なのです」

「そうか。ふむぅ」

「お受けしてくださるのなら彼女たちに支払う給金を僕の村から支払うようにします。その浮いたお金で、武器というのはどうでしょう?」

「ふむぅ。いや、リーシアよ。お主たち天馬騎士団を本日付けで、解雇とする。トモとやらに力を貸してやるが良い」

「王様、感謝致しますわ」

「なーに、いつも厳しい任務を任せてしまってすまなかったな。村の警備となれば、魔王城付近の哨戒と偵察よりも幾分か安全であろう。それに此度の件で、よーくわかった。タイールよ、お前とリーシアの縁談は、一旦白紙じゃ。リーシアが怒りに任せて言ったことが本当なら。お前は、さぞ自分勝手な振る舞いをしていたことになるからな。頭を冷やしてくるが良い」

「王よ。必ず後悔なされますぞ」

 捨て台詞を吐いて、出ていくタイール。

 ザマァ。

「トモ殿、お恥ずかしいところをお見せしましたな。リーシアのことを頼みましたぞ」

「はっ。王様の御判断に最大限の敬意を」

「良い良い」

 それにしても結構、カッコいい所あるじゃないかこの王様。

 あのクソメガネの言いなりかと思ってたのにな。

 まぁ、何はともあれこれで天馬騎士団という騎兵隊を手に入れられた。

 今度こそ、今度こそ、死亡フラグを打ち砕いてやる。

 そう心で決意した言葉にリーシアが青ざめているのだった。
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