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1章 死亡フラグを回避せよ

ナイアと次の作戦を練る

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 こんな敵地の近くで、激しくやりすぎたかな。

 水を汲みに言ってくれたナイアが戻る前に先ほどのことを考える。

 ナイアのちょうど子宮の当たりのお腹に浮かんだ紋様は淫紋だよな。

 サキュバスが持っているもので効率よく精液を吸収するためだったはず。

 まぁインキュバスは、女に付与して快楽を貪るんだっけ?

 このゲームにも出ているがそういうシーンはない。

 前も言ったがダクドラは王道のRPGゲームなのだ。

 なら、ナイアに浮かんだアレはなんだ?

 俺にインキュバスの力が与えられてるのか?

 全く、普通異世界転生する前に神様とかが出てきて、能力とか教えてくれるものじゃないのか?

 こんな行き当たりばったりで、どうやって?

 ん?

 待てよ。

 俺を殺すナイアは俺の女になったということは、なーんだこれで、俺の死亡フラグは折れて、生存確定じゃないか。

 考えているとナイアが水を汲んで戻ってきた。

「御主人様、お水をお持ちしました」

「ありがとうナイア」

「あぁん。御主人様が名前を呼んでくれただけで、幸せな気持ちが身体を支配してるぅぅぅぅ」

「はいはい。僕も嬉しいんだけど普通に話したいから、今はダメだよ」

「これが村の女性たちが話していた放置プレイ!!!!男に縁のなかった私が体感するなんて、幸せぇぇぇぇぇ」

 反動がちと大きすぎやしないか?

 まともに話ができる気がしないんだけど。

「ねぇナイア?」

「なんでしょうか御主人様?」

「ナイアは、僕の村を滅ぼすためにここに滞在してるんだよね?」

「御主人様の村?いえ、私たちがここに滞在しているのは、魔王様を倒す危険性のある武器を生み出そうとしているモノノフという鍛治師の命を奪うためです。ひょっとして、御主人様の村なのですか!?」

 まぁ、ナイアはもう僕の女だから大丈夫かな。

 でも魔王様って呼んでるよな。

 どうなんだろう?

 話して大丈夫なのかな?

 でも、隠し事は嫌嫌だし、良し話そう。

「うん。実は僕モノノフさんの弟子なんだ。今日は休暇を貰ったからリフレッシュしに森に来たら偶然ナイアの湯浴みを覗き見してしまって」

「そうだったのですね。では、すぐに皆を説得してと言いたいところなのですが、その」

「どうしたの?ナイアが部隊長なんだよね?」

「私が部隊長だなんてとんでもない。私は1兵卒ですよ。このリザードマンの部隊を率いているのは、リザガイル様という歴戦の猛者で、全リザードマンの憧れの対象のようなお人です。かくいう私も彼の強さに憧れて、性別を偽って入隊したので。今は勿論、御主人様より素晴らしい人なんて居ませんけど。あぁん。言っちゃった。みんなを裏切って御主人様の雌になっちゃったのぉぉぉぉぉぉぉ」

 嘘だろ。

 ナイアをどうにかすれば死亡フラグはポッキリと折れると思っていたのに、この時のナイアは部隊長などではなく1兵卒らしい。

 要は、モノノフの村を滅ぼした功績で中ボスにレベルアップしたってことだ。

 でも、俺に籠絡されたナイアが中ボスになることはないだろう。

 次の作戦を考えるべきだ。

 オープニングでこの身体の持ち主は、どうなっていた。

 よく思い出そう。

 何処かからの帰りから始まり、偶然見つけたリザードマンの砦を見た少年は村へ報告しようと歩き出した。

 その時、落ちていた枝を踏んでパキッと折ってしまった。

 その結果、リザードマンに追いかけられることとなり少年は村へと逃げる。

 その結果、村がバレて、追いかけてきたこのナイアに斬られるのだ。

 なら、村の場所がバレなければ良い。

 そうすれば時間は稼げるだろ。

 いやいや、村の近くにこんな砦ができてるんだ。

 そもそもバレるのは時間の問題だ。

 この身体の持ち主は、ただのきっかけに過ぎない。

 物語を暗くするための、そしてプレイヤーが魔王を許さないと感情移入するための単なるアクセントでしかない。

 そうどこまで行こうが村が滅ぶのを避けることができないのと同じようにこの少年が死ぬことも回避できないのだ。

「御主人様、一緒に逃げましょう」

「えっ?」

「私に力が無いことは申し訳ありません。ですがリザガイル様に勝つことはできません。御主人様が死ぬなんて嫌です。逃げましょう」

 それもアリかもしれない。

 ナイアと共にどこか見知らぬ土地で過ごすのも悪くない気はする。

 でも、それは村の人を見捨てるということだ。

 昨日いきなり転生してきて、村の人に特別な思い入れがあるわけでもない。

 だが、ゲームをプレイしている時は、定型文だったが、俺があった人は、違う。

 この世界で生きてるんだ。

 フッ。

 見捨てて逃げれば助かったのにな。

「断固拒否する。僕は村の皆んなと最後まで抗うよ。ナイアは巻き込めない。ありがとう。短い間だったけど君と出会えて僕は幸せだったよ」

「何を言ってるのです御主人様?御主人様が戦うと決めたのなら私も戦いますよ。だって、私にとっての最優先事項は御主人様の命なんですから」

「そう言ってくれるのは有難いけど仲間と戦えるの?僕はナイアに辛い思いをして欲しいわけじゃない」

「私にとって1番辛いのは御主人様が死ぬことです」

 まさか俺のために命を捧げるまでに堕ちるなんて、だが心を鬼にする。

「でもリザードマンを村に連れて帰ったらどう思われる?ナイアの言った通り、魔族と人間が相入れることはないんだ」
「そんなの、何か方法はないのですか?御主人様が死なず私も村に居られるそんな方法が」

「ない」

 『ない』とは言ったが。

 この世界には人が見ている姿を本来の姿から変えられる魔法のアイテムが存在する。

 その名も変幻自在の玉だ。

 この玉を掲げることによって、文字通り、姿を魔物だろうが動物だろうが機械だろうが何にでも変えられるアイテムだ。

 それさえ手に入れれば、ナイアと過ごすことは可能だ。

 だが、それをしたところで現状の打破には繋がらない。

 だから『ない』と言った。

「そんな。どうしてこんなにすぐお別れすることになるのに私を御主人様の虜にしたんですか。こんなのあんまりじゃないですか。責任をとって一緒に逃げてください」

「村のみんなを見捨てることなんてできない」

 僕とナイアの言葉は平行線だ。

 一緒に逃げたいナイアと村のみんなを見捨てられない俺。

 結論が出るわけがない。

 どこまで行っても所詮行き当たりバッタリの作戦が上手いこと行くことはないということだ。
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